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W杯は自国の勝利だけを願う場所ではない。日本のファンはサッカーの面白さを堪能することができるか

杉山茂樹スポーツライター
写真:Shigeki SUGIYAMA

 前節、川崎フロンターレが終盤、VAR判定の末、ゲットしたPKを決め、勝利したことで、横浜F・マリノスとの間で繰り広げられている今季のJリーグの優勝争いは、最終節まで持ち越されることになった。

 横浜FMか川崎か。この2チームが優勝争いをする展開は、日本サッカー界にとって喜ばしい話である。何といっても、ともにパッと見、攻撃的で面白いサッカーをするチームだからだ。

 川崎は前任の風間監督時代からその傾向は強まっていたが、2017年シーズンに鬼木監督の時代を迎え、一段と鮮明になった。川崎は以降5シーズンで4度、Jリーグ優勝を飾っているが、それと異なる結果に終わっていたら、日本サッカーはいまごろどうなっていただろうかと心配になる。

 川崎の前はサンフレッチェ広島の時代だった。2012年、13年、15年と広島は4シーズンで3度優勝を飾っていた。監督はご承知の通り森保一で、そのサッカーは現在の川崎とは大きく異なる、けっして攻撃的ではない方向を指していた。

 守備的サッカーから攻撃的サッカーへ。つまり2017年シーズンを機に、Jリーグは盟主のカラー一変することになった。ところがその翌年、日本代表監督に森保監督が就任する。代表チームのカラーがJリーグのトップと異なる事態になる可能性が高まった。田嶋幸三会長は森保監督を起用した理由をこう述べている。

「日本人監督で最も実績を残した監督だから」

 方向性の話はなかった。田嶋会長はその少し前、2018年ロシアW杯でベスト16入りした日本代表についてはこう述べていた。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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