今年は嫌でも戦争を意識せざるを得ない
フーテン老人世直し録(52)
睦月某日
今年は嫌でも戦争を意識せざるを得ない年である。今年の干支は甲午だが、120年前の甲午の年には朝鮮半島の内乱に乗じて日清戦争が始まり、100年前には人類が史上初めて世界規模で総力戦を行った第一次世界大戦が起きた。そしてそのどちらの戦争も日中関係に今に続く大きな影響を及ぼしている。
尖閣諸島の日本領土編入を日本政府が閣議決定したのは日清戦争の勝利が確実になった1895年1月である。前年から始まった日清戦争は9月に日本海軍が清国海軍を圧倒して制海権を握り、すでに講和交渉の段階に入っていた。その力関係によって尖閣諸島は日本の領土となった。
と言うのは、尖閣諸島の日本領土編入はその10年前から検討されていたにもかかわらず、実現してこなかったからである。それまで尖閣諸島はいずれの国にも支配されていない「無主の地」であった。しかし1885年に日本人の古賀辰四郎氏がアホウドリの羽毛の採取や漁業などを行うようになり、島の貸与願いを沖縄県に申請した。沖縄県は現地調査を行い日本政府に上申書を提出したが、政府は清国がすでに島に名前を付けている事などから、領土宣言を行えば紛争の原因になるとみて閣議決定を見送った。
それが10年後に日清戦争の勝利が確実になった時点で領土編入の閣議決定を行ったのである。
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