終わりのない「サイゼリヤのデート論争」 相手を見定めるための5つの観点とは?
サイゼリヤのデート論争
サイゼリヤを利用しますか。
サイゼリヤをはじめとするファミリーレストランは、ファインダイニングに比べると客単価は安いです。老若男女が好み、バラエティに富むメニューがたくさん用意されています。終日営業しているので、いつでも訪れることができ、非常に使い勝手がよいといえるでしょう。
そのサイゼリヤで、ここ数年にかけて繰り返されている、ある論争があります。それは、サイゼリヤで初めてデートすることの是非です。
・「サイゼ論争」再燃! 初デートの店への反応、付き合う相手の見極めで参考になる?/オトナンサー
プロからはオススメしないというコメント
記事では、結婚マッチングサービス「STORIA」代表でコラムニストの沢宮里奈氏によるコメントを紹介。女性を見極めるために利用するのはやめた方がいい、デート前にお金持ちを自慢していたのに手頃な飲食店を選ぶのは一番嫌われる、ということでオススメしないという論調でした。
私はファミリーレストランやカジュアルダイニング、恋愛や結婚の専門家ではありません。ただ、ファインダイニングやガストロノミー、ホテルレストランなどを専門としており、デートに相応しいレストランを紹介することはあります。こういった観点から「サイゼリヤのデート論争」について考察していきましょう。
客単価とメニュー
サイゼリヤの客単価やメニューについて改めて把握しておきましょう。
2022年10月12日に公開された最新の情報によると、サイゼリヤの国内における2022年8月の客単価は779円。メニューはたくさんありますが、人気のあるものを挙げていきます。
前菜類の「チキンのシーザーサラダ」が350円、「コーンクリームスープ」が150円、「エスカルゴのオーブン焼き」が400円。メインディッシュとなるものは「ミラノ風ドリア」が300円、「ハンバーグステーキ」が400円、「マルゲリータピザ」が400円、「ミートソースボロニア風」が400円となっています。
「イタリアンプリン」が250円、「フレンチトースト」が400円と、デザートも低価格。ドリンクについても「セットドリンクバー」が200円、白と赤の「グラスワイン」は100円と、非常に手頃な価格です。
こういった値段の安さと純粋なイタリアンにとどまらない品揃えの豊富さが、人気の理由になっているのでしょう。
アラカルトの飲食店
客単価を考慮すると、1人2品くらいはオーダーしていることになります。これくらいの値段帯であれば、ファインダイニングとは違って気軽に注文できることでしょう。
2人であれば、5品くらい注文するのも普通のこと。コースは用意されていないので、客が自分たちで数品を選ぶことになります。こういったアラカルトの飲食店では、相手の性格や考え方がよくわかるものです。デートにおいても、相手の考え方や嗜好がわかるので、とても意味があると思います。
具体的には、次の5つの観点で判断できるでしょう。
相談の有無
まずはオーダー方法を相談するかどうか。お互いに自分の分だけを食べるか、もしくは、2人でシェアするかなど、注文方法を相談するかどうかです。
最終的に、自分の分だけを注文することになるにしても、どのようにオーダーするかを相手に尋ねるのと尋ねないのとでは、大きな違いがあります。
食事の好みは幅広いです。全ての料理を別々に食べたい人もいれば、みんなでわいわいとシェアして楽しみたい人もいます。もちろん、同席する相手の属性によっても異なるでしょう。ただ、今回の場合であれば、「サイゼリヤでのデート」なので、お互いにある程度は好意を抱くカップルであるはず。そうであれば、余計にオーダーの方向性を確認した方がよいでしょう。
相手がどのようにオーダーしたいのかを尋ねるかどうかは、アラカルトの注文では気になるところです。
メニューの構成
コースではないので、自分でメニューの構成を考えなければなりません。そういった時には、どういった感覚で選ぶのかも気になるところ。
前菜、メインディッシュ、デザートとコース仕立てのように順序立てるか、とにかく食べたいものや気になったものだけをオーダーするか、人によって異なります。
