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最強恒星R136a1とは?最新の最高精度画像とそこから判明した新事実

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「最強恒星R136a1の最高精度新画像と新情報」というテーマで動画をお送りしていきます。

観測史上最重量かつ最強の恒星として、宇宙ファンの間でかなり有名だと思われるのが、「R136a1」という恒星です。

この宇宙ヤバイchでも、以前はかなり取り上げることが多かった人気天体です。

今回、このR136a1について新画像が公開され、そこから新発見があったので、改めてこの天体についての従来の基本情報をおさらいしつつ新情報を紹介していきます。

●最強星団R136と最強恒星R136a1

地球から遥か約16万光年離れた場所にある大マゼラン雲という、天の川銀河とは別の銀河の中にある、タランチュラ星雲という星雲の中心部に、「R136」という星団があります。

Credit:ESO/P. Crowther/C.J. Evans
Credit:ESO/P. Crowther/C.J. Evans

こちらはタランチュラ星雲から、R136星団が見えるまで拡大した実写画像です。

右の画像の右下部分に映る星の集まりが、R136となります。

R136は、いくつもの青い星々で構成されています。

恒星の色というのはその表面の温度で決まり、低い順から赤→橙→黄→白→青の順で高温になっていきます。

なのでこれらの恒星は表面が高温なものばかりです。

太陽の何倍も質量が大きい、存在比が小さい選ばれし恒星しか青色で輝くことはできません。

実際このR136には、O型主系列星とウォルフライエ星が他では見られないほど多数存在しています。

主系列星は、星の一生のうち最も長く安定した段階にある星のことで、O,B,A,F,G,K,M型という順で低スペックになっていきます。

つまりO型主系列星は最も大質量でハイスペックな主系列星です。

ウォルフライエ星は、あまりに放出エネルギーが強すぎて自らの水素の外層すらも吹き飛ばして内部の高温な層が剥き出しになってしまっている、大質量星です。

R136はこれらの星が集まる、超エリート揃いの星団となります。

Credit:NASA/ESA Hubble Space Telescope
Credit:NASA/ESA Hubble Space Telescope

そんなR136という星団の中心部には、特に大質量の星々が集まった「R136a」という星団があり、その中でも最も重い、というよりも観測史上最重量の恒星が、今回の主題であ「R136a1」という恒星です。

R136a1の推定される質量はなんと太陽の250-320倍、表面温度は50000度以上、放出エネルギーは太陽の約800万倍と、まさに異次元のスペックを持った、観測史上最重量かつ最強の恒星です。

●R136a1最高精度画像と新発見

Credit:International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA Acknowledgment: Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani (NSF’s NOIRLab) & D. de Martin (NSF’s NOIRLab); NASA/ESA Hubble Space Telescope
Credit:International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA Acknowledgment: Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani (NSF’s NOIRLab) & D. de Martin (NSF’s NOIRLab); NASA/ESA Hubble Space Telescope

2022年7月とつい先月、南米チリにあるジェミニ南望遠鏡によって、そんなR136a1の姿をこれまでにない解像度で捉えることに成功したと発表がありました。

左がその実写映像です。

確かに先ほどから表示している、右のハッブル宇宙望遠鏡によって得られた画像と比べると、その解像度の差は歴然ですね。

最新の画像ではこれまでと異なり、他の近隣の星々と完全に分離してその姿が映し出されています。

Credit:International Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab/AURA/Kwon o chul
Credit:International Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab/AURA/Kwon o chul

画像の取得には、非常に短い時間だけの撮影を何度も行うことで、大気のゆらぎの影響を除去できる、スペックル・イメージングと呼ばれる観測手法が取られました。

実際にこの手法により、今回撮影を行った口径8.1mのジェミニ南望遠鏡の性能をフルに生かした撮影ができました。

研究者によると、この分解能はジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡にも匹敵し得るとのことです。

Credit:International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA Acknowledgment: Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani (NSF’s NOIRLab) & D. de Martin (NSF’s NOIRLab); NASA/ESA Hubble Space Telescope
Credit:International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA Acknowledgment: Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani (NSF’s NOIRLab) & D. de Martin (NSF’s NOIRLab); NASA/ESA Hubble Space Telescope

この最新の画像を分析することで、研究者たちはR136a1のこれまでになく高精度なスペックの分析を行いました。

その結果、R136a1の質量は従来考えられていた太陽の250-320倍という数値から、太陽の170-230倍と、大幅に下方修正されることになってしまいました…

さらに質量が下方修正されたR136a1の表面温度は50000度以上から46000度程度に、放出エネルギーは太陽の800万倍から460万倍へと下方修正されています。

依然として宇宙最強レベルではありますが、もしかするとNo.1ではなくなってしまったかもしれません。

とはいえ遥か遠くにある天体の正確な情報を掴むのは非常に難しいので、このようなことは割とよくあるものです。

●新R136a1を太陽系の中心においてみた

以下の動画では最後に(6分39秒あたりから)、R136a1を太陽の位置に置いたら周囲の環境がどうなるのかを検証しています。

https://arxiv.org/abs/2207.13078
https://noirlab.edu/public/news/noirlab2220/

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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