副題:なぜ君は総理大臣になってしまったのか「NNNドキュメント・総理大臣を目指した人たち」
映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」「香川1区」など政治をテーマにしたドキュメンタリーを作ってきた大島新氏が日本テレビでドキュメンタリー番組に挑戦した。それが11月17日深夜に放送されたNNNドキュメント「総理大臣を目指した人たち 〜2024 二つの党首選から見えたこと」だ。とても面白かったので、紹介したい。24日朝8時からBS日テレで再放送されるのでぜひ見てもらうといいだろう。
日本テレビの政治部が企画して大島氏に依頼した番組だという。今年9月に自民党と立憲民主党、二つの政党の党首選挙が重なったのは記憶に新しい。それらの選挙に立候補した政治家に、大島氏が30分ずつインタビューして回るのをカメラが追う。
全員に申し込んだようだが、自民党は高市氏など応じてもらえなかった人もいた。慌ただしく選挙戦を過ごす中では無理もないだろう。応じてくれた政治家は一人一人、それぞれの個性が際立っていて図鑑をめくる気分で、楽しい。
立民は全員が応じてくれた。泉健太氏のパートが特に興味深かった。3年間、あえて自分を出さずに頑張ったのだと言う。その後、代表になれなかったのをこちらは知っているので、やるせない気持ちになった。
自民党は茂木氏、林氏、加藤氏らに次々に話を聞いていく。もちろん石破氏もだ。
だがこちらは、その後石破氏が総理になることを知っているので、そこがいちばん気になる。総裁選真っ最中の石破氏は、「党内野党」と言われたままの、思ったことを率直に話す気さくでユニークな人物だ。見る者としては、こんなに自由にしゃべる人が、首相になった途端なんであんなに歯にものが挟まったようにしゃべる人物に変節してしまったのかと思ってしまう。
番組ももう終わろうとしクレジットがすべて出た後で、大島氏は電話をかける。出たのは「石破茂」だった。自民党総裁になってちょうど一ヶ月後、10月27日のことだ。
この時の石破氏の言葉が面白い。意外にも、総裁選中のインタビューの時と同じキャラなのだ。気さくに、素直に、気持ちを語ってくれる。やはり「圧倒的多数で総裁選を勝ったわけではない」ことが足枷になっていると本音をさらす。
そして最後にこう言う。「38年間政治家をやってきて、これほど辛いのは初めて」だと。ご苦労様と言いたくなる。
あれ?でもだったら、なぜ総理大臣になったの?辛いし、やりたいこともできないなら、総理大臣になった意味はあったの?大島氏のヒット作に絡めて「なぜ君は総理大臣になってしまったのか」という副題が浮かんできた。
政治家って何だろう?そんなテロップが出てくるのだが、心からそう言いたくなった。
「よりマシな選択」という言葉が出てくる。選挙とは、そして民主主義とは、100%満足できるものではない。よりマシな選択をしていくしかない。でもだからこそ、私たちは選択をするために選挙に臨まなければならない。そんなことを感じさせるドキュメンタリーだった。
24日のBS日テレの再放送、ぜひお見逃しなく!
(※2024年11月20日付「MediaBorder2.0」より加筆・修正のうえ転載)