「今日から俺は!!」大学生調査から見えたのは「福田雄一ブランド」?
プロモーションで効いたのはソーシャルよりテレビ
昨日、日本テレビのドラマ「今日から俺は!!」について、産業能率大学経営学部・小々馬敦教授による大学生に対する調査結果をお伝えした。
→「「今日から俺は!!」が大学生に見られている。テレビ離れはコンテンツ次第かもしれない。」
あくまで産業能率大学の生徒205サンプルのデータなので全国の全大学生が同じとは言えないが、テレビはほとんど見ないと平気で言う大学生たちがこのドラマに限ってはよく見ていることは驚きだった。
この記事ではその調査のさらなる内容を紹介する。
まず上のグラフは、「今日から俺は!!」を見たきっかけを聞いたもので、7割近くが「テレビの番宣」を挙げていた。テレビを見ていないはずの彼らが番宣をきっかけにドラマを見た、というのは一見すると矛盾している。
これは、テレビのリーチ力の底力と見ていいだろう。例えば朝出かける準備をドタバタする中でも番宣は届くのだ。また、日本テレビのドラマは比較的若い層に向けたものが多いせいもあるだろう。他のドラマを見ていたら番宣が出てきたので、と答えた学生もいた。
やはりテレビというメディアの認知効果は高いのだ。「テレビを見ない」と言ってのける層にも、結局いちばんリーチがあると言えそうだ。もちろん、興味を引く話題だからというのは大きいと思う。
番組の見どころについては「面白い」が中心
学生たちにフリーアンサー形式で番組の見どころを書いてもらうと「今日から俺は!!」のポイントが見えてきた。全体を象徴的に見てもらうためにテキストマイニング分析の結果を見てもらおう。
非常にわかりやすくど真ん中に大きく「面白い」が出てくる。テキストマイニング分析をワードマップで表示すると、最も多く出てくる言葉が中央に大きく出るのだ。「面白い」が回答の中でいかに多かったかが示されている。
「面白い」の周りには佐藤二朗、賀来賢人、ムロツヨシなどのキャスティングと脚本・演出の福田雄一の名前が見える。さらには「くだらない」「アドリブ」「せこい」「かっこいい」などが散っている。つまり大学生たちは「福田雄一ワールドで弾ける賀来賢人ら福田組常連の役者たちのアドリブを含めたくだらなくかっこいい世界」が気に入っているのだ。
小々馬教授はこのマイニングから「福田作品シリーズの信頼」を見出している。ジブリのようなブランド感が福田作品につきはじめている、というのだ。大学生たちは福田ワールドをすでに評価し、”わかって”いる。
せっかくフリーアンサーがあるので、ざっと分類していくつか取り上げてみよう。
まずキャストについて書かれたもの。この線がいちばん多いのでちょっと長くなるが並べてみよう。
- 面白い!賀来賢人がかっこいい
- ムロツヨシが好きだからみてます!
- ちょくちょくの小ネタが面白い。橋本環奈が可愛い。
- 賀来賢人やムロツヨシ、佐藤二朗が真剣にふざけている所が見所。
- 佐藤二朗とムロツヨシのシーンをもっと増やして欲しい
- 伊藤健太郎のファンで見ている。毎回笑わせてもらっててほんとに面白い。環奈ちゃんと健太郎くんのシーンは毎回面白くて真似しています(笑)
- ムロツヨシと佐藤二朗が見たかったから
- ギャグ線高くて面白い賀来賢人のキャラが好き
- 主要のキャスティングが好きだから、福田さんのコメディが好きだから、三橋と理子、伊藤と京子のカップルのシーンが面白くてすきだから、とにかくおもしろいから
- 賀来賢人とムロツヨシと佐藤二朗が好きで1話につき2回は見てます。めっっちゃ面白いです。福田監督も大好きです。
- ムロツヨシさんと佐藤二朗さんが出ていて、福田監督作品だから。
- イケメン俳優が本気でコメディをやってる姿
- 恥を捨てて本気で面白いところが最高!賀来賢人がカッコいい!今井最高!ゲスト楽しみ!みんな良い!
