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NY市が決別するトランプ・オーガニゼーションって? 調べると意外なスポットも「トランプ帝国下」だった

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
Image: Pixabay by BefoPixa

アメリカ下院本会議は13日、トランプ大統領に対して弾劾訴追決議案を賛成多数で可決した。

トランプ氏は「大がかりな魔女狩りの続きだ。すさまじい怒りを引き起こすことになるだろう」と同決議案に強く反発していたが、2019年のウクライナ疑惑に続いて2回弾劾訴追された、全米史上初の大統領となった。

同日ニューヨーク市では、ビル・デブラシオ市長がMSNBC局の朝のニュース番組に出演し、トランプ・オーガニゼーションが市内で運営する4つの人気アトラクションとの契約を打ち切る予定であることも発表されていた。

ニューヨーク市は反乱軍とは取引しないことにした。契約を終了するための措置を講じている。(デブラシオ市長のツイッター)

契約は数百万ドル(約1億円)規模とされているが、同市長は「政府組織に対する反乱の扇動は、明らかに犯罪行為だ。企業とそのトップがそのような違法行為を働いている場合、契約破棄の権利は我々にある」と述べた。さらに「ニューヨーク市はトランプ・オーガニゼーションとは今後何の関係もなくなる」と、トランプブランドや関連事業との断交を強調した。

トランプ・オーガニゼーションとは?

トランプ・オーガニゼーションとは、世界中に広がる500ものビジネスを擁する一大グループ企業のことだ。

不動産事業が核となっており、それに付随する商業および住居用ビル、ホテル、リゾート、ゴルフ場、ワイナリー、カジノ、航空、メディア、小売、飲食、ホスピタリティーなど数えきれない。関連事業全体で働く従業員は2万人を越えるとされている。

その中には、五番街のトランプタワーといったわりと有名なスポットから、セントラルパークのアイススケート場やメリーゴーランド、高級フレンチレストラン「ジャン・ジョルジュ」など意外なスポットまで含まれており、ニューヨーク観光の際に何の気なしに訪れたことがある人も多いだろう。

五番街にある、商業および住居用ビルの「トランプタワー」。Image: Pixabay by Carlos Alcazar
五番街にある、商業および住居用ビルの「トランプタワー」。Image: Pixabay by Carlos Alcazar

トランプ・オーガニゼーションの所有者は今でもトランプ氏だが、2017年以降、長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏と次男のエリック氏が経営を引き継いでいる。
トランプ・オーガニゼーションの所有者は今でもトランプ氏だが、2017年以降、長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏と次男のエリック氏が経営を引き継いでいる。写真:ロイター/アフロ

ニューヨーク市が運営面で何らかの契約を締結しているのは、うち4事業だ。セントラルパークのアイススケート場「ウォルマンリンク」と「ラスカーリンク」、そしてメリーゴーランド「カルーセル」、そしてブロンクス区のゴルフ場「トランプ・ゴルフ・リンクス」の4スポット。

特に2つのスケート場とメリーゴーランドは映画でもおなじみの人気の観光名所であり、一般市民(特に子連れの家族)にも親しまれているものだ。だから、筆者も(おそらく大多数の市民も)、これらがトランプ組織の傘下だとは、このニュースを聞くまで知らなかった。

セントラルパークの人気アイススケート場「ウォルマン・リンク」。
セントラルパークの人気アイススケート場「ウォルマン・リンク」。写真:アフロ

市内ブロンクス区のゴルフ場「トランプ・ゴルフ・リンクス」。
市内ブロンクス区のゴルフ場「トランプ・ゴルフ・リンクス」。写真:ロイター/アフロ

市の突然の決定に対して、トランプ氏に代わり2017年から運営に携わっている次男のエリック・トランプ氏はABCニュースで、「デブラシオ市長の無能さを露骨に表した最たる例であり、政治的差別以外の何ものでもない」と反撃。「ニューヨーク市に我々との契約を強制終了する法的権利はない。市がそれでもプロセスを進めるとなれば、我が社に3000万ドル(約30億円)以上の債務を負うことになる」と威嚇し、市に対して宣戦布告した。

トランプ・オーガニゼーションと言えば10日にも、全米プロゴルフ協会(PGA of America)が、2022年の全米プロ選手権を同オーガニゼーション所有のゴルフ場「トランプ・ナショナル・ゴルフクラブ」(ニュージャージー州)で開催しないと発表したばかりだった。

トランプ氏が訴える「現代の魔女狩り」は、トランプブランドの失速まで及ぶか。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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