12月に増える早朝の一斉飲酒取り締まり 忘年会後の「酒気残り」には要注意
年の瀬も迫ってきました。今週から来週にかけては、クリスマス会や忘年会など、お酒を飲む予定が入っているという方も多いのではないでしょうか?
そんな中、気になる報道がありました。
'''『早朝に一斉飲酒運転取り締まり 県警320人出動「夜に飲酒したら、朝までお酒が残っている可能性が」』'''(埼玉新聞/2019.12.17)
12月16日早朝、埼玉県警は県下30か所で一斉に飲酒運転取り締まりをおこなったというのです。
飲酒運転の取り締まりと言えば、夜に行われるイメージが強いのではないでしょうか。
しかし、上記記事のタイトルにもあるとおり、「夜に飲酒したら、朝までお酒が残っている可能性がある」のです。
全国の警察ではこうした状態のことを「酒気残り運転」と名付けた上で、その危険性を呼び掛け、飲酒の機会が増える12月には特に取り締まりに力を入れています。
■「酒気残り運転」、自覚のないことの恐ろしさ
お酒を飲んですぐにハンドルを握ることは、「飲酒運転」という重大な違反だと知っていて犯すわけですから、極めて悪質な行為と言えるでしょう。
しかし、「酒気残り運転」は、ときとしてドライバー本人にその自覚がないケースもあるため、結果は深刻です。
最近も全国各地で次のようなケースが報じられています。
●沖縄で海上自衛官逮捕
2019年12月16日、午前5時55分ごろ、沖縄県内で海上自衛官(40)が「酒気帯び運転」の疑いで逮捕。本人は「酒は抜けたと思った」と供述しているが、呼気からは基準値超のアルコールが検知された。https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/511469
●千葉で警察官逮捕
2019年7月29日午後1時半頃、千葉県内のコンビニ駐車場で接触事故発生。乗用車を運転していた警視庁の警察官(52)が「酒気帯び運転」の疑いで逮捕された。この警察官は、「酔っている感覚はなかった。昨日の酒だ」という内容の供述をしている。https://www.chiba-tv.com/plus/detail/20190724633
また、元「モーニング娘。」のメンバーで、タレントの吉澤ひとみさんが、2018年9月6日午前7時ごろ、酒気帯び運転でひき逃げ事件を起こすという出来事も記憶に新しいところです。
'''『吉澤ひとみ被告に執行猶予判決 飲酒運転の被害者・遺族は何を思ったか』'''
彼女は自動車運転処罰法違反(過失傷害)、道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)などの容疑で逮捕されましたが、基準値の約4倍に上るアルコールが検出されたことも明らかになっています。
ここで紹介した全てのケースが朝方から昼間に発生しています。
ランドセルを背負った子供たちが通学している時間帯に、酒気帯び運転の車が一般道を走っているかと思うと大変恐ろしいことではないでしょうか。
一歩間違うと、自分自身も、悪気のないまま「酒気残り運転」の当事者になってしまう可能性があります。
前夜にお酒を飲んだ場合は、たとえ帰宅して睡眠をとったとしても、まだアルコールが残っていることがあります。十分に気をつける必要があるでしょう。
■ビール 500ミリでもアルコールが抜けるまでに約5時間かかる!
では、お酒を飲んだ後、「酒気残り運転」にならないためには、どの程度の時間をおくことが必要なのでしょうか?
また、お酒の種類や量によって、その時間に差はあるのでしょうか?
一般財団法人全日本交通安全協会で、詳しく伺ってきました。
まず、以下の表を見てください。
これは、20グラム前後の純アルコール(1単位という)を含むお酒の量を、酒類ごとに比較したものです。
体形、体格、性別等によっても個人差はありますが、1単位のアルコールの分解にかかるスピード(時間)の目安は、おおよそ以下の通りです。
●男性の場合
→ 飲み終わってからおよそ4時間
●女性の場合
→ 飲み終わってからおよそ5時間
いかがでしょうか?
血中のアルコール濃度は、飲酒後、約30分~2時間後にピークとなり、その後、濃度はほぼ直線的に下がっていきますが、完全に抜けるにはこれだけの時間がかかるのです。
最初の乾杯のとき、「とりあえず生中~!」などと言いながら、生ビールの中ジョッキをオーダーする方は多いと思いますが、仮にこの1杯で終わりにしたとしても、アルコールが抜けるまでに4~5時間を要するということは、目安として覚えておきたいですね。
ちなみに、2倍の量のアルコールを身体に入れると、分解時間も2倍かかるとのこと。
この事実を知って背筋がぞっとしている方も少なくないのではないでしょうか。
■飲酒によって激増する事故率
それでもまだ、
『数時間でも睡眠をとりさえすれば、ほとんどお酒が抜けるはずだから大丈夫……』
と高をくくっている方は、「飲酒有無別の死亡率」を比較した以下のグラフを見てください。(警察庁「平成30年中の交通事故の発生状況」等より作成)
「飲酒なし」で起こった死亡事故と比べると、「飲酒あり」は約8.3倍、「酒酔い運転」は約11.5倍に跳ね上がっています。
少量であっても、お酒が運転にどれほど危険な影響を与えるかは一目瞭然です。
早朝取り締まりが年末に強化されているのはなぜなのか?
「酒気残り運転」の怖さを認識し、十分に気をつけるようにしてください。
なお、自分で手軽にできる「アルコール検知」の方法については、別稿でレポートしたいと思います。