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極超音速兵器迎撃ミサイルGPIの日米共同開発が正式発表

JSF軍事/生き物ライター
レイセオン社よりGPI迎撃ミサイルのイメージ絵(実物とはほぼ関係が無い形状)

 アメリカのキャンプ・デービッドで開かれている日米韓三カ国首脳会談の場において、アメリカが先行開発している極超音速兵器迎撃ミサイル「GPI」の開発に日本が参加することが正式発表されました。イージス艦に搭載して運用する構想となっています。

防衛省と米国防省で検討を行ってきた結果、日米両国は、GPI(Glide Phase Interceptor:滑空段階迎撃用誘導弾)の共同開発を開始することを決定いたしました。

日米両国は、ロケットモーターや耐熱、シーカーといった主要技術において互いの強みを持ち寄り、協力していきます。

出典:GPI日米共同開発の開始に関する防衛省発表 | 2023年8月19日

関連記事:極超音速兵器対応手段GPI(2022年1月14日)

 GPIは極超音速滑空ミサイル(HGV)を滑空段階(中間段階)で迎撃しようという野心的な計画です。アメリカで先行開発されており、開発担当候補の3社を2社に絞り込んで、設計段階から試作段階に移行し、レイセオン社とノースロップ・グラマン社の競争試作が始まっています。日本はこれに後から開発参加する形になります。

 HGVは滑空中にスキップ・グライド(跳躍滑空)と呼ばれる上昇と下降を繰り返す複雑な軌道を飛んで行きます。宇宙から降下して大気の密度の濃い上層部を水切り石が跳ねて行くように飛んで行くのです。この高度25~70kmの「宇宙と大気の狭間」を飛んで行くHGVは、従来の弾道ミサイル防衛システムの大気圏外迎撃ミサイル(高度70km以上対応)では対応不可能で、大気圏内迎撃ミサイル(高度25km以下対応)でも対応不可能です。迎撃するには大気圏内外(Endo-exo-atmospheric)を飛べる能力が必要となります。

 HGVの滑空弾頭が最終突入してくる終末段階でならば、もはや複雑な軌道は取れずただ落ちて来るだけなので、既存のパトリオットPAC-3のような大気圏内迎撃ミサイルであっても、迎撃目標が降りて来たところを待ち構えて撃墜することは可能です。ただしそれでは広範囲を守ることができません。そこで迎撃が難しいですが滑空段階で交戦することで、より遠くでより広範囲を守ることが可能になります。GPIを開発配備する意義がこの対HGV広域防空という理由です。

各国の極超音速兵器迎撃ミサイル開発計画

  • アメリカ・・・GPI、Glide Breaker
  • ヨーロッパ・・・TWISTER、Aquila、EU HYDEF、IRIS-T HYDEF
  • 日本・・・HGV対処用誘導弾
  • 韓国・・・L-SAMⅡ
  • イスラエル・・・Arrow-4、SkySonic
  • ロシア・・・詳細不明(S-500が対応している可能性)
  • 中国・・・詳細不明

 実は極超音速兵器迎撃ミサイル開発計画は世界各国で始動しており、既に10種類以上の計画が進行中です。この中で一番完成が早いと目されているのはアメリカのGPIとイスラエルのArrow-4になるでしょう。日本がGPIに参加するのは可能な限り早期に実戦配備を行い、近い将来予想される北朝鮮の極超音速兵器の量産配備に対抗できるよう間に合わせるためです。

関連記事:日本の極超音速兵器迎撃ミサイル「HGV対処用誘導弾」はSM-3ブロック2Aの数倍の大きさ(2023年3月20日)

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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