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オートバイのあれこれ】「アメリカン・マッスル」な風格。

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。

今日は「“アメリカン・マッスル”な風格。」をテーマにお送りします。

とにかく“高性能”を追い求めていた1970年代が過ぎ、’80年代のオートバイ市場では“独自性”という側面もフィーチャーされるようになってきました。

スズキ『GSX1100S カタナ』、ホンダ『VF750 セイバー』、カワサキ『GPz900R』等は、各メーカーがオリジナリティを求めて生み出した、その分かりやすい例として挙げることができます。

▲1980年代、各メーカーは独創性の強いバイクを積極的に生み出していた
▲1980年代、各メーカーは独創性の強いバイクを積極的に生み出していた

そして今回紹介するヤマハ『VMAX』も、そんなオートバイの一つだと言えるでしょう。

▲ヤマハが“アメリカ”を強く意識して開発。アメ車(マッスルカー)のような雰囲気が漂う
▲ヤマハが“アメリカ”を強く意識して開発。アメ車(マッスルカー)のような雰囲気が漂う

VMAXが登場したのは、1985年(昭和60年)のこと。

RZ』シリーズや『XJ』シリーズ等によって日本/欧州市場では好調だった’80s序盤のヤマハでしたが、一方アメリカ(北米)市場へ目を向けると、日欧ほどの勢いはありませんでした。

▲ヨーロッパ市場で高い評価を受けたXJ650
▲ヨーロッパ市場で高い評価を受けたXJ650

そのようななか、ヤマハはアメリカに照準を合わせたモデルの開発を決意。

アメリカで根強い人気を誇るドラッグレースから着想を得て、「直線でカッ飛ぶ」オートバイを作ることにしたのです。

そうした背景から誕生したのが、VMAXになります。

VMAXの独自性がほとばしっているのは、何と言ってもその心臓部。

▲車体中央に鎮座する迫力満点なV4エンジン。145psという強大なパワーを吐き出す
▲車体中央に鎮座する迫力満点なV4エンジン。145psという強大なパワーを吐き出す

ピークパワー145ps&ピークトルク12.4kg-mをを叩き出す、排気量1,200ccの水冷V型4気筒エンジンを搭載していました。

ダッジ『チャレンジャー』やフォード『マスタング』といったアメリカ伝統のマッスルカーが5,000cc~7,000ccもの大排気量エンジンを積んでいたのと同様に、ヤマハも当時の同社において最も大きなエンジンだった『ベンチャーロイヤル』用のV4ユニットをVMAXへ投入。

▲ベンチャーロイヤル。フラッグシップツアラーとして’83年に発売された
▲ベンチャーロイヤル。フラッグシップツアラーとして’83年に発売された

また、VMAXのこのエンジンには、さらにもう一歩突っ込んだオリジナリティが持たせられていました。

Vブーストシステム』です。

エンジンの回転数が一定以上に高まると、燃焼室へ入る混合気の量が増える仕組みで、これにより凶暴なダッシュ力を実現していたのです。

▲Vブーストシステムが備わるインテークマニホールド
▲Vブーストシステムが備わるインテークマニホールド

このVブースト発動時のロケット加速こそが、VMAXの真骨頂だったと言って差し支えありません。

またエンジン以外では、そのスタイリングも唯一無二。

▲クルーザー(アメリカン)カテゴリーにもネイキッドカテゴリーにも属さない、独特なスタイルが特徴
▲クルーザー(アメリカン)カテゴリーにもネイキッドカテゴリーにも属さない、独特なスタイルが特徴

一見、ハーレーダビッドソンのようなクルーザー(アメリカン)スタイルに思えますが、実際のところVMAXはハーレーのように“手足をゆったり投げ出して”乗る設計にはなっておらず、やはりその獰猛な加速を受け止めるためのストイックさを含んだ造形となっていました。

VMAXはデビュー後、スポーツバイクとクルーザーバイクを掛け合わせたような独特のキャラクターによって人気を博し、やがて’80sを彩った“独創マシン”の一つとして名車の仲間入りを果たしたのです。

画像引用元:ヤマハ発動機/本田技研工業

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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