【オートバイのあれこれ】400マルチブームにスズキが参戦!
全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。
今日は「400マルチブームにスズキが参戦!」をテーマにお話ししようと思います。
今もよく語り種となる、1980年代のバイクブーム。
その象徴はやはり、’80s半ば以降に市場を席巻したレーサーレプリカモデルなのでしょうが、今回はそのわずかに前、’80s初頭に燃え上がった400マルチ(400cc4気筒)ブームの一端を担ったオートバイを一つご紹介しましょう。
スズキ『GSX400F』!
1979年(昭和54年)にカワサキが『Z400FX』をリリースすると、日本のバイクシーンはたちまち「中免(中型二輪免許)で乗れる4気筒」がトレンドとなりました。
Z400FXが大ヒットを飛ばすなか、カワサキ以外のメーカーもこの状況を看過するわけはなく、こぞって400マルチを作り始めます。
最初にカワサキへ勝負を仕掛けたのがヤマハ。
’80年、FXと同じ空冷DOHC2バルブ4気筒エンジンを載せた『XJ400』をリリースしました。
FXを2ps上回る45ps、ヤマハ車らしいスマートなスタイリング、そして背面ジェネレーター(ジェネレーターをエンジン燃焼室の裏側に配置)などの新鮮な設計が世間の関心を集め、XJはFXを独走状態から引きずり下ろすことに成功したのでした。
そしてここから、400マルチモデルによるメーカー同士の争いは本格化していきます。
スズキは’81年の春、同社初となる400マルチのGSX400Fをリリース。
GSX400F最大のハイライトは、エンジンでした。
空冷DOHC4気筒というのはFXやXJ と変わらないのですが、スズキは市販の400cc4気筒エンジンとしては史上初となる4バルブ(計16バルブ)を投入していたのです。
FX・XJの2バルブ(8バルブ)よりハイメカなのは言うまでもありません。
さらに、GSXのエンジンにはスズキの独自技術『TSCC』(二渦流燃焼室)も投入されていました。
TSCCはうず状の混合気をシリンダー内で発生させて燃焼を促進するシステムで、これによってGSXは中〜高回転域において高効率なパワーデリバリーを実現。
歴史を振り返ると、スズキは他メーカーよりも4ストロークの分野へ進出するのが遅かったのですが、このTSCCや後に登場する『SACS』(油冷システム)などを見るに、わずか数年で一気に4ストに関する知見や開発ノウハウを蓄えていたと言えるでしょう。
エンジン以外の部分へ目を移すと、レース由来の『ANDF』(アンチノーズダイブ機構付きフロントフォーク)などを備え、スズキはエンジンの先進性も含め、露骨なまでにカワサキとヤマハに対して優位性を誇示していたのでした。
そして、このGSXの紹介で触れずにいられないトピックが『GSX400FS インパルス』が追加リリースされたこと。
ここまで紹介してきたGSXの直後にデビューしたホンダ『CBX400F』へ対抗するような形で、インパルスはCBXと同じクラストップの48psを引っ提げていました。
パーツメーカーのヨシムラと共同開発した『サイクロンマフラー』を標準装備するなどし、インパルスは「スズキ純正チューンのGSX400F」だったと表現してもあながち間違いではないでしょう。
GSX400Fのデビューもなかなかインパクトがあったことは言わずもがななのですが、このGSX400FSは、それをもさらに上回る「インパルス(≒衝撃)」があったと言えるかもしれません。
画像引用元:スズキ/ヤマハ発動機/カワサキモータースジャパン