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【シューズの寿命は感覚で決めないで!】ランニングシューズはどう劣化する?そしてそれに気づけるのか?

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ
まだまだ使える!と思っても、シューズは結構劣化していることもあります。

一部の高性能シューズを除いて、一般的にランニングシューズの寿命はだいたい500kmと言われています。とはいえそれは、学校の運動靴のように穴が開いたり、革靴のように靴底がはがれて壊れる寿命ではありません。ランニングシューズの機能が低下してしまう距離と言われています。これについて研究している文献がいくつかありますので、どのように低下しているのか見てゆきましょう。

文献は2020年のスペインからのもので、33人の男性市民ランナーに対してNew Balanceの738というシューズを用いて調べています。ちなみにこのシューズはメーカーによると、耐久距離は700~800kmとされています。そのシューズを用いて足慣らしをしただけの0kmと、350km、700kmを走行した時点で、足が受ける圧と自覚的な圧感を調べています。

New Balanceのシューズの劣化と自覚的感覚との乖離:Escamilla-Martínez E.Int J Environ Res Public Health.2020
New Balanceのシューズの劣化と自覚的感覚との乖離:Escamilla-Martínez E.Int J Environ Res Public Health.2020

足が受ける圧は、350~700kmと使用するにつれてゆっくりと上昇していきます。もともと圧があまりかからない中足部は特に顕著です。要は耐久距離の範囲内でも、少しずつ機能は低下していくのです。
驚くのは自身の感覚として、これを感じにくいことです。靴の弾力の測定値と自身で感じた圧感は、無関係~非常に弱い逆相関がある程度なんです。つまりは足はそれなりに強い圧を受けているのに、まだまだクッション感が残っていると感じてしまうのです。

同様なことは、ほかの文献でも報告されています。2017年のアメリカからのもので、男女15人の市民ランナーについて、120ドルで買える範囲のシューズについて研究したものです。シューズはBrooks Ravennaが10人、AsicsGT2140が4人、Saucony Rideが1人となっています。

シューズのクッションの実測値と自覚的感覚の変化:Cornwall MW.Int J Sports Phys Ther.2017
シューズのクッションの実測値と自覚的感覚の変化:Cornwall MW.Int J Sports Phys Ther.2017

一般的なシューズの寿命といわれる500kmを超えると急に劣化するわけではなく、初期から徐々に低下することがわかります。ですが、踵のクッション感はあまり低下していないことがわかります。前述の文献と同じく、シューズの劣化に感覚的に気づくのは難しいことがわかります。
ランニングシューズの主たる機能は安定性とクッション性と言われていますが、これらが低下すると、怪我やパフォーマンスの低下につながります。シューズの寿命は自身の感覚ではなく、走行距離や外観をもとに決めるようにしてください。

メーカー各社のホームページでも、シューズの寿命は感覚ではなくて走行距離や使用年数、ミッドソールやアウターソールの外観で判断するよう書いてあります。

とはいえ、劣化したからと言ってすぐ捨ててしまうのは惜しいと思います。そんなシューズは、怪我するリスクの少ない低強度の練習用として履くのがよいでしょう。

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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