次に、福田雄一ワールドが好きだというもの。
- 福田感
- 監督が好きなのと、出ている人が面白い!
- 監督の作っている作品が面白いから。
- キャストが良いのと福田監督の作品が好きだから
- 福田組のドラマ映画が好きだから
- 福田監督のドラマが気になったので!
- 福田監督だから
- このドラマの監督が好きで面白いと思う。また、出演している俳優も豪華で見所がたくさん
- 福田監督のドラマだから絶対おもしろいとおもったから。
- 監督が他にも面白い作品を作ってるの知ってるから。
- 福田さん監督の作品が面白くて好きだから。キャストもハマり役かつ、豪華だから。賀来賢人と佐藤二朗がすきだから。
- 監督が好き、キャストが最高、面白い。
最後の回答はすべてを網羅している。好きな監督の演出に好きな役者たちが出ていて面白いから。それに尽きるようだ。
興味深いのが、アドリブに触れている回答も多かったことだ。
- アドリブが最高に面白い
- アドリブ感が逆にバレバレな所。
- 出演者の皆さんが豪華なうえにアドリブがとても面白い!!
- 本当に面白い。ここはアドリブなんだろうな、というところが見ていて面白いです!
アドリブを喜んでいることがうかがえる。そこにいい意味の”テレビらしさ”を感じているのかもしれない。
もうひとつ、80年代の設定を面白がる回答もいくつかあった。
- 80年代が可愛すぎる!
- 面白い、見たことない時代だから興味もある。
- 今はいないけどむかしいたんだなとかんがえるとおもろい
- もともと原作を読んでいたタイミングだったいうことに加え古着が好きなため当時のファッションをした俳優さんたちが出ているのがよく、現代と80sを組み合わせて新しくなっていることにはまりました。
いまの大学生が80年代に興味を持つ理由はわからないが、知らない世界として新鮮に映るのかもしれない。ツッパリなんて消滅しているだろうし。
最後にこの回答を紹介しておきたい。
- 今のテレビではなかなかない内容なので面白い
ここで言う「なかなかない」とは何を指しているのかはわからないが、箴言かもしれない。今のテレビはどこかパターンに陥っていて、「今日から俺は!!」はそこを突き破ったのだ。
さてもう少し踏み込むと、福田雄一ワールドが大学生に支持されているのは当たり前のようで注目すべき点だと思う。私も「33分探偵」の頃からファンだが、よく考えるとこれほど大学生が「福田ワールド」を認識しているのは不思議だ。思うに、テレビより映画、つまりは「銀魂」の2作によるものではないか。それに「斉木楠雄のΨ難」を加えるべきかもしれない。映画館はいま、若者で活気に満ちている。テレビ離れは起きていても映画はむしろ”メディア”として若者に馴染んでいるのだ。
”福田雄一”というブランドが映画からテレビへの大学生の自然な流れをもたらしているとしたら、面白い現象だ。映画興行は2000年代にテレビのおかげで若い世代を呼び込んだ。いまは逆に映画のおかげでテレビ離れに歯止めをかけているのかもしれない。
いずれにせよ、いちばん大事なのは「面白い」ということだ。メディアの浮沈は結局、コンテンツの面白さで決まる。当たり前だが。
さて今回特別に調査をしてくれた産業能率大学の小々馬ゼミでは来年3月22日にメディアとマーケティングについて学生たちと学ぶセミナーイベントを行うそうだ。「AgeMi!マーケ!2030」と題してAgeMillenniumつまりミレニアム世代のメディアの未来を見通そうという企画だ。「次世代(2030年)にテレビは生き残るか?」と過激なタイトルをつけたセッションを含む大々的なイベントで誰でも無料で入場できるとのこと。メディアの未来に興味がある方がいたら参加するといいだろう。なにしろ、メディアの未来はまだまだわからない。行く末を決めるのは、若い世代だ。決め手はきっと、コンテンツなのだと思う。
追記:産業能率大学の「AgeMi!マーケ!2030」のページはこちら↓興味ある方はぜひ!