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コンサドーレ三上大勝GMが語る「奇跡のJ1残留」に向けた秘策とは?

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
インタビューに答える株式会社コンサドーレ三上大勝代表取締役GM(スタッフ撮影)

2週間半のサマーブレイクを挟んで今夜、明治安田J1リーグが再開する。

北海道コンサドーレ札幌は24節を終えた時点で勝ち点15の最下位に沈んでいる。残留圏の17位と勝ち点差は10。J1残留に黄色信号が灯っている状態だ。

この危機的状況に対して、札幌のフロントはこの夏、テコ入れを行った。最近の夏の移籍市場ではあまり類を見ない、6人もの補強を行ったのだ。

FWアマドゥ バカヨコ190cm 現役のシエラレオネ代表

FWジョルディ サンチェス190cm スピードも兼ね備えた長身スペイン人

FW白井陽斗172cm J3でゴールを量産したスピードスター

MFフランシス カン162cm サイド攻撃を得意とする左利きガーナ人

DF 大﨑 玲央187cm 神戸でレギュラーだった大型ボランチ

DFパク ミンギュ177cm 左利きの元韓国代表

大﨑は既に試合に出ていて、レギュラーの座を獲得している。ジョルディ サンチェスも7月の浦和戦で途中出場し、勝利に貢献した。残りの4人もサマーブレイク中の強化試合でコンディションを上げてきている。

更に先月、ユニフォームの胸スポンサーである石屋製菓から大規模な招待企画がリリースされた。10万人規模の招待キャンペーンで、プレミストドームでのホーム戦を毎試合、満員にする計画だ。

残り4カ月、コンサドーレは離された最下位のポジションから「奇跡のJ1残留」を達成することができるのか? J1残留に向けた秘策について、三上大勝代表取締役GMに話を伺った(取材日:2024年7月29日)。

「赤字を出してでもJ1残留」を掲げた背景

---まずお聞きしたいのが、開幕前に今季は黒字必達を目標にしていたじゃないですか。それがこの夏、スポーツ報知のコラムで三上さんも語っていましたが、「赤字を出してでもJ1残留」と方針を切り替えました。方針転換に至った経緯を詳しく教えてください。

三上:前提として、クラブライセンスの話があります。コロナ禍があけて、今年から3年連続赤字になるとクラブライセンス剥奪となる規約が復活します。つまり2024、25、26年のどこかで黒字を出さなくてはいけない。2026年はシーズン移行の年に該当し、外的要因が大きすぎるので計算が難しい。ならば2024年と2025年、どちらの年が黒字を出しやすいか考えた時に、今年は多くの移籍金収入があったり、パートナー企業による広告料収入も右肩上がりで増えてきたりしたことで、今季開幕前時点では、今年まずは黒字必達を目標にしよう、となった経緯があります。

---なるほど。しかし開幕すると思うように勝ち点を積み上げることができず、シーズン当初から降格圏に低迷する形となり、5月から7月にかけて泥沼の8連敗がありました。

三上:うまくいかなかった理由のひとつとしては、怪我人が多く出てしまったこと。同時にチーム編成の面でいうと、今年はひとつの変換期だと自分自身、とらえていました。大卒の選手を育成し、代表入り一歩手前というところまで成長させるひとつのサイクルを確立してきた中で、他クラブに評価されて残念ながら移籍してしまう形となり、今年はチームが変化していく過渡期だと考えていました。そんな状況下で、怪我人が多く出たことが重なり、自分たちがやってきたサッカーを表現しきれない試合が続きました。

---経営者として、黒字必達の目標を継続するのか、赤字覚悟でJ1残留を目指す方向に舵を切るのか、決断を迫られる状況になった、というわけですね。

三上:そうですね。このままではJ2降格が現実味を帯びてきた。そんな中、報道で出ている通り、ゼラ(※)から新たに出資を受け入れることになりました。仮に今年赤字になっても、この先債務超過に陥る可能性が大幅に減ったことが、方針転換した大きな要因と言えます。

