JR東日本、山手線が2030年ころにワンマン運転に 常磐緩行線などから開始、どうやって? 背景は?
長大で、朝ラッシュ時にはひどく混雑する首都圏の通勤電車。そんな通勤電車が、運転士だけで運行するようになる未来がやってくる。
とくに、朝の山手線11両編成を、運転士だけで運行するという状況が、2030年ころには発生する。
JR東日本は先日、首都圏の通勤電車の多くの路線で、ワンマン運転を導入すると発表した。どの路線が、ワンマン運転を導入することになるのか?
通勤電車だけの路線がワンマン運転に
JR東日本には、多くの通勤電車の路線がある。その中でも、いわゆる「中距離電車」が走らない路線が、ワンマン運転の対象になる。
まずは2025年春から、常磐線各駅停車の綾瀬~取手間、南武線の川崎~立川間でワンマン運転とする。常磐緩行線では、すでにATO(自動列車運転装置)が導入されており、列車の加減速や定位置停止制御が可能になっている。それにホームドアを組み合わせることで、安全なワンマン運転が可能になる。
南武線は多くの駅にホームドアが導入されており、近く全駅にホームドアが装備される見通しだ。その中でワンマン運転となる。
2026年春からは、横浜・根岸線の八王子~大船間でワンマン運転になる。東神奈川~大船間は、横浜線からの車両のみでワンマン運転となる。
その後のワンマン運転は怒涛の展開だ。2030年ころまでには、山手線、京浜東北・根岸線、中央・総武緩行線、埼京・川越線で導入する予定だ。
注目は山手線
JR東日本では、2018年7月の「変革2027」で山手線のドライバレス運転を計画していると発表している。山手線ではすでに、運転台に人がいる形式での自動運転の実験を何度も行っており、将来は資格を持った運転士がいなくても山手線が動かせるようになるだろう。
また、すでにATO(自動列車運転装置)を導入している常磐緩行線では、将来の山手線のように運転台に人がいれば問題がない形式での自動運転をめざしている。その第一歩として、先陣を切ってワンマン運転を導入する。
JR東日本の首都圏通勤路線、とくに山手線のように運行本数が多い路線で車掌が不要になるということで、膨大な通勤客を少ない人数でさばけるようになる。このことが与えるインパクトは大きい。
山手線の全駅にホームドアが設置され、転落など気を使う必要がなくなれば、それだけ「人」への負担が減るのだ。これまでホームに多くいた監視員はカメラに置き換えられたが、それでもなお駅によってはまだまだ人が必要になる。
たとえば新宿駅は、多くの人が利用し混雑している。しかしこの駅にホームドアが整備されたら、混雑は解消されないまでも安全がいまよりもずっと確保できるのではないだろうか。
安全の確保のために何をする?
これまで「人」が担ってきた安全確保は、かなりシステム化される。運転席には乗降確認モニタが設置され、異常時には輸送指令室から直接車内放送ができたり、乗客と輸送指令室が直接対話できたりするようにする。もちろん、ホームドアの整備も行う。
輸送指令室で列車内のリアルタイム映像を確認できるようになり、車両に搭載したカメラで線路内の障害物を検知できるシステムも導入する。
さらに安定した輸送と運転士の負担軽減のため、ATO(自動列車運転装置)またはTASC(定位置停止装置)を整備する。
2021年12月には首都圏の輸送システムを変革することをすでに発表しており、ATACS(無線式列車制御システム)を山手線や京浜東北線大宮~東神奈川間に導入することを発表している。このエリアには高性能のATO(自動列車運転装置)を導入する。
JR東日本の抱える課題も解決
JR東日本は、いまは人手不足に苦しんでいる。いっぽう、新規に採用しようとしても、鉄道事業が今後大きく発展していくことはなく、関連事業の発展の可能性のほうが大きいというのが現状である。鉄道業はコアな事業でありつつも、その他の事業の成長余力のほうが大きい。
鉄道現場の仕事が人手不足であり、人を増やすためのリソース拡大も難しいとなると、どれだけ鉄道関連業務をシステム化して人を増やさなくて済むかということになる。
JR東日本は「変革2027」で東京圏では2025年以降ゆるやかに人口が減少していく見込みだとしており、鉄道による移動ニーズが縮小し、固定費割合の大きな鉄道事業では、利益が圧迫されるリスクが高いことを想定している。
そんな背景も、ワンマン運転導入にはあるのだ。