「酒気残り運転」は無意識でも厳罰に! 自分で正確にチェックする方法は
『ひと風呂浴びて、数時間の睡眠さえとれば、前夜に飲んだアルコールは身体から抜けているはず……』
そう信じて、翌朝も普通に運転している人は多いことでしょう。
でも、お酒は簡単に身体から抜けるものではありません。
前回の記事『12月に増える早朝の一斉飲酒取り締まり 忘年会後の「酒気残り」には要注意!』でも書いた通り、ビール500ミリリットルを飲んだ場合、アルコールが身体から抜けるまでには男性で約4時間、女性で約5時間かかると言われています。
もちろん、個人差はありますが、倍量飲んだ場合は分解時間も2倍となります。
飲み放題のコースで何杯ものアルコールを飲んだ場合は、完全にアルコールが抜けるまでにかなりの時間を要すると考えてよいでしょう。
年末年始はお酒を飲む機会が増えるシーズンです。
翌朝、無意識のまま「酒気残り運転」をし、さらに事故を起こしてしまったら……。
想像するだけで恐ろしいことですね。
では、「酒気残り運転」を未然に防ぐためには、どのような方法があるのでしょうか?
一般財団法人全日本交通安全協会の事務局長で、警察庁交通企画課や佐賀県警本部長等を歴任された長嶋良さんにお答えいただきました。
【質問1】
前夜のお酒は抜けたと思い込んで運転し、「酒気残り運転」をしていることに気づかず事故を起こした場合でも、刑事罰は「酒気帯び運転」と同じく重く罰せられるのですか?
もちろんです。道路交通法第65条 第1項では、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と規定されています。
一般論として酒気残り(酒気帯び)の認識(故意)を否定した場合でも違反として検挙されます。
「飲酒運転」は、運転者に「自分の身体がアルコールを保有していること、車両を運転すること」の認識が必要とされています。この「アルコール保有の認識」というのは、単に運転者の「アルコールが残っていないと思っていた」という言い訳が通るものではありません。
飲酒をした事実があれば、「アルコールが抜けた」と思っていたとしても、結果として「飲酒運転の故意あり」と判断されるのです。
ちなみに、株式会社タニタが12月10日に発表した『飲酒運転に関する意識調査2019』の以下の結果をみて、運転者の意識の低さに驚きました。
1)
翌日にクルマを運転するのに、ついついお酒を飲み過ぎてしまうことはあるか⇒ある40.7%
2)
アルコールが体から抜けきっていないと思いながら、通勤や仕事でクルマを運転することはあるか⇒ある24.8%
3)
自身の職場では飲酒運転に関する社用車・公用車のルール・規則があるか⇒ない58.3%
4)
アルコールが体から抜けるまでにかかる時間を知っていたか⇒知らなかった47.4%
<参照:株式会社タニタの「報道資料」より>
たとえ微量であってもアルコールが残っていると、運転の判断力の低下、動作緩慢などにつながり、交通事故の危険性も増大することを認識して欲しいですね。
【質問2】
翌朝、酒気残りがあるかどうかを確かめるにはどうすればよいでしょうか?
酒気残り運転については、意識の差や慣れから、その認識すらない人が多いようです。しかし、前の質問でもお答えしたとおり、お酒を飲んだ翌朝に運転しなければならないときは、まずハンドルを握る前に「アルコール検知器」を使って自身の呼気に含まれるアルコール濃度を計測すべきでしょう。
万が一、酒気残り(酒気帯び)運転で検挙されたり、事故を起こしたりしてしまうと、罰金、免許の取り消しなどの行政処分だけでなく、失業、社会的責任など大変なリスクが待ち受けています。
何より、人身事故で他者の身体を傷つけてしまうと、取り返しがつきません。
それを考えれば、1台1万円前後のアルコール検知器の価格とは比較考慮できないと思います。
【質問3】
「アルコール検知器」の正しい選び方や使い方を教えてください。
アルコール検知器は、インターネットで検索すると、様々なものが市販されています。購入の際には、値段の多寡ではなく精度の高いものを選んでください。
国土交通省の指導による「アルコール検知器協議会」の認定を受けた商品は、安心の目安になるでしょう。
また、当会で販売している認定品「ソシアック」の情報はこちらですので参考にしてください。
「アルコール検知器」を使用するときは、胸や腹の奥から、深呼吸するようにしっかり息を吹きかけます。口の中の息だけでは正しい数値が出ない場合があります。
多少なりともアルコールを検知した場合は、絶対に運転してはいけません。酒気帯び運転の検挙の基準はあくまでも0.15ml/g以上ですが、それ以下でも数値が出たら運転してはいけないということをよく認識してください。
【質問4】
マウスウォッシュやドリンク剤を使用すると、アルコール検知器に反応することがあるというのは本当ですか?
アルコール検知器は、アルコールの成分と反応してその含有量を計測します。従って、理論上、アルコールを含有する飲料水等であれば反応するといわれています。
たとえば、ウィスキーボンボン(チョコ)を食べた後や、ドリンク剤でも反応することがありますね。
警察の取り締まりでも同様で、実際には飲酒していたのに、裁判等で「飲酒していない、ドリンク剤やマウスウオッシュだ!」と否認される例もあります。しかし、そうした場合でも、警察では裏付け捜査をして(飲酒先等)、飲酒の事実を明らかにしています。
繰り返しになりますが、法律上は「何人も酒気帯びて……」となっています。
罰則は一定のアルコール濃度以上の場合に科せられますが、少量であってもアルコール分を含有する食物やドリンクが運転に影響することがあります。
たとえば、酒にとても弱い方がウイスキーボンボンを食べてふらふらになった状態で車を運転すると、酒酔い運転などになることも想定されますので十分に気をつけてください。
【質問5】
自分自身の「アルコール分解速度」を知る方法はありますか?
お酒に強いか、弱いかは、個人差があります。体重や体質、性別によっても変わると言われています。基本的には遺伝子によるともいわれています。
「アルコール体質遺伝子検査」 を受けるとある程度わかりますので、市販のキットなどを使って遺伝子を調べ、あらかじめご自身のアルコール体質と適切な飲酒量を認識しておくとよいでしょう。
読者の皆さん、長嶋さんのご解説を参考に、くれぐれも「酒気残り運転」をすることのないよう気をつけてくださいね。