東京から大阪まで、もっともコスパがいい交通手段は何なのか? バス・新幹線・飛行機
東京と大阪の間は、この国でもっとも多くの人が行き来する区間である。新幹線の本数は多く、高速バスも昼夜問わず運行されている。飛行機にも根強い人気がある。
では、コストパフォーマンスを考えると、どの交通機関を利用するのが妥当なのか? 「安さ」だけにこだわるのは意味があるのか? 安くても使いにくい交通機関というのがあるのでは?
まずは、安さ重視の人が利用する「高速バス」を検証してみよう。
安いけど時間を考えると疑問の高速バス
東京から大阪まで、昼行の高速バスでは8時間33分。運賃は4列シートの「青春昼特急号」で3,500円から7,000円、3列シートの「グラン昼特急号」で4,900円から8,000円となっている。
確かに安い。所要時間は往年の客車特急と同程度だ。ただし、東海道新幹線の3倍以上の時間がかかる。しかし、運賃は最安の場合で東海道新幹線「のぞみ」の4分の1以下だ。もっとも高い場合、2分の1を超える。時期によって、あるいは金額によっては、新幹線よりもはるかに遅い乗り物であっても割には合うものの、繁忙期は新幹線と比較しても割安とはいえず、そういう時期に限って渋滞のリスクがある。
サービス面については、高速バスでは途中のサービスエリアで休憩があり、そこで飲食物などを購入できる。このあたり、かつての急行列車で10分程度の停車があり、そこで駅弁などを購入できたのと似ている。
なお、高速バスは夜行があるのもメリットだ。JRバスでは夜行バスを多く運行しており、標準的な3列シートで6,000円から11,000円となっている。4列シートもあり、4,000円から9,700円となっている。なお4列シートはかなりきゅうくつだ。
鉄道にはない夜行を利用するか、高速道路そのものを楽しむために昼行の高速バスを利用するというのは十分に考えられるものの、4列シートに長時間揺られるというのは少々きついものがある。また東海道新幹線の東京発最終は21時24分であり、こういった時間まで新大阪行きの新幹線があることで、夜行列車の需要をなくしてしまいさらには高速バスの夜行便を減らしてしまうということもいえる。ピンポイントで深夜帯の移動を上手にしたい人が高速バスを利用するのが妥当だろう。
速いけどアクセスや待ち時間が気になる飛行機
羽田空港から伊丹空港までは、並行して新幹線があっても飛行機が頻発している。JALの普通運賃は26,400円から28,600円、ANAの普通運賃は26,400円から32,600円である。早期予約の場合はそのぶん割引になる。
所要時間は1時間5分。東海道新幹線「のぞみ」の2時間30分に比べると、速い。しかし、空港は東京や大阪の中心部から離れており、前後30分程度は移動に必要だと考えられる。その上、飛行機の出発時間20分~30分前には搭乗手続きを済ませる必要があり、空港にはそれよりも前に着く必要がある。
すると、東海道新幹線と所要時間はあまり変わらないのだ。
東京から大阪までの距離だと、飛行機による時間圧縮効果はそんなに期待できないということになる。羽田から新千歳、羽田から福岡までの飛行機は、羽田から伊丹までの飛行機に比べてもっと多い本数が運行されている。
東京から大阪までの移動では、新幹線を使う人が多いというのもわかる。
総合力の新幹線が結局コスパ最高
では、本数が多く、列車一本当たりの輸送力が非常に高い東海道新幹線はどうか。「のぞみ」は1時間当たり最大12本運行できる。必要なお金は紙のきっぷ(通常期)で14,720円、EX予約と新大阪~大阪間の交通系ICカードで13,790円。新大阪から地下鉄で大阪市中心部に行く人も多いだろう。東京から大阪まではトータルで2時間45分程度。
紙のきっぷでは、運賃は8,910円、特急料金は5,810円という内訳となっている。距離に支払われるお金よりも、速達性に支払われるお金のほうが少ないのだ。
ちなみに、東海道本線の普通列車を乗り継いでいくと、運賃だけで行くことができる。
速達性に対して5,810円というのは、高速バスなどを考えると圧倒的なコストパフォーマンスといえる。運賃については、「青春18きっぷ」1日分の2,410円を使用するのでない限り、東海道本線の普通列車を乗り継いでもそんなに得にはならないということになる。
なぜ東海道新幹線に多くの人が殺到するのか、コストパフォーマンスを考えると納得するしかなかった。