※ゼラ=ゼラフットボール有限責任事業組合法人

---その方向転換の結果、当初の補強予定人数を上回る6人の大型補強を敢行した、というわけですね。

三上:はい、その通りです。

J2に降格した時のプランB

インタビューに答える三上代表(スタッフ撮影)
インタビューに答える三上代表(スタッフ撮影)

---とはいえ、サッカーって水物じゃないですか。大型補強をしたからと言って、確実に勝てるわけではない。ここまで投資をした上で、仮にJ2に降格してしまったら、その時のダメージはより大きいものとなるリスクがあります。その点、経営者として降格した時のプランBは用意しているのでしょうか?

三上:やってみなきゃわからない部分も多いとは思います。仮に降格したとしても、ゼラの出資が確定した中で、まだ詳細な話はできませんが、新しい事業展開なども考えています。財政的にも黒字を出しながらクラブを来季以降、V字回復させるバックボーン的なものはできてきたと考えています。

---なるほど。対策は継続して打っていくということなんですね。更に先月、オフィシャルトップパートナーの石屋製菓さんから10万人規模の招待企画がリリースされました。「私はJ1残留を諦める気なんてサラサラありません」というコメントが印象的でした。

三上:正直涙が出そうになったし、感謝してもし切れません。

---単純計算として、チケットの平均単価を3,000円とした場合、10万人掛け算すると3億円になります。当然運営コストが発生するので、全額キャッシュインするわけではないと思いますが、この規模感の臨時収入はデカいですよね。

三上:先日のサポーターミーティングでも話しましたが、パートナー企業からの熱い思いを僕らはしっかりと受け取って、元々の計画だと3人程度の補強を夏にする予定だったのが、結果6人の大型補強になった、というわけです。

---石屋製菓の社長(石水創氏)ってアウェイ戦でVIP席に招待されているのに、キックオフ時間になったら札幌ゴール裏に移動して、飛び跳ねて応援するくらいの血気盛んなサポーターなんですよね。熱意が半端ないです。

三上:本当にすごい熱量を持っていると思います。クラブがこういった窮地に陥った時、クラブやサポーターが何とかしようと動くのはよく見られますが、パートナー企業さんもその取り組みに積極的に参加してくるというのは、世界的にも私自身、見たことがないです。北海道の可能性、ポテンシャルを改めて実感しています。

J1残留に向けた道筋

---パートナー企業のおかげで、後半戦で反撃の狼煙をあげる戦力は整いました。残り14試合で残留圏と勝ち点差10。この差をひっくり返すため具体的なプランを教えてください。

三上:この差をひっくり返すのは簡単なことではないですが、世界的に見てもJリーグにおいても、過去にこの差を逆転した実例があります。逆転するためにキーとなるポイントは2つあって、ひとつ目は15位以下の残留争いをするチームとの直接対決で勝ち点3を得ること。

---いわゆる「シックスポイントゲーム」ですね。相手から3ポイント奪って、自チームが3ポイントを得る。つまり実質6ポイントの意義がある試合を我々は5試合残していると。

三上:その通り。ふたつ目は、他に上位との対戦も残している中で、ホームゲームでの試合は、最低勝ち点1を獲ること。これら2つを達成できれば、必ずやJ1に残留できると考えています。更にこの厳しい道のりの中で、特に重要なのは「これ、本当にいけるんじゃないの?」という空気感を作っていくこと。パートナー企業の協力もあって、スタジアムに1人でも多く来てもらう招待企画は、その空気感を必ずや作ってくれると思いますし、中断前の浦和戦で勝ち点3を得ることができたおかげで、サマーブレイク中もすごく良い雰囲気でトレーニングができています。

---これは、後半戦が楽しみですね。

三上:可能性がある限り、J1残留に向けて全力で戦っていきますので、応援よろしくお願いします。

プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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