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札幌―函館間、「山線経由で運行」の特急ニセコ号 今年も大盛況の一方、廃線危機の理不尽な現実

鉄道乗蔵鉄道ライター
特急ニセコ号に使用されるキハ261系はまなす編成(写真AC)

 秋のシルバーウィークをむかえ、今年も9月7日から29日までの週末を中心に特急ニセコ号の運行が行われている。特急ニセコ号は例年9月に札幌―函館間を山線経由で運行する臨時特急列車で、昨年2023年からは使用車両がキハ183系ノースレインボーエクスプレスから、キハ261系はまなす編成に一新された。運行本数は1日1往復で上り便が札幌駅を7時56分に発車し、9時14分に余市駅、10時に倶知安駅を通り函館駅には13時23分に到着。下り便は13時41分に函館駅を発車し、17時36分に倶知安駅、18時20分に余市駅を通り19時28分に札幌駅に到着するダイヤで運行されている。

ニセコ駅の様子(読者提供)
ニセコ駅の様子(読者提供)

おもてなしイベントも充実で大盛況

 特急ニセコ号の停車駅や車内では沿線の観光協会や高校生によるおもてなしイベントが目玉となっているが、今年からは函館行の列車では八雲駅と大沼公園駅に新たに停車するようになるほか、停車駅や車内でのおもてなしメニューが増え「ニセコトレインマルシェ」として車内で販売される食のメニューも増やされるなど、かなりの力の入れようだ。さらに特急ニセコ号の主要停車駅間ではえきねっと割引も設定されている。 

 筆者は、そんな特急ニセコ号に倶知安駅より乗車したが車内は満席に近い乗車状況で、倶知安駅では下車する乗客の姿もみられ、山線沿線への観光客の足としても利用されている様子で、鉄道ファン層だけではなく、インバウンド客に加え、若いカップルや家族連れなどの姿も見受けられた。

 倶知安駅の次の停車駅のニセコでは10分停車。改札口前ではスイーツなど特産品の販売も行われており、特急ニセコ号から下車した乗客で長い列ができていた。さらに、物販ブースの横にいたスタッフさんから特急ニセコ号と書かれた小旗をもらうこともできた。そして、次の停車駅である昆布駅でも数名の乗客が下車。特急ニセコ号は山線内では余市、倶知安、ニセコ、昆布、黒松内の4駅に停車するが、特急ニセコ号の運行によりこうした停車駅での利用促進に結び付いているように感じられた。

 この日、特急ニセコ号に乗車されたという方に話を聞いたところ、「愛媛県新居浜市から特急ニセコ号に乗るために北海道を訪れた」と話してくれた。連休初日に北海道入りし、2日目に特急ニセコ号に乗車。その後、新函館北斗駅からは北海道新幹線に乗り継ぎ東北地方で1泊したあと、明日、愛媛県に戻るという。

使用した乗車券・特急券(筆者撮影)
使用した乗車券・特急券(筆者撮影)

北海道庁主導で廃線方針の函館本線の小樽―長万部間

 しかし、特急ニセコ号の走る札幌―函館間のうち、小樽―長万部―函館間は、北海道新幹線の札幌延伸に伴いJR北海道から経営分離されることが確定しており、このうち小樽―長万部間は2022年3月に北海道庁が主導する並行在来線対策協議会において廃止の方針が決定された。さらに倶知安町では北海道新幹線の新駅整備に支障をきたすとして2025年3月での小樽―長万部間の廃止を主張しているが、北海道庁は協議会に地元のバス会社を呼ぶことなく一方的に鉄道廃止の方針を決定したことに加え、昨今深刻化しているバスドライバー不足から並行在来線のバス転換協議は泥沼化している。

 特急ニセコ号の運行により全国から観光客が山線沿線に集まり、停車駅の利用促進にも結び付き、特産品の販売などにもプラスの波及効果を及ぼしていることは明らかであることから、北海道新幹線の並行在来線となる小樽―長万部間の廃止・バス転換を白紙撤回し新幹線の経済効果を地域に波及させるための観光ツールとして役立てていく方策を考えるべきではないだろうか。

初日の様子は【北海道】乗り物大好きチャンネルさんでリポートされています。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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