『フォルダブル(折りたたみ)スマートフォン』は未来への試金石『元祖フォルダブル』登場!
KNNポール神田です。
2019年、『5G元年』と呼ばれ、『フォルダブルスマホ元年』と呼ばれ、『新元号元年』とまさに『元年』続きである。
続々とフォルダブルが登場する背景は、曲げることが可能な『有機EL』のディスプレイ技術が可能になったことと、『5G』時代の目新しい機能としての使用提案だ。
サムスンの狙いは、『Galaxy Fold』の販売ではなく『フレキシブルディスプレイ』の普及
このフォルダブル市場においては、各社がいろんな差別化の手段として投入しているが、サムスンはわかりやすい。部品サプライヤーとしての位置づけである。
ファーウェイ端末は、ライバル端末へのフル競合戦略モデル
ファーウェイの戦略は、スマートフォンの製品群を見ればわかるように、すべての競合製品に対抗するラインナップを揃えている。そして、どれも競合製品の価格より安いという、完全に『マーケットイン(顧客志向)型』の戦略だ。それでも出荷量の多さで売上を確保してきている。なので、ファーウェイとしては、フォルダブルは、市場を予測しての『マーケットイン(革新志向)型』ではあるが、製品そのものは『プロダクトアウト型』というユニークなものだ。
このリポートを見ても、そのユニークさは理解できる。
ITジャーナリスト富永彩乃氏のビデオリポート
ユニークなのは、背面のメインカメラがインカメラにもなる…というか背面ディスプレイへと変化するという、まるで手品のような使い方ができるのだ。いずれにせよ初代のフォルダブルは意欲的な機能と1インチあたり3.5万円という富裕層が喜びそうな価格での挑戦だ。
かつての薄型液晶テレビも1インチ1万円を切る価格帯が普及のタイミングであった頃を考えると、フォルダブルの普及機はあと2周回した頃がちょうど良い値ごろ感となっていることだろう。すでに液晶テレビは1インチ当たり3,000円を切っている。
アップルのフォルダブルiPhoneは登場するのか?
サムスン、ファーウェイと来るとアップルは、どうなのだろうか?
アップルは常に、『プロダクトアウト型』の革新志向だから、どれだけiPad mini5が熱望されても、販売してこなかった経緯がある。2019年3月29日の発表会でもいまだに期待しているが…。過去に、ノートPCにおいても、MacBookAirという封筒に入れられるほど薄いサイズの投入で期待を上回る製品を投入してきた。タブレットもいろいろあったが、iPadで市場を席巻した。そもそも、iPodの初代が他のMP3プレイヤーを凌駕したように、それが、iPodTouchとなり、iPhoneとなった経緯がある。つまり、世界最高の革新的な『後出しジャンケン』の勝者でもあるのだ。
しかし、せっかく開拓した新市場もシェア率は、後からの猿真似企業にとられていく宿命にいつもある。そして常に、新市場にむけてイノベーティブな製品を投入するというライフサイクルを繰り返している。だからこそ、急いで、『フォルダブル』に囚われた製品をすぐに出す必要はなく、5G 時代の使いやすさと革新性を見据えた製品の中に『フォルダブル』のようなものを取り入れるのは、後出しで十分にユニークな製品をだしてくれると思う。
アップルでさえ、予測できないスマートデバイスの世界観
思い出してほしい…。携帯電話にカメラが搭載された日のことを…。忘れもしない『JーPhone』というキャリアがかつてあった(現ソフトバンク)。藤原紀香さんがブランドキャラクターだった。その携帯電話に『写メール』というカメラで写真を撮影し、メールで添付して送れる機能があった。2000年11月01日の発売のシャープの機種だった。当時、この『写メール』は『写メ』という単語になるまでは、専門家たちからは画素数の少なさや機能面で辛辣な意見を集めていた。しかし、もはや、スマートフォンのカメラ機能は、電話以上に使われる存在となった。
そして、10年後、2010年6月24日発売の、『iPhone4』からは、『FaceTime camera』という名前で前面カメラ(インカメラ)が搭載された。あくまでもそれは、ビデオ会議用の『FaceTime camera』としてだ。ノートPCのMacには市場ニーズに関係なく、ビデオ会議用のインカメラを搭載し続けていたから、iPhoneでの登場はとても自然だった。
インカメラはSNSで重要な機能となった。もちろん、写真を共有するだけでなく、『instagram』などを通じて『自撮り』『セルフィー』という新たな文化を生んだのだ。そう、現在のセルフィーをイメージして設計されデザインされたものではなく、『セルフィー文化』は、『ソーシャルメディア』という中からユーザーが作り上げたのだ。また、instagramという自分をどれだけ盛ったところで、誰からも批判されず、引用されず、良いコメントばかりの世界感が拍車をかけた。そう嫌いな人は見なければよいのだ。
自撮りをいかに美しくで、AIを導入した補正がすばらしいカメラがスマートフォンの機能として重要視されるようになった。電話なのに、話題はカメラばかりなのだ。
もはや新たなデバイスは、メーカーや消費者のニーズが作るのではなく、作られたものにインスパイアされた人たちが、新たな『熱狂』を生み出すのだ。最初はいつもいびつで高価で、役立たずのものばかりだ。しかし、そこに潜む『未知』に人類は魅せられるのだ。
フォルダブル端末の未来を占う…
まずは、技術オリエンテッドで曲がる有機ELディスプレイを使って、かかったコストを反映して作ったのが2019年の『元祖フォルダブル』だ。これを手にして使うことによっての新しいアプリケーションなどを開発するデベロッパーが生まれる。それが、5Gならではのアプリケーションを提供していくことだろう。そして、そのアプリケーションが牽引し、フォルダブルデバイスでないと体験できない新たな『経験値』を生む。
折り曲げるの方向も、横開きから、縦開きまでいろんなフォルダブルが登場することだろう。もしかするとそのまま、顔面にそわせて、VRになるようなフォルダブルも可能なことだろう。
大事なのは、フォルダブルである事ではなく、目的にあわせてフォルダブルな理想形が追求されることになりそうだ。そういった意味で、『元祖フォルダブル』の誕生を大いに歓迎したい。
モトローラの折りたたみの『HP-501マイクロタック』が1989年に登場してきてから、携帯電話は折りたたみ型が当たり前となったように。
今から、4年後の2023年には、携帯電話の出荷台数は、現在の13億9000万台から、15億4000万台となり、1/4は5Gに対応した機種になると言われている。『フォルダブル』の進化系はいろいろな可能性をみせてくれることだろう。