15年しか使われなかった駅舎の現役時代の姿 根室本線 直別信号場【後編】(北海道釧路市音別町)
利用者数の減少により平成31(2019)年3月16日に廃止となった根室本線の直別駅。信号場となった今でも駅舎は残っているが、駅としてはわずか15年しか使われなかった。前編では現在の信号場とその周辺を紹介したが、後編では駅としての現役時代の姿について紹介しよう。
まずは駅舎と駅前の様子から。広々とした未舗装の駅前は廃止となった今も全く変わらない。駅舎に掲げられた駅名はもちろん廃止後に撤去されたが、それと入れ替わるように駅の歴史を記した案内板が駅舎前に設置されている。駅舎前に据え付けられた丸太のベンチは廃止後もそのままだ。ログハウス風の駅舎は平成15(2003)年12月に建てられたもので、これはそれまでの駅舎が同年9月26日の十勝沖地震で倒壊したことによるものだった。
駅舎の入口は正面にはなく、向かって右手にあった。二つ並んだドアのうち、右が入口で、左はトイレだ。廃止後はいずれも封鎖されている。入口脇にはひらがなで「ちょくべつ」と駅名が掲げられていた。
利用者の少なさを表すかのように待合室は手狭で、ベンチが一脚だけあった。ベンチの上に置かれていた駅ノートは廃止後、駅前に設置された「さすらいの牛舎」(前編参照)に移されている。
ホームは相対式の2面2線。ホーム間は昭和46(1971)年設置の跨線橋で結ばれていた。雪が多い北海道では屋根なし跨線橋は少数派だが、釧路地方では雪が少ないためか、直別駅や隣の尺別駅などに設置されている。
ホームは下り釧路方面が発着する駅舎側が1番線、上り帯広方面が発着する反対側が2番線だった。とはいえ、主要の駅のような番線表示はなく、ホーム上の設備は至って簡素だった。
直別駅の釧路方にあった隣駅・尺別駅も直別駅と同じく平成31(2019)年3月16日に信号場化されている。これにより厚内~音別間は駅間が15.0キロメートルになった。また、この2駅の廃止により、釧路市音別町にある駅は町の中心にある音別駅のみとなっている。
これらの写真の撮影日は平成30(2018)年8月18日。筆者は11時23分発の普通帯広行き2524D(キハ40-1768)で下車して、12:15発普通釧路行き2525D(キハ40-1749)で去るまで、50分ほど滞在した。直別駅が信号場となってから早くも4年半、駅舎は今も姿を留めているが、ホームと跨線橋は消えて、上の何気ない一枚の写真も再現不可能になってしまった。何気ない瞬間を切り取っておくことの大切さを、廃駅を再訪することで改めて実感する。
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