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LGBT取組み、野村など「金」

猪瀬聖ジャーナリスト/翻訳家
表彰式であいさつするライフネット生命保険の岩瀬大輔社長(26日、東京都中央区)

性的マイノリティーLGBTが働きやすい職場づくりを目指す任意団体「work with Pride(wwP)」は、個別企業・団体のLGBT施策を採点し、26日、結果を発表した。第三者が企業のLGBT施策を客観的な基準に基づいて評価し公表するのは、日本では初めて。

評価の対象となったのは、wwPを中心に策定した「PRIDE指標」に基づく評価を希望した、82の企業や団体など。審査の結果、53の企業・団体が最優秀の「ゴールド」を獲得した。「シルバー」は20、「ブロンズ」は6だった。表彰式が同日、東京都内で行われた。

ゴールド企業には外資系も目立ったが、日本企業では、野村證券やみずほフィナンシャルグループ、住友生命保険、第一生命保険、ライフネット生命保険、全日本空輸、日本航空、関西電力、電通、日本電信電話、KDDI、楽天、クボタ、ソニーグループ、日本たばこ産業、パナソニック、富士通など、有名企業が名を連ねた。(受賞企業・団体の一覧はhttp://www.workwithpride.jp/pride.htmlを参照)

PRIDE指標は、Policy (行動宣言)、Representation(当事者コミュニティ)、Inspiration (啓発活動)、Development (人事制度・プログラム)、Engagement/Empowerment (社会貢献・渉外活動)の5項目から構成。評価を希望する企業や団体は、項目ごとにどんな具体策を立て実行しているかを説明する資料をwwPに提出し、審査・採点は、LGBT問題に取り組むNPO法人のグッド・エイジング・エールズと虹色ダイバーシティからなる「PRIDE指標委員会」が担当した。

採点は、項目ごとに、施策の内容が十分と判断されれば1点、そうでなければ0点を付け、満点の5点を獲得したところはゴールド、4点はシルバー、3点はブロンズとした。施策の内容は、例えば、人事制度・プログラムの項目だったら、同性カップルの従業員に対しても結婚休暇や家族手当を平等に適用しているかどうかなどが、吟味された。

LGBTへの取り組み姿勢で企業を評価する試みは、米国など海外では例があるが、日本では初めて。日本でも、LGBTに対する差別解消に取り組む企業は徐々に増えているが、欧米に比べると数はまだ圧倒的に少ない。取り組み内容も不十分だ。

wwPは、先進的な取り組みをしている企業の施策を評価、公表することで、企業社会全体の取り組みを促したい考え。高い評価を得た企業にとっては、自社の取り組みがお墨付きを得たことになり、企業イメージのアップにつながるメリットがある。

wwPは、グッド・エイジング・エールズ、虹色ダイバーシティ、国際NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ、日本IBMで構成され、2012年から、LGBTに対する職場の差別解消を目的に、企業向けセミナーなどの活動を続けている。

ジャーナリスト/翻訳家

米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。

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