オートバイのあれこれ『“スズ菌”にはタマらない!?スズキの独自技術!』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『“スズ菌”にはタマらない!?スズキの独自技術!』をテーマにお話ししようと思います。
「やらまいか」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
「やらまいか」とは、静岡県西部地域の方言( 遠州弁)で、「やってみよう」という意味。
チャレンジングスピリットを表す言葉ですね。
この「やらまいか精神」はオートバイの文脈でもしばしば語られ、浜松発祥であるホンダ・ヤマハ・スズキの企業解説などで用いられることも少なくありません。
今回は、そんなやらまいか精神から生まれたスズキ独自の技術をひとつご紹介しましょう。
【 ロータリーダンパー 】
スズキが1997年に発売したオートバイ『TL1000S』には、『ロータリーダンパー』という独創的なサスペンション機構が備わっていました。
基礎知識として先にダンパーの説明をすると、バイクやクルマのショックアブソーバー(サスペンション)には、路面からの衝撃や車体の荷重によって伸縮するスプリング(バネ)と、その伸縮の動きをコントロールするダンパーが付いています。
《サスペンション=バネ》
と覚えている人もいるかと思いますが、バネだけだと、衝撃が加わった時にいつまでも「ビヨンビヨン」してしまいます。
その「ビヨンビヨン」を抑えるのが、ダンパーの役割になります。
そして、バイク・クルマ用のダンパーというのは、筒状になっていることがほとんど。
筒の中にピストンとオイルが入っていて、オイル内を動くピストンの抵抗によりスプリングの動きを統制するというわけです。
バイク・クルマ用としては現状最適解の筒形ダンパーなのですが、スズキはやらまいか精神を発揮して、筒状ではなく丸い箱形をしたロータリーダンパーを開発。
ピストンの代わりに羽状の部品が内蔵されており、それがグルグル回転することで抵抗を発生させていました。
このロータリーダンパーはオートバイの世界では後にも先にもスズキしか実用化しておらず、今のところTL1000Sと、後に登場した『TL1000R』のみに使われたシステムとなっています。
技術としては斬新で興味深かったロータリーダンパーですが、やはり未知の形状のものを完成度高く仕上げることは難しく、結局ロータリーダンパーはメジャー化することなく消えていってしまいました。