12月は「札幌―新千歳空港」もたびたび運休のJR 頼みの高速バスは札幌都心部から「1時間20分」
北海道にも本格的な冬が到来した。JR北海道に元気があった頃は冬になるたびに「冬こそJR」というテレビCMが多く放送され、危険が伴う冬道のクルマの運転よりも定時制や速達性に勝る鉄道の優位性が広くアピールされていた。当時をよく知る関係者によると「大雪が冬だけで1日1000万円ほどの増収」になっていたという。しかし、JR北海道の経営危機が表面化して以降、雪が降るとすぐに止まるJR北海道というイメージが浸透してしまった。
12月は、札幌―新千歳空港間もたびたび運休
2024年12月だけでも9日には千歳駅での停電により、札幌―新千歳空港間を結ぶ快速エアポート号が運休、さらに16日にも快速エアポート号のブレーキ故障により運休、17日にも大雪の影響で線路の切り替えを行うポイントが転換できなくなったことから岩見沢方面で運休が発生した。こうして冬になるとよく止まるJR北海道であるが、筆者は18日に新千歳空港から午前中の早い便に搭乗し北海道から東京に向かうことになったことから、万が一の快速エアポート号の運休に備えて、前日から札幌都心部に宿をとり、朝5時18分にすすきのを発車する始発の高速バスで新千歳空港へと向かうことにした。
JR北海道が運行する快速エアポート号の札幌―新千歳空港間の所要時間は36~44分で運賃は1,150円。これに対して、北海道中央バスと北都交通が運行する高速バスは、すすきのから新千歳空港までの所要時間は約1時間20分で運賃は1,300円となっている。バスについては、北海道中央バスの運航便のみ交通系ICカードに対応しているほか、北海道中央バスと北都交通の双方の便でクレジットカードのタッチ決済に対応していることが大きな特徴だ。
運休リスク回避のために高速バスを利用
筆者は、そんな新千歳空港行きの高速バスにのるために、雪の降りしきる早朝のすすきのバス停に到着したのは5時10分頃。バス停には雨風のしのげる屋根付きの待合スペースが設けられているが、筆者が着いた時点では、すでに待合スペースには入りきらないほどの乗客が並んでおり、ほとんどの乗客が大きなキャリーケースを携えていた。キャリーケースを持った乗客の顔立ちは東洋系ではあったが、会話を聞いていると中国語でも韓国語でもない言語であったことから、どこかの東南アジアの国からの来訪者と思われた。また、ビジネス客と思われる乗客も一定数見られた。
そうしているうちにバスは定刻通りの5時18分にバス停に到着。このバスの始発は、地下鉄南北線の駅のある中島公園となっており、バスの座席はすでに半分ほどが埋まっていたが、バスの到着までに乗客の列は20名ほどになり、すすきのからはほぼ満席状態となった。すすきのを発車するとバスは、大通公園と札幌駅前の各バス停へと立ち寄ったが、こちらでは乗車はなく、そのまま高速道路の入り口となる札幌北インターへ。なお、すすきのバス停から高速道路までで30分近い時間を要した。そして高速道路をひた走ること約50分でバスは新千歳空港へと到着。降車時には、インバウンド客は運賃を現金払いされている方が多く見受けられ、全員が降り切るまでには若干の時間を要していた。
交通利便性の低下は、北海道民の生産性低下を招く?
今回、札幌都心部から新千歳空港への高速バスを乗り通してみて、JRの駅のない札幌都心部から乗り換えなしで空港まで直通できることや、JRが運休しやすくなったことなどから、リスク回避などの面を含めてバスの方にも一定の優位性が生じているように感じた。実際、札幌市内からの空港連絡バスは、大谷地や真駒内などJRの利便性があまりよくない地域からの利用であれば、所要時間的にも優位性がある。
しかし、万が一、JRの運休により札幌駅周辺から空港まで高速バスを利用しなければいけない事態となってしまうと、所要時間の長さに加え、バスに乗客が乗りれなくなり相当な混乱を招くことになる。JR北海道が発足当初のように冬でも運休なく定時運行を続けてくれさえいれば、筆者のように万が一のリスクに備えて、前日から札幌都心部に宿泊し、快速エアポート号よりも3倍近い時間がかかるバスに乗る必要はない。
JR運休のリスク回避のために、これに類似したケースはほかにもあると予想されることから、交通が不便になることによる移動時間の増加は、少なからず北海道民の生産性の低下に影響しているのではないだろうか。JR北海道が安定的な運行を続けられるように必要な部分については公的資金が問題なく手当てできるように、新しい制度設計を早急に行うべきである。
(了)