HUAWEI に降り注ぐ災難 HUAWEI サプライチェーンショックで一番の被害者は?
KNNポール神田です。
■止まらないHUAWEIへの供給停止
HUAWEIのスマートフォンの出荷量は1億台におよび、販売シェアは、サムスン電子37%に次ぐ29%と世界第2位のメーカーだ。2018年のスマートフォンの売上は5兆6,000億円、通信向け設備機器は4兆7,000億円 合計10.3兆円規模に及ぶ。
中国のHUAWEIへの米国の輸出規制が続くことによってHUAWEIは20%程度の減産を覚悟している。同時に自前化を進めるという。HUAWEI傘下には、『ハイシリコン』があるが、自給率は50%程度である。
トランプ大統領による『大統領令』を発令したことによって、スマートフォン用のクアルコム、通信設備用のインテル、ザイリンクス、ブロードコムなどの企業は、通知があるまで供給しないことを各社内に通達している。スマートフォンだけでなく、5Gなどの通信設備に関しても、この制裁は世界の技術の進化に影響することだろう。
HUAWEIの生産在庫は3ヶ月。もしもこのまま、供給停止が続けばHUAWEIだけでなくその影響は、サプライチェーン全体に響いていく。
■日本企業もHUAWEIの重要なサプライチェーンで6,700億円を担っている
HUAWEIの製品は、すでに中国製であっても、中国製品ではない。made in Chaina ではあるが、世界の部品が集積されて最終的に中国の製品として生産されているに過ぎない。電子部品やカメラは、富士通、ソニー、パナソニック、村田製作所、三菱電機などが重要なサプライチェーンとして加わっている。HUAWEIの出荷の減衰はそれらのサプライチェーンへの影響力も多大だ。スマートフォン、通信機器においての影響力も大きい。2018年の日本企業からのHUAWEIの調達額は6,700億円に及ぶ。
■GoogleからのOSとソフトウェア、プラットフォームからの締め出し…
しかし、Googleからは…
ロイターのスクープをGoogleは否定をしないが、既存のデバイスについては、問題ないという声明をおこなったのだ。つまり、今後の米国側の制裁には応じるということになる。
■任正非(じん・せいひ レン・ツェンフェイ)CEOのブレない態度
中国人民解放軍出身でHUAWEIを興した、任正非(レン・ツェンフェイ)CEOだが、中国企業の中では、『民間企業』であることをことある度に主張しつづけている。HUAWEI製品に不必要な部品のスクープ時に関しても『意見広告』をだし、2018年の日本企業からの調達が6,700億円に達し、HUAWEIへの輸出が対中国輸出額の4%相当と発表している。
それと、同時にHUAWEIでは、OSレベルからGoogleに全面依存しないようなAIツール群の開発などは以前からすすめていた。半導体の設計では、すでに、2018年、ARMとの中国合弁事業のArm ChinaはARMの子会社ではなく51%の関連会社として中国企業となっている。
■中国以外の国々に影響が及ぶ可能性
そして、今回の制裁で最も、影響を受けるのは、中国ではなく、中国から輸入している国々の製品やサービスに影響を与える。そう、中国では、Googleの主要アプリサービスは使用できない仕様になっているからだ。中国では、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)や百度(バイドゥ)のアプリが使用されているからだ。そのため、中国市場での影響は限定的とみられる。
中国HUAWEIへの制裁は、安くそれなりのサービスを得られている世界の国々へのサービスへの制裁へとなりかねない。
いずれにせよ、トランプ大統領の常套の戦術で、一度問題を作りだし、それをネタに国際関係での修復を迫り、自分の手柄にするという手法だが、HUAWEIの場合は、政治的にも習近平との共産党との距離を保っているのでどこまで効果に現れるかは未知数だ。むしろ、交渉のテーブルよりも先に、全世界の5G展開での足枷になる可能性すら考えられる。
すでにグローバル時代のメガ企業では、どの国に属するかは最終的に税金問題くらいの問題になってしまっている。グローバルな世界からの製品調達の出口をせき止めると、自国の輸出にまで多大な影響を及ぼすのは間違いない。
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