今国会で官僚の働き方改革は進むか?もう待ったなしの危機的状況である
1月20日に開会した2020年の通常国会。
全世代型社会保障や働き方改革、防災・減災など、課題は山積しており、建設的な議論が行われるか注目される。
そして昨年の臨時国会からの積み残しで忘れてはならないのが、官僚の働き方改革だ。
10月中旬に起こった台風前夜での深夜残業をきっかけに、官僚の長時間労働の実態やそれを改善できない「構造的な問題」、国会改革の必要性がネット上で広く拡散されたものの、一向に大きな改善は見られない。
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しかし、すでに国家公務員の志望者は減少傾向にあり、若手の退職も増えるなど、官僚の労働環境の改善は待ったなしの状況である。
人事院によると、キャリア官僚の合格者に占める東大卒の比率は2019年度に17%となり、10年間で半分近くに低下、経産省では、2018年度に退職者が20人を超えた。キャリア採用が年約50人であることを考えると、明らかに多い。
結果的に、「国会対応」など日夜仕事に忙殺され、不祥事発生や政策立案の質が低下するなど、国民に大きな不利益を与えつつある。
こうした状況をどうすれば打開できるのか?
1月21日、以前から国会改革に向けて活動してきた細野豪志衆議院議員が動画を投稿。
過度な「官僚叩き」はやめるべきだ、と訴えた。
非常に重要なポイントがコンパクトによくまとまっているので、テキストで要点を紹介したい(6分弱なので是非とも動画で全篇ご覧頂きたい)。
(以下、動画からの引用)
(過度に官僚に頼らずに)国会の調査機能活用を
「国会の議論が本格化しました。官僚のみなさんはこのタイミングからものすごく忙しくなるんです。
国会というのは国民の代表、国権の最高機関ですから、官僚のみなさんが国会に合わせて忙しくなっていろいろ情報提供をする、これはいいことだと思うんです。
ただ一方で、国会が官僚に頼りすぎている。場合によっては、官僚を叩きすぎている。
こういう批判に対して我々はやっぱり考え方を変えて応えていかなければいけないと思います。
実は国会にはいろんな調査機能があります。
例えば法律も、ほとんど内閣に頼っていますが、本当は衆議院や参議院に法制局があります。いろんな調査も国会図書館や調査室を使えば、国会の中でできます。
ですから、基本的には官僚のみなさんに頼らずに、自分たちで政策を作っていくという気概がまず必要だと思います。」
早めの質問通告
「そしてもう一つ重要なのは、質問の時の対応なんです。
私も過去いろんな質問をしてきましたが、できるだけ官僚のみなさんの負担にならないよう、質問の通告、これがないと実質的な議論になりません、これが迷惑な時間にならないように、たとえば前の日の(午後)3時までに(通告を)する。
たまに委員会が決まるのが前の日の4時とか5時だったりすることがあるので、その場合にはあらかじめ(質問を)作っておいて、決まった瞬間に出すとか、そういうことをやってきましたが、概して遅い。
国会の答弁を作るのは、各省全部待機しますから、本当に夜中の作業になります。終電を越えても、各省で調整をしなければならないことを繰り返して、官僚の過重労働、精神的な負担になっている。
そのことが結局は官僚の魅力を落としている。」
国会答弁を柔軟に
「答弁に対する考え方も変えた方がいいと思います。
国会で質問する際は、官僚の側は更問(サラトイ)というものまで作ります。
一つの質問が来て、それに対して答弁を書いたら、さらに突っ込んだ質問が来る可能性があるので、枝分かれして更問を作ります。
そしてそれに対して答弁を書く。
ここまでやるのには理由があります。過去の答弁との連続性であるとか、他の大臣との整合性とか、それをものすごくきっちり考える。
日本の国会の特徴です。
もちろん、安全保障など基本的なことをしっかりやらなければいけないことはあるんですが、そうでないテーマについてはもう少し柔軟にやっていくことも必要ではないか。ここは政治家同士の議論というものを重んじていく文化への変化が必要ではないかと思います。」
質問主意書
「もう一つは質問主意書です。
国会の質問以外に議員が内閣に質問を投げることができます。
国会法ではこれに内閣が答えるという形になっていて、閣議決定の必要がある文書になっています。
国会質問は閣議決定文書ではないんです。
質問主意書は閣議決定文書で、しかも7日以内に答えなければならない。これが非常に大きな(官僚の)負担になっています。
私が初当選した頃(2000年頃)は年間だいたい200本ぐらいでしたが、最近では750本とか多い年は900本ぐらい質問主意書が衆議院と参議院で出ます。
これを作るには内閣法制局も関与しなければならない。きっちり閣議決定をするので、文章を検討して検討してそれを閣議決定して答弁を出してくる。
これが800本とかあると、正直中身がひどいんじゃないかという質問主意書もあります。
これは去年出た質問主意書ですが、『気候変動のような問題はセクシーでなければならないという小泉環境大臣の発言に関する質問主意書』、これが参議院で出てます。
内閣法制局も含めて、このことに膨大なエネルギーを使っていること自体が私はやっぱり国会が考えなければならない大きな問題の一つだと思います。
もちろん働き方という意味でも問題ですし、どんなに大変であっても官僚のみなさんは国家のために働いていますから、必要なことであればやるというマインドがあるんです。そのやる気であるとか、モラルであるとか、国会を尊重する考え方とか、それをかなり揺るがすような事態が起きているのではないかと思います。」
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過度の官僚叩きはやめるべき
「私が最後に申し上げたいことは、過度の官僚叩きはやめて、彼らは国家の財産ですから、必要なことの情報提供はするけれども、きちんと尊重する文化を国会に根付かせていくことは是非やっていきたいと思っています。」
(引用終わり)
これまで度々言及してきたように、官僚の労働環境改善、特に国会対応は与野党が協力しなければなかなか進まず、根本的には「日程闘争」をやめなければならない。
そのためには、与党内での事前審査制や党議拘束の緩和など、重要な論点は数多くあるが、冒頭述べた通り、官僚の労働環境は「限界」に近づきつつあり、一歩でも今国会で改善が進むことを期待したい。