安倍総理の「歴史認識」と「平和ボケ」
フーテン老人世直し録(56)
睦月某日
スイスのダボスでの安倍総理の発言が世界中で問題になっている。記者から「尖閣問題で、日中が武力衝突をすることはあり得るのか」と問われた安倍総理は、「今年は第一次世界大戦から100年目。英国とドイツは戦争前に貿易で結びつきが深かった。日本と中国も今、非常に経済的な結びつきが強い。だからこそそうならないようにコントロールする事が大事だ」と答えた。
これに質問した記者は驚いた。「武力衝突はありえない」と否定するかと思ったら、日中関係を第一次世界大戦の英独関係になぞらえ、武力衝突を否定しなかったからである。「そうならないようにする事が大事だ」と言うのは当たり前で、それを言わなければ事実上の宣戦布告の意味になる。
この発言で安倍総理の頭の中には現在の日中関係と第一次世界大戦時の英独関係とがダブって存在している事が明らかになった。欧米のメディアが安倍総理の「歴史認識」に疑問を抱きたくなるのも当然である。
「今年は嫌でも戦争を意識せざるを得ない」でも書いたが、第一次世界大戦100周年に当たる今年、欧米ではこの戦争について議論が高まり、戦争の歴史から教訓を得る作業が行われる筈である。そうしたところに、遠い極東の日比谷公園ほどの面積の島をめぐる対立と思っていた尖閣問題を第一次世界大戦に例えられたのである。「ムム、なんだこの歴史認識は」となる。
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