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JR北のドル箱路線でビジネス客が消滅!? 改悪で空気輸送続く札幌―旭川間「特急カムイ・ライラック」

鉄道乗蔵鉄道ライター
JRの乗客は高速バスに流れている(画像:【北海道】乗り物大好きチャンネル)

往復割引切符廃止で著しい客離れ

 JR北海道はこの3月のダイヤ改正で特急列車の指定席化を拡大し、窓口での往復割引切符の販売を廃止した。その結果、特に札幌から室蘭や旭川方面を結ぶ特急列車の著しい客離れを招き、連日、空気輸送の特急列車の様子を伝える投稿がSNS上を賑わせている。

 札幌―室蘭間を結ぶ特急すずらん号では全席の指定席化を行うとともに、往復割引切符を廃止したことで乗客の大半は高速バスに流れたことは2024年4月26日付記事(JR北、特急割引切符廃止と指定席化で深刻な客離れ えきねっとへの誘導、試みるも顧客ニーズの本質掴めず)で詳しく触れている。

 一方で、札幌―旭川間を結ぶ特急カムイ・ライラック号については、指定席の車両を増やし自由席を減らしたことで、乗客の大半は限られた自由席車両に殺到し、指定席車両は空気輸送状態となった。さらに、自由席の混雑を嫌って高速バスへと流れた乗客もおり、札幌―滝川間や札幌―旭川間を結ぶ高速バスはこれまでにない混雑を見せている。

 例えば、札幌―旭川間でJRの特急列車を利用した場合には、所要時間は1時間25分で、運賃・料金は自由席で4,690円、指定席で5,220円となる。これに対して高速バスは所要時間2時間5分で、片道運賃は2,500円、往復だと4,700円だ。

使い勝手の悪いえきねっと割引

 JRのえきねっとを利用すれば前日までの申し込みで札幌―旭川間の特急指定席に片道2,860円で乗車できる。しかし、乗車のためには窓口または指定券売機等での紙の切符の発行が必要なこと。さらに、発券後の変更ができないことから乗客目線では急な予定の変更に対応できないこと。利用者にとっては使い勝手が悪くネット予約の手間が増えただけというものだ。

 札幌―旭川間の特急ライラック・カムイ号については、30分から1時間間隔で多くの本数が運行されていることから、本来であれば乗りたいときに気軽に乗れることが最大の強みとなるはずであるが、乗客を指定席のえきねっと割引に誘導をしようとしたことが、かえって利用者にとっては気楽に乗れないサービスと捉えられてしまったようだ。

平日のビジネス客も消滅

 こうした特急列車の客離れの現状について、YouTube「【北海道】乗り物大好きチャンネル」を運営する北のたぬきさんが道内各地を精力的に取材している。2024年4月27日に公開された動画では、本来であればビジネス客などで混雑している平日の札幌駅19時30分発旭川行の特急ライラックが空気輸送状態であることが報告された。本来であればこの時間帯の旭川行の特急を利用するのはビジネス客がメイン。しかし、今回の「改悪」によりこうしたビジネス客の鉄道需要がほぼ消滅し、乗客は高速バスに流れることになった。動画内ではその証拠として、併せて混雑する高速たきかわ号や高速あさひかわ号の様子も紹介された。 

 北のたぬきさんは、客離れの要因について「北海道経済や道民の懐事情が厳しい中では、運賃の高いJRはビジネス客を含めた道民から見放された結果になったのではないか」と分析する。えきねっとの使い勝手の悪さから多くの道民には事実上の倍額への値上げと映ってしまった側面はあるようだ。

 今回の著しい客離れは、JR北海道の自社のサービスや顧客に対する無理解が招いた結果と言える。この失態は、競合他社や市場環境を意識することなく事業運営を行ってきた独占企業の末期的な姿なのかもしれない。

特急ライラック号の実情は【北海道】乗り物大好きチャンネルさんでも詳しく紹介されています。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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