米セブン-イレブンに日本風タマゴサンド登場 「パンがフワフワ」と喜びの声 日本型コンビニ誕生の兆しか
成田空港にあるコンビニでいつも驚かされるのは、おにぎりやパンやスナック菓子を手にした海外からの旅行客がレジ前に長い列を作っていること。日本のコンビニフードが世界的に愛されているのがよくわかる光景だ。
逃れ難い日本のコンビニフードの魅力
レストランやフードのトレンドを紹介しているオンラインニュースサイトEater.comのロサンゼルス情報サイトEater Los Angelesは、日本のコンビニフードの人気ぶりについてこう述べている。
「日本のコンビニフードの魅力から逃れるのは難しい。ツナとマヨネーズを詰めたおにぎり、フワフワのエッグサラダサンドイッチ、その他のコンビニスナックは、インターネットのほぼ隅々にまで浸透している」
そんな日本のコンビニフードの世界的な愛されぶりを考えると、セブン-イレブンの親会社セブン&アイ・ホールディングスに対し、カナダの同業大手のアリマンタシォン・クシュタール社から買収提案が入ったのはとても納得できることだ。
日本や世界の人気商品を米国の店舗に
世界的に競争力が高いのは間違いない日本のコンビニフード。これを海外の店舗に導入しない手はない。セブン-イレブンは、米国での戦略について「日本やその他の世界の人気商品を米国の店舗に導入する計画がある」と前述のEater Los Angelesに対して話しており、さらに、導入予定の商品についても「米国支社は、チキン照り焼きおにぎり、味噌ラーメン、スイート・チリ・クリスプ・ウィングなどの新商品を米国の店舗に導入するために、日本やその他の海外の国際的カウンターパートと緊密に協力している。海外市場から米国に導入されるその他の商品には、タジン入りマンゴナダドーナツ、バーベキューポークスライダー、チキンカレーボウルなどがある」と述べている。
日本風のタマゴサンドがカリフォルニア州で登場
すでに、米国での成長戦略の表れとなるような動きも見られる。ティックトッカーたちが、日本のタマゴサンドイッチに近いサンドイッチが、カリフォルニア州ロサンゼルスの南に位置するオレンジ郡のセブン-イレブンに登場したと投稿しているのだ。
「私が日本で恋しいものの一つはコンビニのタマゴサンドイッチ。アメリカのセブン-イレブンが、スナック、フード、ドリンクを含め、日本風のリニューアルを行うと聞いてとても嬉しくなった。リニューアルされたタマゴサンドイッチは一部の店舗で販売されている。日本のものと全く同じではないけれど、かなり似ていて、以前販売されていたバージョンより確実に改良されている」
とティックトッカーのグリーンオニオンバンさんは紹介。
日本訪問中はほとんどセブン-イレブンのフードを食べていたというティックトッかーのアリアウトドアーズさんは、エッグサンドイッチに使われているパンがミルクパンに変わり、フワフワになったと評価している。
「大きく改良されたのはパンがミルクパンに変わったこと。甘みがあり、ライトな味わいでフワフワになった。全体的に前よりずっと良くなった。いい方向へ向かっている。レギュラーで買うかもしれない」
確かに、パッケージには「フワフワのミルクパンで、低脂肪のマヨネーズとディジョンマスタードをブレンドした薄味のゆでタマゴを挟んでいる」と説明されている。ちなみに、重さは193グラムで、販売価格は5.99ドル。
日本風に改良されたセブン-イレブンのエッグサンドイッチは、日本のサンドイッチのようにはパンの耳はカットされておらず、パンは厚めだが、確かに、パン自体はソフト感を漂わせている。全体的にパサパサしており、固めで、日本のパンが持っているようなしっとり感やフワフワ感に欠けているアメリカのパンとは一線を画していることが見て取れる。日米ではパンのテクスチャーに対する好みに違いがあるのかもしれないが、日本のコンビニ・サンドイッチを食べたことがあるティックトッカーは米国でも同じサンドイッチが食べられる日が来るのを待望しているようだ。
また、サンフランシスコを中心としたカリフォルニア州ベイエリアの3店のセブン-イレブンにも、日本風のエッグサンドイッチが登場したことが報じられている。
日本型コンビニを米国で再現か
カリフォルニア州で登場した日本風のエッグサンドイッチ。これは、セブン&アイ・ホールディングスCEOの井阪隆一氏が日本のセブン-イレブンのモデルは米国でも再現できると考えているとの見方を示したという、ブルームバーグ通信の2月の報道を反映しているようだ。同氏は「ガソリンとタバコに依存するビジネスモデルから、カスタマーが商品に基づいて当社を選ぶビジネスモデルへと変える必要があると考えている。この変化の鍵になるのはフレッシュフードだ」と語ったという。日本風のエッグサンドイッチの登場は、まさに、同社が米国のセブン-イレブンを日本のセブン-イレブンのようにフレッシュフード重視のビジネスモデルへと転換させようとしていることの表れと言えそうだ。
ウォール・ストリート・ジャーナルのビデオ“セブン-イレブンのエコノミクス”(下)によると、同社が、米国のセブン-イレブンでフレッシュフードにテコ入れしようとしている背景には、ガソリンについてはマージンが低いビジネスであることや電気自動車に乗る人が増えれば長期的にはリスクになる可能性があること、タバコについては利益率は高いものの喫煙者が減少している現状がある。しかし、フードに対する需要がなくなることはなく、同社は売上げに占める食品の割合を現在の24%から3分の1へと引き上げることを目標にしているという。このビデオでは、同社が、コミッサリーズと呼ばれる、全米に17ヶ所あるフード製造の拠点をアップグレードすることや、幅広い商品や地域性のある商品を展開するべく、パートナー企業のわらべや日洋ホールディングスがハワイ州、テキサス州、ヴァージニア州に工場を建設したことも紹介されている。
フレッシュフードに注力して米国の事業の再構築を図ろうとしているセブン-イレブン。日本風のフワフワなパンが使われたタマゴサンドイッチがカリフォルニア州のセブン-イレブンでデビューしたことは、まさに、日本型セブン-イレブンが米国に誕生する兆しのように見える。
そんな動きがあるなか、セブン&アイ・ホールディングスはアリマンタシォン・クシュタール社に買収提案されたが、買収された場合、セブン&アイ・ホールディングスが重視している、クオリティーの高いフレッシュフードによる成長戦略も踏襲されるのか? 今後の動きが注目される。