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天文学の常識が覆った!最強宇宙望遠鏡「ジェイムズウェッブ」による新発見3選

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「JWSTにもたらされた最新の大発見3選」というテーマで動画をお送りしていきます。

去年2021年12月25日には、あのハッブル宇宙望遠鏡の後継機と期待される「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」の打ち上げが成功しました。

ハッブル宇宙望遠鏡は高度約570kmを周回し、そこから宇宙を観測していたのに対し、JWSTは太陽-地球系の「ラグランジュ点2(L2)」というところから観測を行います。

ここは地球から150万kmほど離れた場所です。

そこで様々な調節を済ませ、先月7月から本格的な科学観測を始めることに成功しています。

それから天文学の歴史を塗り替えるような大きな発見をいくつもしているので、今回はそれらをまとめて紹介します。

●系外惑星の二酸化炭素を初検出

2022年8月25日とつい先日、JWSTの観測により、史上初めて太陽系外惑星の大気に存在する「二酸化炭素」を明確に検出することに成功したと発表があり、話題を呼んでいます。

二酸化炭素が検出されたのは、地球から約700光年彼方にある木星の約4分の1の質量を持つガス惑星「WASP-39 b」です。

主星から非常に距離が近いことから高温になっており、木星直径の約1.3倍にまで膨れ上がっているそうです。

このように主星に近い場所を公転し、非常に高温になっている巨大なガス惑星は「ホットジュピター」と呼ばれます。

太陽系にこのような惑星はありませんが、宇宙には比較的ありふれた分類の惑星と考えられています。

WASP-39 bは主星を公転中に、地球から見てその主星の前を横切ります。

この際に地球から見た主星からの光は惑星に遮られて周期的に減光するため、その様子から惑星の存在が判明しました。

惑星が主星を横切ることを「トランジット」と呼び、このような系外惑星の発見方法をトランジット法と呼びます。

このようにトランジットを起こす系外惑星に大気が存在していた場合、トランジットの際に主星からの光の一部が惑星の大気を通過してきます。

トランジットの瞬間の主星からの光と、惑星が横切っていない時の主星からの光の波長ごとの強度分布(スペクトル)を比較すると、惑星の大気によってどの波長の光がどれくらい吸収されたかが理解できます。

Credits:NASA, ESA, CSA, STScI
Credits:NASA, ESA, CSA, STScI

JWSTが観測した、惑星WASP-39 bがその主星の前を横切る際の主星の光の時間ごとの強度変化を、光の波長ごとに示したグラフがこちらになります。

WASP-39 bの大気を構成する物質によって、吸収する光の波長が異なるため、どの波長の光がどれくらい減光しているのかが理解できれば、WASP-39 bの大気中に存在する可能性の高い物質を推測できます。

このグラフの減光部分(トランジットの瞬間)をよく見ると、緑で示された波長の光が、赤で示された波長の光よりも大きく減光していることが、つまり緑で示された光はより顕著に惑星大気に吸収されていることがわかります。

この特徴は二酸化炭素が主星からの光を吸収していた場合に示すものと非常によく一致していることから、WASP-39 bの大気中にはほぼ間違いなく二酸化炭素が存在すると言えます。

太陽系外惑星の大気で吸収された光のスペクトルを、この波長帯においてここまで詳細に分析できたことは今までなく、二酸化炭素を明確に検出できたこともこれが初めてとのことです。

二酸化炭素を含め、太陽系外惑星の大気の組成を理解することは、その惑星の歴史を、さらには太陽系や地球の歴史を解明することにも繋がります。

太陽系外惑星の分析はJWSTの主要なミッションの一つでもあるので、今後も様々な系外惑星についてさらに一気に理解が深まっていくことが期待されています!

