今年の世界平均気温が観測史上最高となる見通し
WMOが世界平均気温記録更新を示唆
今年の世界平均気温が観測史上最高となる可能性があるという見通しが、12月3日に世界気象機関(WMO)により発表された。ペルーのリマで行われている国連気候変動枠組条約第20回締約国会議(COP20)に際しての発表だ。
2014年1月から10月までの世界平均気温は、平年値(1961~1990年の平均)を0.57℃上回っており、残り2か月もこの傾向が続けば、観測史上最高記録を更新する。これまでの最高記録が出たのは、データ処理の詳細によって微妙に結果が変わるが、気象庁のデータでは1998年だ。今世紀に入って98年の記録が更新されていないことから、気温上昇は停滞していると言われていた。
エルニーニョとの関係は
1998年の最高記録は、記録的なエルニーニョ現象に伴って生じたものだ。熱帯東太平洋の海面水温が上昇するエルニーニョが起こると、世界平均で見ても気温が高くなりやすい。エルニーニョとその反対の状態のラニーニャは数年おきに行ったり来たりする自然現象だが、その変動の様子は不規則である。
今年の春ごろ、夏にはエルニーニョが発生する可能性が高いという予測が気象庁から発表されたので、筆者はエルニーニョに伴って世界平均気温が上昇するのではないかと思い、データに注目していた。しかし、熱帯東太平洋の海面水温は予測されたほど上がらず、現時点までエルニーニョの発生には至っていない。
ところが、エルニーニョが起こっていないにもかかわらず、4月に入って月平均の世界平均気温は過去の記録を更新し続けたのである(7月のみ2位で、それ以外の月はすべて過去最高記録)。
今世紀に入ってからの気温上昇停滞期には、熱帯東太平洋の海面水温が相対的に低いラニーニャに近い状態が続いていた。これが今年はエルニーニョ「気味」になってきたと思ったら、強いエルニーニョの発生を伴わずとも世界平均気温は大きく上がってしまった。今までのラニーニャ気味の状態に隠れた形で、気温変動のベースが上がってきていたという印象を受ける。
今後の顕著な気温上昇の兆しか
もし、今年を境にエルニーニョ気味の状態が長期的に維持されるならば、世界平均気温は80年代、90年代に見られたような顕著な上昇傾向に再び戻るだろう。または、もしかすると今年は一時的な現象で、またラニーニャ気味に戻り、気温の停滞がまだしばらく続くかもしれない。どちらになるのか、現時点で筆者には判断できない。
しかし、遅かれ早かれ、いつかは気温上昇が顕著な上昇傾向に再び転じ、長期的には世界平均気温が上昇し続けることは間違いないと思う。それは、地球全体が持つエネルギーが年々増加しているからだ。大気中の温室効果ガスの増加によって、地球から宇宙に逃げる赤外線のエネルギーは減っており、地球が太陽から受け取るエネルギーよりも少ないエネルギーしか宇宙に逃げていかない状態が続いている。つまり、地球のエネルギー収支は黒字続きである。これは地球温暖化の仕組みの基本であるが、実際に衛星からの観測によって、地球のエネルギー収支が黒字であることは確認されている。
地球全体が持つエネルギーが年々増加しているにもかかわらず、今世紀に入って世界平均気温の上昇が停滞していたのは、増加分のエネルギーが海洋深層に運び込まれ、地表面付近に配分されていなかったせいであることが、徐々にわかってきている。詳細なメカニズムの解明にはまだ研究が必要だが、ラニーニャ気味の期間にはそのようなことが起こるようだ。逆にエルニーニョ気味の期間が始まれば、増加分のエネルギーは地表面付近の顕著な温度上昇となって現れるだろう。
5年前の答え合わせ
2014年の世界平均気温が過去の最高記録をほんの少し上回るか否かは、気候の科学にとってはあまり本質的でない。それは長期的な気温上昇傾向の中の時間断面として起こっている現象に過ぎない。
しかし、白状すると、実は筆者は「2014年の平均気温」を特別な興味を持って見守っていた。
2009年に、テレビ朝日の「朝まで生テレビ!」で、今世紀に地球は温暖化するか寒冷化するかという討論に参加したことがある。筆者の主張はもちろん温暖化だ。その際、寒冷化を主張するパネリストの方が「5年後にはわかります」とおっしゃった。
今年がその「5年後」である。
どんなに控えめに言っても、今年の世界平均気温は地球寒冷化の兆しには見えない。このことは誰もが納得してくれるだろう。