さらには、オーダーの手順も人によって違います。まずメインディッシュを決めてから、他のメニューを決める人は少なくありません。つまり、メインディッシュの食材や調理法を基にして、他の料理を考えるというものです。他には、だいたい何品食べるかを決めた後に、最初から順番に料理を選ぶ方法があります。
前菜のチョイス
ファミリーレストランでは提供がありませんが、アミューズブーシュを抜きにすると、前菜は最初に食べられる料理です。同じ前菜を注文するにしても、サラダ、スープ、酒肴とだいぶ違いがあります。
ファインダイニングのフルコースであれば、冷たいものから温かいものまで、前菜だけで2品から4品くらい出てくるでしょう。他皿のデギュスタシオンであれば、魚料理までは前菜なので10品くらい提供されることになります。ただ、ファミリーレストランのアラカルトであれば、前菜はほぼ1品だけなので、何を選ぶのかは重要なところ。
季節性はあるにせよ、前菜を冷菜にするか、温菜にするかも好みがわかれます。冷菜であれば、野菜が中心のサラダなのか、ハムやパテなど動物性の要素が入ったものか、温菜であれば、スープか固形料理かで、だいぶ違うでしょう。お酒にぴったりな、味わいが濃厚なこってりとした酒肴という選択肢もあります。
最初の一品なので軽いものか、最初から重たい動物性の料理か、ゆっくりのスタートでお酒を飲みながらか、個性が感じられるところです。
メインディッシュも多彩な選択
メインディッシュは、その名の通り、食事のメインとなるものなので、とりわけ重要な選択となります。
魚料理や肉料理を注文するか、麺・飯を選ぶか、ここでも嗜好性が現れるところです。魚料理であればそこまで大差はありませんが、肉料理であれば、味わいの濃い牛肉、脂があってバランスのとれた豚肉、さっぱりとした鶏肉と、好みが把握できます。
麺を選ぶ場合、サイゼリヤはイタリア料理なので、パスタになるでしょう。これまでに500種類以上あったとされるパスタで、どれを選ぶのかも注目したいところ。ロングパスタはオーソドックスであり、ショートパスタは形状を楽しむもので、割とこだわりがある印象。ソースは様々なものがあるので、さっぱりとしたオイル系か、こってりとしたクリーム系かなど違いが存在します。
お酒の飲み方
カジュアルダイニングであれば、アルコールのペアリングはまず提供されていません。それぞれの料理に最適なお酒がグラスで用意できなかったり、料理とお酒のマリアージュを設計できるソムリエやきき酒師がいなかったりする背景もあります。
したがって、客は自分でお酒を注文することになりますが、どのようなお酒をどのようにオーダーするかによっても、相手の性格がわかるもの。
最初はとりあえずビールなのか、ワインなのか。それ以降は、同じものを続けていくのか、違うお酒をオーダーするかなど、人によって違うでしょう。
さらには、自分以外の人がお酒を飲むか飲まないかによって、アルコールのペースはどうなるかも気になるところ。
相手を見定められる
フランスの美食家、ブリア・サヴァランが著した「美味礼讃」の中に「どんなものを食べているかいってみたまえ。 君がどんな人であるかをいいあててみせよう」という名言があります。つまり、食の嗜好性によって、その人のことがわかるということです。
当記事はファミリーレストランのアラカルト注文でしたが、ブッフェで何をどうとるか、ファインダイニングのおまかせコースを楽しめるかなど、様々な食事において、人間性が垣間見られると思います。
「サイゼリヤのデート論争」において、正解となりそうなものは何か、恋愛や結婚の専門家ではないので、私にはわかりません。しかし、レストランの専門家という立場から、ファミリーレストランのアラカルトの注文方法によって相手についてより知ることができ、人間性を見定めるための一席になることだけは確かだと思います。
人生において、それぞれの人が食事できる回数は限られています。その貴重な一回の食事がファミリーレストランのデートであったとしても、決して意味がないわけではないと思う次第です。