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ちょっと可愛い見た目と名前に騙されるな=マメハンミョウは強烈毒虫で害虫#危険な毒虫

天野和利時事通信社・昆虫記者
一見可愛らしいマメハンミョウ。その実態は強烈毒虫で害虫。

 マメハンミョウという名前の虫がいる。小さくて可愛いハンミョウの姿を想像させる名前だ。

 確かにこの虫は、遠目にはちょっと可愛らしく見えなくもない。しかし、その実態は強烈な毒虫で害虫だ。その顔をよくよく見ると、毒虫らしい雰囲気がある。

 マメハンミョウは、宝石のように美しいナミハンミョウの仲間ではなく、地味な姿の毒虫であるツチハンミョウの仲間だ。そして「マメ」の名は、「豆粒のよう」とか「豆電球」とかの豆とは違い、小さいことを意味する表現ではない。

 マメハンミョウの「マメ」は、大豆などマメ科の農作物の葉を食べる害虫であることを意味している。

 マメハンミョウは、指でつままれたりすると、脚の関節からカンタリジンという危険な成分を含む黄色い毒液を出して身を守ろうとする。この毒液はかなり強力で、皮膚に付くと炎症や水ぶくれを引き起こすという。赤い頭と白黒ストライプ柄の上翅というオシャレな装いのマメハンミョウは、一見無害そうなので、子どもが不用意につかんだりする恐れがあり、注意が必要だ。

交尾中のマメハンミョウのカップル。
交尾中のマメハンミョウのカップル。

近くで見ると、やはり毒虫らしい顔つきをしている。
近くで見ると、やはり毒虫らしい顔つきをしている。

マメハンミョウは脚の関節から毒液を出すので要注意。
マメハンミョウは脚の関節から毒液を出すので要注意。

 「マメハンミョウは害虫」と書いたが、マメハンミョウの幼虫はイナゴなどのバッタ類の卵を食べて育つので、イナゴから田んぼを守る益虫の一面もある。

 またマメハンミョウを含むツチハンミョウ科の虫は、幼虫の時期に何度か大きく姿を変える「過変態」の虫として知られ、研究者の間では非常に興味深い生物らしい。

 昆虫記者も、マメハンミョウのこうした不思議な生態を観察したいと思っているが、なにせ相手は強烈毒虫。家で飼うことを妻が許すとは思えないので、極秘行動が必要になるだろう。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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