●史上最遠の天体候補を続々新発見

JWSTは本格的な科学観測を開始してから短期間で、既にいくつもの「新発見の超遠方天体」の候補を発見しています。

これまでの人類の観測から、地球から遠方の天体ほど速い速度で地球から遠ざかっていることが知られています。

このことからこの宇宙は膨張していると解釈されています。

音波は、音源が観測者に対して近付いているときは本来より波長が短く高い音に聞こえ、反対に遠ざかっているときは本来より波長が長く低い音に聞こえます。

これは「ドップラー効果」という現象です。

光も音同様に波なので、ドップラー効果が起きます。

地球に対して近付いている天体から放たれた光は、本来よりも波長が短く青みがかって見え、反対に遠ざかっている天体から放たれた光は、本来より赤みがかって見えます。

地球から遠方にあり、宇宙膨張の影響で遠ざかっている天体からの光はドップラー効果で赤みがかって見え、これを「赤方偏移」と呼びます。

そして地球からより遠く、速い速度で遠ざかっている天体ほど赤方偏移の度合いが強まります。

つまり天体からの光を分析し、赤方偏移の度合いを調べれば、その天体までの距離を推定することができます。

NASAが最初の科学観測画像を公開してからわずか1週間後の7月19日には、今から135億年前、つまり138億年前に宇宙が誕生してからわずか3億年後に放たれた、超遠方の銀河「GLASS-z13」の光を捉えた可能性があると発表されました。

これは今までに正式に認められている最古の銀河「GN-z11」よりもおよそ1億年古い光であり、これまでに人類が見た中で最も遠い、最古の銀河の姿の可能性があります。

さらに別の研究チームは新たに、いくつもの最遠天体の候補を発見しました。

その中の一つである「CEERS-93316」という銀河は、今から135億7000万年前、宇宙誕生からわずか2億3000万年後の光を捉えている可能性があります!

これは確認されている最遠の銀河「GN-z11」と比べても、赤方偏移の度合い(zで表される数値)が非常に高いことがわかります。

16.7という数値は、他の新発見の候補天体の中でもダントツで高い数値です。

ただしこの数値については現状不確かさが大きいため、この天体の光がどれほど前の光なのかを確定させるために、今後さらに詳細な観測が求められています。

とはいえたった1カ月ほどでこの成果ですから、JWSTはまさに超遠方の宇宙の観測の常識を覆している真っただ中であると言って良いでしょう!

今後の進展が本当に楽しみな分野です。

●史上最遠の単独褐色矮星を新発見

JWSTが観測できる遠方の天体は、銀河に限りません。

惑星と恒星の中間的な天体である「褐色矮星」についても、観測史上最遠記録を大幅に更新したかもしれません。

太陽のように光り輝く恒星という天体は、その中心部で核融合反応が起きています。

この現象は星の中心部が自身の重力により強烈に圧縮され、超高温・超高圧の環境となっているために発生しています。

つまり星の中心部で核融合が起き、恒星として光り輝くためには、一定以上の質量が必要です。

具体的には地球の約320倍重い木星の、さらに80倍ほどの質量が最低でも必要とされています。

それ未満の質量だと、恒星を成す最も基本的な物質である軽水素を核融合で消費することはできません。

ですが、星内部に少しだけ存在する「重水素」という物質であれば、もう少し軽い天体でも核融合の燃料にすることができます。

具体的には木星の13-80倍程度の質量を持つ天体なら、重水素のみを核融合で消費することができるようです。

このような恒星とガス惑星の中間的な性質をもつ天体を、「褐色矮星」と呼んでいます。

褐色矮星はこの宇宙に大量に、それこそ恒星よりも多く存在している可能性がありますが、これまでに数百個程度しか発見されていません。

それはこの天体が低温で非常に暗いためです。

とはいえ全く光を放たないわけではなく、主に微弱な赤外線を放出しています。

そのため赤外線での観測に特化しているJWSTは、褐色矮星も新たに観測できると期待されていました。

そんな中、JWSTの観測によって新たに褐色矮星「GLASS-JWST-BD1」が発見されたと発表されました!

この褐色矮星は連星を成さず単独で存在し、質量が木星の約31倍、表面温度は約330度、年齢は50億歳と推定されています。

特筆すべきは地球からの距離で、約1900-2400光年と推定されています。

これまで単独で存在する褐色矮星の最遠記録は530光年であるため、その記録を何倍も更新してしまっています。

このようにJWSTの観測力で、既に様々な常識を覆す新発見がもたらされています。

この望遠鏡の今後の活躍から目が離せそうにもありません。

https://www.nasa.gov/feature/goddard/2022/nasa-s-webb-detects-carbon-dioxide-in-exoplanet-atmosphere
https://www.ed.ac.uk/news/2022/edinburgh-astronomers-find-most-distant-galaxy
https://phys.org/news/2022-08-faint-distant-cold-brown-dwarf.html
https://sorae.info/astronomy/20220827-glass-jwst-bd1.html

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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