「新しい景色を見に行こう」 コンサドーレCEOが語る「サポーターに信頼されるクラブ運営術」
株式会社コンサドーレ代表取締役社長CEO、野々村芳和氏へのインタビュー連載コラム。今回は「サポーターに信頼されるクラブ運営術」について話を伺った。
重要なのはサポーターとビジョンを共有すること
アシシ:他クラブでよく見かける光景ですが、結果が思うように出ない時期に 「社長出てこい!」とゴール裏のサポーターが試合後に居座ったりするじゃないですか。コンサドーレの場合、昔はそういうこともあったと聞きますが、野々村さんが社長に就任した2013年以降、そういった不満はあまり出ていないように感じます。
野々村:「社長出てこい!」って言われる前に僕自身が自ら出ていって、喋ってますからね(笑)。
アシシ:たしかに野々村社長の場合、毎週道内のラジオ番組に出演して喋ってますし、道新のコラムも連載してますもんね。サポーターとのより良い信頼関係を築いていく上で、何か心がけていることはありますか?
野々村:まずはクラブの立ち位置をサポーターにしっかりと認識してもらうこと、ですね。
アシシ:J2時代に「コンサドーレを考える会」を札幌ドームで開催したことがありましたよね。
野々村:そうそう。クラブ側から説明の場を設けて、クラブの実情をサポーターにしっかり理解してもらえれば、そのような事態は起きないと思います。
アシシ:2015年に開催した「コンサドーレを考える会」には僕も参加していました。当時モニターに映された資料を写真に撮っていたのですが、今この資料を見ると当時掲げた将来像を余裕で達成できちゃってますね。
(※2019年予算は35億円前後。前回コラムより)
野々村:こういった形で数字もしっかり出して、かつ将来像も提示して、クラブのビジョンをサポーターと共有することが重要だと思っています。僕が就任した当初(2013年)はクラブの現在地とサポーターの期待値とに大きなギャップがあって、数年かけて積極的に情報発信をして、だんだんとそのギャップが埋まってきた実感があります。
「新しい景色を見に行こう」
アシシ:「ビジョンを共有する」点でいうと、最近は「新しい景色を見に行こう」というキャッチフレーズをコンサドーレはよく使うようになりました。すごく良いフレーズだなと思うんですが、これは誰が考えたんですか?
野々村:たしか僕だと思います。
アシシ:そうなんですね。2019年に日本代表が同じようなフレーズを使ってきたので、びっくりしました。
野々村:似たフレーズになったのは、たまたまだと思いますけどね。
アシシ:コンサドーレがこのフレーズを使うに至った経緯を教えてください。
野々村:2017年に四方ちゃん(四方田修平氏)が監督でJ1に残留した直後にミシャに監督を替えるタイミングで、結果を残してきた四方ちゃんに対しての思い入れがサポーターの中にはたくさんあって、監督交替に不満が出るということが普通に想定できました。替える理由をわかりやすくサポーターに伝えるために、自分で思っていることを素直に言葉にした、ただそれだけです。
「サポーターはクラブの一員である」
アシシ:でもそれが絵に描いた餅ではなくて、ルヴァン杯準優勝だとかアウェイで8-0勝利とか、実際に今まで見たことのない景色を見ることができていて、サポーターは達成感を味わえています。社長がサポーターに向けてビジョンを語る際に、何か心がけていることはありますか?
野々村:特にはないですね。本当に思っていることを言っているだけなので、妄想癖があるのかもしれません(笑)。
アシシ:社長は結構サポーター目線で話ができて、サポーターの心に響く言葉をよく使うイメージがあるんですけども、それはやはり解説者時代に培ったものなんですか?
野々村:どうなんでしょうね。でもサッカークラブを経営する上で、一番大事な部分はそこにあると思うのです。スポーツビジネスに精通している人はもっと違うところを重視するかもしれませんが、僕はサポーターと一緒になってクラブをつくっていく部分が一番大事だと思っています。
アシシ:サポーターに当事者意識を持ってもらう、ということですか?
野々村:そうですね。2013年の社長就任後、最初のお披露目イベントで「サポーターというよりはパートナー」、「サポーターはクラブの一員だ」といったようなメッセージを伝えました。社長に就任して来季で8年目になりますが、その思いは就任当初から何も変わっていません。そうやってクラブとサポーターが同じ方向を向いて、これからも一緒に成長していくことができればいいなと思っています。
(了)