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今年最初の「悪夢」... 怒りのトランプ支持者が議事堂を占拠しカオス状態に

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
連邦議会議事堂に侵入しようとしている、暴徒化した集団。(写真:ロイター/アフロ)

アメリカは6日、今年最初の最悪な日となった。

首都ワシントンD.C.の連邦議会議事堂では、選挙人団で選ばれたバイデン氏を次期大統領に選出するための最終プロセスとも言える、上下両院合同会議の審議が行われていた。その途中で、全米から集まったトランプ支持者が、議事堂内に不法侵入。会議は中断、現場にいたペンス副大統領や議員らは避難した。

暴動によって持ち去られずに無事だった選挙人団の投票用紙。 「有能なスタッフがこれらを守らなければ、暴徒化した人々に燃やされていただろう」

(オレゴン州の上院議員、ジェフ・マークレー氏のツイートより)

写真:ロイター/アフロ

衝突は午後1時すぎに起こった。不正選挙の抗議のために集まった集団の一部は徐々に暴徒化し、議事堂入り口で警官ともみ合いに。午後2時すぎ、議事堂内に入り込んだ暴徒集団の中には、議長席に座ったり器物を取り去ったり、好き放題に振る舞う者も。

トランプ支持者とされる女性(撃たれた直後の映像が報道されたが、それを見る限り若いようだ)が議事堂内で、警官に至近距離から胸元を撃たれた。重体とされていたが、その後死亡が確認された。

連邦議会議事堂に大挙して押し寄せた、怒りのトランプ支持者。一部は議事堂内に違法侵入した。
連邦議会議事堂に大挙して押し寄せた、怒りのトランプ支持者。一部は議事堂内に違法侵入した。写真:ロイター/アフロ

侵入者には催涙ガスが撒かれ、銃を向けられるなど一触即発の場面も。議事堂内は法も秩序もない、カオス状態となった。

これを受けトランプ大統領は、映像やツイッターなどで「平和的な抗議行動」と「帰宅」を促し、午後6時以降は外出禁止令が発出されているが、陽が暮れても、人々の怒りは収まらない。

写真:ロイター/アフロ

上下両院合同会議の前に、トランプ氏が再三「彼には権限がある」「彼なら正しいことをしてくれるだろう」と圧力をかけ続けた最後の頼みの綱、ペンス副大統領だが、実際には「選挙人票を拒否することはできない」と、トランプ氏の意向には沿えない形となった。

議事堂前には日の丸を掲げた人も。選挙の投開票日も、日本から熱狂的な支持者が渡米していた。(キャプチャはCBSニュースから筆者が作成)
議事堂前には日の丸を掲げた人も。選挙の投開票日も、日本から熱狂的な支持者が渡米していた。(キャプチャはCBSニュースから筆者が作成)

トランプ氏はこの日正午から、大勢の支持者(ほとんどがマスクをしていない)を前に演説を開いていた。ここでも不正選挙は許されないと訴え、「(国の恥として)歴史に残る大規模な不正を、我々は決して忘れない」「これは終わりではない。今日という日はただの始まりだ」と発言。自身が退任した後も続くであろう「トランプ帝国」の存続を、支持者らに直接アピールした。

共和党支持者の70%以上は今でも「票が盗まれた」と信じており、「民主主義の冒涜だ」と憤慨。一方、民主党支持者も「議会がこのような形で襲撃されるとは、憲法と民主主義を踏みにじる行為だ」と激昂している。

国の分断はさらに進んでいる。どちらが大統領に選ばれようと、この巨大な溝は今後も簡単には埋まらないということを、まざまざと見せつけられた。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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