若手官僚の14.7%が辞職意向。なぜ霞が関の働き方改革は進まないのか?
6月19日、政府は「国家公務員の働き方の改善状況に関するアンケート」の調査結果を公表した。
内閣人事局が約4万4000人の国家公務員を対象に行ったこのアンケート調査結果によると、「数年以内に辞職したい」と答えた人が全体の5.5%を占め、非管理職である30歳未満の男性職員では、7人に1人の割合(14.7%)に達した。
ここ数年、政府が「働き方改革」を主導し、国家公務員の激務について度々報道されているにもかかわらず、なぜ霞が関の働き方改革は一向に進まないのか。
アンケート結果をもとに見ていきたい。
(6月26日追記:年代×本省/地方勤務の辞職意向データは公表されていないが、地方勤務に比べ本省勤務の方が辞職意向は高くなっており、実態は14.7%以上になっている可能性が高い)
アンケート調査の実施概要
・有効回答者数:44,946人
・実施対象:各府省等に勤務する国家公務員(再任用職員は除く)のうち、約3割の職員(ランダムサンプリング)
・実施時期・方法:令和元年11月25日(月)〜12月17日(火)の期間において、Webアンケート形式で実施
※このアンケートは昨年末に実施されたものであり、直近のコロナ禍における影響は入っていないことは考慮する必要がある。直近の状況については、(株)ワーク・ライフバランスがアンケート調査を実施しており、その結果をもとに再度紹介したい。
若手職員ほど辞職意向
2018年に続き2回目となったこのアンケート調査。
前回に比べ、働き方改革が「進んだ実感がある」と答えた割合はやや増えたものの、管理職と非管理職で認識の差が大きく、(地方を除いた)霞が関で働く非管理職の半数近くが「実感がない」と回答している。
また若手職員ほど「辞職意向」が強く、働き方改革の実感度が低い人ほど、辞職意向がより高くなる傾向になっている。
辞職意向の理由としては、40代以下や女性職員では「仕事と家庭の両立が難しい」が、若手、男性職員では「もっと自己成長できる魅力的な仕事につきたい」が、多く挙げられている。
働き方改革を阻む国会関係業務
そして、(本府省庁の)働き方改革が十分に進んでいない原因としては、「非効率・不要な業務が多い」に加え、「(国会関係業務を含む)予定外の仕事が突発的に発生する」が最も多く、改めて、国会改革の重要性が浮き彫りになった。
実際に働き方改革について、職場で実施されていると思う取組としては、事務次官からのメッセージやWLB推進強化月間などの集中取組期間の設定などが挙げられており、「やっている感」の強い、実際の業務内容の見直しとはやや離れている印象を抱く。
一方、働き方改革を進めるために、実施するべき取組としては、「国会関係業務の効率化」が最も多く挙げられており、「期待」と「実施内容」に大きなギャップ(課題)が存在している。
これまで「国会改革」の重要性については度々取り上げてきたが、やはり国会審議の質だけではなく、霞が関の働き方改革においても必須な改革であり、次の国会でこそ、本格的な改革が進むことを期待したい。
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行政機関の人員は十分なのか?
また、業務の効率化、国会改革といった永田町・霞が関内での取り組みに加え、再検討しなければならないのは、公務員の人数である。
今回、コロナ禍において、「雇用調整助成金」や「持続化給付金」、「特別定額給付金」など、国民に対して様々な公的支援メニューが打ち出されているが、現場の実務が追いついておらず、国民には依然として支援策が行き届いていない状況にある。
こうした背景には、世界的にも遅れているICT環境に加え、ここ30年程度削減され続けてきた、行政機関の慢性的な人手不足がある。
いまだに、公務員削減を求める国民の声は根強いが、日本は以前から先進国で最も公務員の割合が少ない国になっている。
さらに、今後ますます高齢化が進み、公的サービスへのニーズも多様化していくことを考えると、公的サービスの拡充、そのための体制作りは不可欠である。
にもかかわらず、政治家やマスコミは比較的身分の安定している公務員への国民の嫉妬を煽り、一時的な人気取りを止めようとしない。だが、結果的にそうした行為の「被害」に遭うのは国民であり、それが今回明らかになったと言える。
はたして今の公務員数で十分なのか。このコロナ禍を機に、公務員の人数についても、再考する必要があるだろう。