アメリカ海兵隊、開発中の自律型無人艇を那覇軍港に配備 国内初の運用 将来への布石か
アメリカ海兵隊は10月9日、自律型無人艇を沖縄本島の米軍那覇港湾施設(那覇軍港)に配備した。沖縄県や沖縄市が10日、沖縄防衛局から連絡を受け、筆者の取材に対して明らかにした。
沖縄防衛局は4日、県や市など地元自治体に対し、海兵隊が「ALPV」と呼ばれる開発中の無人艇1隻を一時的に展開すると伝えていた。ALPV運用は国内で初めてとなる。
沖縄防衛局の資料によると、ALPVは基準排水量約8.3トン、全長約19メートル、幅約2.5メートルで、今月から来年8月までの約11カ月間、那覇市の那覇軍港を拠点に、伊江島補助飛行場(伊江村)の西海岸区域や米軍のホワイトビーチ(うるま市)、レッドビーチ(金武町)も活用し、沖縄本島の沿海域付近での物資の輸送など補給活動を担う。輸送対象は食糧などの補給品であり、現時点ではミサイルや弾薬を輸送する計画はないという。アメリカ軍側は、有人のセーフティ・ボートを随伴させるなどし、安全を確保すると説明している。
今回の海兵隊のALPVの一時配備について、中谷元・防衛相は8日の閣議後会見で、「様々な評価などを実施するもので、米軍の後方支援能力強化が目的。これにより、日米同盟の抑止力・対処力の強化に資すると認識している」と述べた。
一方、沖縄県基地対策課は10日、筆者の取材に対し、「新たな基地負担の増加はあってはならない。引き続き、情報を収集するとともに基地負担の軽減を求めていく」と述べた。
●司令官が「麻薬密輸船」との冗談も
ALPVは、半潜水型無人プラットフォームだ。米メディアによると、米バージニア州クアンティコの海兵隊戦闘研究所の司令官サイモン・ドラン准将は9月4日の会合で、このシステムが中南米の麻薬密売人が使用する低姿勢のボートに似ていると示唆した。
ドラン准将は「実を言うと、これはただの麻薬密売船です。ご存知のとおり、このアイデアは南部の友人から盗んだものです」と冗談交じりで説明。「そして、これは全長55フィートで、完全に自律的だ。数百マイルから数千マイルを移動できる。新しい武器システムを搭載できる。燃料を運ぶことができる。食料を運ぶことができる。ほとんど何でも積載できる」と話した。
米準軍事紙、星条旗新聞の7日付の記事によると、第3海兵遠征軍(司令部・沖縄県うるま市キャンプ・コートニー)の広報官は「ALPVは沖縄展開中、第3海兵遠征軍のさまざまな部隊が使用する予定」と説明。ただし、安全保障上の問題を理由に、同船がどこで使用され、どのような貨物を積載するかを具体的に明かすことは拒否したという。
米メディアのディフェンススクープは9月4日、ALPVの沖縄配備について、「インド太平洋地域の沖縄に拠点を置く第3海兵遠征軍は、部隊を危険から遠ざけ、中国など高度な敵国との争いの多い環境で作戦を展開する上でより有利な位置にいるための新たな能力を追求する中、このシステムを実験する予定である」と報じた。
海兵隊は、中国を念頭に、離島など島しょ部に速やかに小規模部隊を展開させて前線の拠点を整える「機動展開前進基地作戦」(EABO)を採用している。その後方支援活動として無人艇による物資補給などが必要になっている。
海兵隊は2023年11月、沖縄県に駐留する第12海兵連隊を、離島有事に即応する第12海兵沿岸連隊(MLR)に改編した。MLRには沿岸戦闘部隊や防空部隊、補給や維持整備を担当する後方支援部隊に加え、将来的には情報収集と攻撃を兼ねる無人艇部隊が追加される方針だ。このため、今回のALPVの沖縄配備は将来への布石の可能性がある。