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跡形もなくなったトランプ氏ツイッター。世界のリーダー7人はビッグテックの制裁をどう見たか?

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
永久追放されてしまったトランプ氏のツイッターアカウント。キャプチャは筆者が作成。

トランプ氏のツイッター、永久凍結

連邦議会議事堂で6日に起こった暴動を扇動したとして、ツイッターアカウントから「永久追放」されてしまったトランプ大統領。

暴動直後は以下のように、プロフィールは見える状態だったが、現在「跡形も無く」全削除されている(写真上)。

アカウントが停止措置になった直後(1月6日)はこんな感じだったが...。(キャプチャは筆者が作成。以下同)
アカウントが停止措置になった直後(1月6日)はこんな感じだったが...。(キャプチャは筆者が作成。以下同)

一掃された今でも @realDonaldTrump アカウントがかろうじて残されているのは、第三者によってこの世界一有名とも言えるアカウントが悪用(再利用)されるのを防ぐためだろう。

筆者の記憶では、多い時で8880万人以上ものフォロワーがいたトランプ氏のツイッター。8000万人が投票したとされる次期大統領のバイデン氏でさえフォロワー数は2370万人であるのと比べても、トランプ氏の発信力、拡散力、そして(中には虚言と見られる情報の)影響力が、ツイッター上でいかに群を抜いていたかがわかる。

永久停止措置の理由として、米ツイッター社は以下のように声明を出した。

@realDonaldTrump の最近のツイートとコンテキストを綿密に精査した結果、さらなる暴力を扇動する恐れがあるため、アカウントを永久に凍結しました。

(Twitter Safetyより)

@POTUSアカウントの方はまだ生きてはいるが...。
@POTUSアカウントの方はまだ生きてはいるが...。

メインアカウントが永久停止となった後、トランプ氏は米政府所有の @POTUS アカウントから、自身の言論の自由について反撃ツイートを続けたが、それらのツイートもツイッター社によって即削除された。

@POTUS アカウントからのツイートの削除について、ツイッター社がどのような手順を踏んだかは不明だ。

ツイッター社はまた、Qアノンの陰謀説関連の7万以上のアカウントも削除した。

ビッグテックが相次ぎ、トランプ氏の利用停止 or 制限つきに

トランプ氏のアカウントを停止もしくは制限つき措置にしているビッグテック14社はこちら。

NBCニュースより。
NBCニュースより。

米フェイスブックもトランプ氏に対して同様に使用停止措置を取っているが、6日の午後までの投稿は見られるようになっている。

しかし大統領就任式を20日に控え、フェイスブック社は11日、不正選挙に対しての合言葉「Stop the Steal」(票を盗むのを止めろ)関連の投稿を、一般投稿も含めて全面排除していくと発表した。

制裁に対して世界のリーダーたちはどう見る?

米ビッグテックによるトランプ氏への制裁について、世界のリーダーたちの反響はどうだろう?

ツイッターアカウント停止の判断について「民間のテック企業ではなく、市民や国に任せるべき」という声が多く上がっている。ニューヨークポスト紙で紹介されている、世界のリーダーや有力者らの意見はこちら。

アカウント削除の判断が、民間の企業の手の内にあることにショックを受けた。

これらの措置の決定は、会社のトップではなく、市民によりなされるべき

(ソーシャルメディア上の発言内容が法律に違反している場合)違反を主張できる「規制の公的枠組み」が必要。削除か罰金を課すかなどの判断は、市民と立法府によって決定されるべき

(欧州連合のフランス担当次官、クレマン・ボーヌ氏)

コンテンツを規制する責任は国や政府にあるべき。

デジタル・ジャイアントの規制は、デジタル・オリガーキー(君主制や民主制に対して、少数の人間が支配する政治形態のこと)によってできるものではない。

ビッグテックは民主主義にとって「脅威の1つ」だ。

(フランスのブルーノ・ルメール経済・財務相)

ソーシャルメディアがトランプ氏の検閲力を持っているのは「悪い兆候」だ。

誰であろうとも、ツイッターやフェイスブックに投稿する権利を奪われたり、検閲されたりすることは、受け入れられない。

世論を管理する検閲裁判所のような存在は、本当に厄介だ。

(メキシコのオブラドール大統領)

(ツイッターによるアカウント禁止について)この基本的権利に介入できるのは法と立法府であり、ソーシャルメディアの管理者による決定であってはならない。これらの観点からメルケル首相は、トランプ氏のアカウントが永久凍結されたことは問題だと考えている。トランプ氏は自身の意見を表明できる場を持って然るべき。

(ドイツ・メルケル首相のスポークスパーソン、 ステフェン・セイバート氏)

トランプ氏の阻止は、検閲に値する。

ツイッター社はなぜ、オーストラリアの兵士がアフガニスタンの子どもを殺しているように合成されたフェイク写真を中国政府が投稿したことを許し、削除しなかったのか。まだアメリカの大統領である人物の投稿を削除する場合、それらの兵士の写真についても考える必要があると、ツイッター社のオーナーに言いたい。(その偽りの写真は)まだ削除されておらず、誤りである。

(オーストラリアのマイケル・マコーマック副首相)

(ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領に対するツイッターの扱いについて同様の懸念を表明。自身のアカウントをトランプ氏の写真に差し替え)マドゥロ氏のアカウントがありながら、トランプ氏のアカウントが停止される世界は正常ではない。

(ブラジル、ボルソナロ大統領の子息、エドゥアルド氏)

ブラジル、ボルソナロ大統領の子息、エドゥアルド氏のツイッター。
ブラジル、ボルソナロ大統領の子息、エドゥアルド氏のツイッター。

またワシントンポスト紙によると、一般的に欧州の社会は、アメリカより政府による規制を受け入れており、近年はよりアグレッシブにハイテク・ジャイアントの行動を取り締まるなど、対応が進んでいるという。

そんな中で欧州委員会副委員長、マルグレーテ・ベスタガー氏は「(フェイクや問題投稿とそのアカウントをどうするかの)課題にどう対処するべきかの決定は、責任の伴わない企業のリーダーではなく、社会の手に委ねられるべき」とした。一方でツイッター社の今回の措置については、「大統領が人々に議会に向かうように促すなど『極端なケースの中でもさらに極端な状況』への対応だった」と理解を示した。

欧州連合のデジタル・エンフォーサーのトップ、ベスタガー氏。昨年12月に欧州委員会本部(ブリュッセル)で開催されたデジタルサービスおよびデジタル市場法に関する記者会見にて。
欧州連合のデジタル・エンフォーサーのトップ、ベスタガー氏。昨年12月に欧州委員会本部(ブリュッセル)で開催されたデジタルサービスおよびデジタル市場法に関する記者会見にて。写真:代表撮影/ロイター/アフロ

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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