史上初!太陽以外の恒星表面の「実写動画」の撮影に成功【かじき座R星】
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「太陽以外の恒星の対流の動画を初撮影」というテーマで解説していきます。
かじき座の方向に178光年彼方にある恒星「かじき座R星」の表面の運動をALMA望遠鏡で詳細に撮影した史上初の「実写動画」が2024年9月に公開されました。
●かじき座R星について
「かじき座R星」は、かじき座の方向に178光年彼方にある5~6等星の間で変光する変光星で、地球から肉眼でギリギリ見えるくらいの明るさの恒星です。
しかし赤外線では-2.6等級で、全天でも特に明るい恒星の一つになります。
寿命に近づいて膨張した赤色巨星であり、その半径は太陽の約350倍にもなります。
しかし質量は太陽と大差ないので、太陽の50億年後の姿であると言えます。
これだけ巨大な恒星ですが、178光年という恒星としては近い位置にあるため、オリオン座α星のベテルギウスを上回り、「地球から太陽以外で一番大きく見える恒星」として知られています。
太陽以外の恒星は一般的に、その本体の大きさの割にあまりに遠くにあるため、点にしか見えません。
しかしかじき座R星を始めとした一部の恒星については、最先端の観測機器を用いることで、地球からその表面の様子を観測できています。
こちらは1997年3月に公開された、赤外線で撮影したかじき座R星の実写画像となります。
●かじき座R星の実写「動画」が公開
2023年7~8月にかけて、アルマ望遠鏡によってかじき座R星が撮影され、その映像データが2024年9月に公開されました。
この映像からわかることとして、恒星の光球(本体)の半径は1.64天文単位、太陽半径の約350倍です。
太陽に対する地球の公転軌道と比較しても、それを優に上回るほど巨大であることが分かります。
さらに、恒星表面で起きている「対流」という現象によって生じる「粒状斑」の姿と、その運動の様子までかなり鮮明に見て取れます。
太陽以外の恒星でこの様子を鮮明に捉えたのは史上初です。
対流は、恒星内部での核融合反応によって生み出されたエネルギーを恒星表面に伝える物理現象の一つです。
対流によって熱だけでなく、恒星中心部で生成された重元素も恒星全体に行きわたります。
さらに対流は恒星風の要因にもなり、生み出したエネルギーや重元素を宇宙空間へと供給しています。
1つの粒状斑の大きさは実に太陽の75倍にもなります。
対流の速度は20km/sにもなり、一か月程度の周期で粒状斑が浮き沈みを繰り返していますが、これは太陽の対流運動から予想された周期よりも短いです。
理論予想よりも対流が速いことは、「恒星が寿命に近付いて巨大化する過程で対流の仕方も変化する」可能性を示唆しています。
ただし、この原因については未解明です。