H3ロケット後継機の開発がスタート ロケット再使用がカギ 月面に最大6トンもの物資を運ぶ驚異的な能力
7月1日、H3ロケット3号機の打ち上げが行われ「だいち4号」の軌道投入に成功しました。そして、JAXAからはH3ロケットの後継機となる「次期基幹ロケット」の開発への着手についても発表がありました。
本記事ではH3ロケットの後継機をはじめ、活用される将来の月ミッションも解説していきます。
■既にH3の次世代ロケットの開発がスタート?
H3は、JAXAと三菱重工業が運用している新型国産ロケットです。一回の打ち上げ費用を、H2Aロケットの半分となる約50億円とすることを目標としています。3号機で実用衛星である「だいち4号」の軌道投入に成功したことから、今後本格的に商業市場へ参入する計画となっています。
そして近年、宇宙開発の舞台は地球低軌道から月・火星へと大きく拡張しています。例えば、アメリカが主導している月周回軌道に建設予定の宇宙ステーション「ゲートウェイ」をはじめとする、アルテミス計画が急速に進められています。JAXAもこの計画に参画するために、新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」の改良型を開発し、ゲートウェイへの物資補給を予定しています。
しかし、月へ行くためにはその分の消費燃料が増えてしまうため、より多くの貨物を運ぶにはロケットの増強化が必須となっているのです。
■ロケット再利用が増強化・低価格化のカギ
スペースXのファルコン9をはじめとする海外ロケットの低価格化は予想を上回るスピードで激化しており、H3ロケットによる打ち上げの海外受注は今後も困難を強いられることは否めません。それでは、なぜスぺースXはロケットの低価格化に成功したのでしょうか?その答えは「ロケット再利用」です。
それでは、皆さんも良くご存知のスペースシャトルとはどう異なるのでしょうか?実はスペースシャトルは40年も前に実用化され、地球と宇宙を何度も行き来していました。しかし、ロケットとスペースシャトルの大きな異なる点は、大気圏に再突入するかどうかです。スペースシャトルは大気圏再突入時に3000度の高温にさらされるため、高い耐熱技術を要し、そのメンテナンスに莫大な費用がかかりました。これがスペースシャトルが惜しまれながらも退役となった要因の一つです。
一方、スペースXの再利用ロケットは、第1段エンジンとタンクのみを再使用しています。どういうことかというと、宇宙に到達した部分は再使用していないということです。これにより大気圏突入時の高温対策が必要なく、メンテナンス費を大幅に削減することができたのです。
■H3後継機に求められる強大な打ち上げ能力
JAXAが発表したH3後継機計画は、まさにこのロケット再利用を取り入れる内容となっています。2021年に三菱重工が掲載した技術論文によると(引用参照)、まず2026年にはロケット再利用を行う試験実証機を開発、2030年頃に実運用機を打ち上げる計画です。機体構成としては、胴体を3本束ねたような形で、打ち上げ能力を大幅に増強させます。ゲートウェイへ12トン、月面には最大6トンもの物資を運ぶことができます。将来的にはロケットの第二段も再利用することで、2040年代には現行のH3打ち上げコストの1/10を目指すとのことです。
ロケットの名前は順当に「H4ロケット」なのか、それともSpaceXのファルコンヘビーになぞらえて、「H3ヘビー」になるのか、今から楽しみですね。
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