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読売グループは全賭博事業から撤退せよ

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

先週あった以下報道に関してツラツラと書いてみたい。以下、産経新聞からの転載。

「社内検討が不十分」 読売連合広告社が大阪IRのPR業務辞退

https://www.sankei.com/article/20230512-I7GBQHYCBVK4RJLLDXJWAKI2LM/

大阪府市が公募していた統合型リゾートに関するPR業務に関して、自ら入札に応じ、指定業者として選定された読売新聞系のPR会社が業務受託を辞退したとの報道。その理由として「ギャンブル依存症への懸念でIRへの賛否が分かれている現状を踏まえた結果、社内検討が不十分だった」とのコメントが報じられている。

本件に関わらず近年、読売グループは賭博に関連する事業に対して総じて批判的であり、2020年に改正され新たにバスケットボールを賭けの対象とすることになったスポーツ振興投票法にも水面下で反対。そもそも、バスケットボールのみならずプロ野球もその対象する方向で検討が為されていた同法の改正で最後の最後で野球が対象から外されたのも、同社グループ下にある読売巨人軍が最後まで反対をし、セ・リーグがまとまらなかった為であったことは関係者内では広く知られている事実である。

但し、私自身は従前から公言している通り、賭博に対して社会全体が手放しに賛成し、反対論が存在しないことの方が「不自然な」社会であり、寧ろ反対派が存在することはこの社会がある意味で健全に廻っていることの証左であると考えている人間であり、そのこと自体に特に文句はない。

ただ、読売グループにおいては、その系列下にあるスポーツ新聞「スポーツ報知」において公営競技を大々的にコンテンツとして扱い、そのグループ名を冠したレース(いわゆる冠杯)を多数提供している企業として、グループ企業全体が賭博業界側の体制に組み込まれている存在です。「ギャンブル依存症への懸念」を理由としてグループ会社にIR関連事業から撤退させるのであれば、その他賭博に関連するすべての事業からも撤退をして頂きたいと思うところ。企業グループとしての姿勢の一貫性を、しっかりと担保して頂くことを強く期待しております。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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