ファーム交流試合で、ひと足先に実現したT-Gのドラ1対決!《5/20 阪神ファーム》
19日と20日、兵庫県立淡路佐野運動公園(ボールパークあわじ)第1野球場にイースタン・リーグの巨人を迎えて行われたファーム交流試合は、1勝1敗で幕を閉じました。19日が2731人、20日が3225人で合わせて5956人という来場者。阪神がここ10年、淡路で開催しているウエスタン公式戦では2016年のソフトバンク2連戦が合計5306人で最多だったので、今回はそれを更新したわけです。さすが伝統の一戦!
交流試合は普段のリーグ戦とまた違った雰囲気で、お客様だけでなく選手たちもいい気分転換ができるかもしれません。こういう試合では相手チームのベンチ入りメンバー表を覗き込む選手をよく見かけます。もちろん対戦相手としての分析もありますけど、自身の先輩や知り合いが来ていないかどうかのチェックですね。
19日もルーキーの馬場皐輔投手が、巨人の練習開始時に見に来て「これ赤丸のついている人が今回来ている人ですか?」と聞くので、そうだと答えました。誰か知り合いが?と尋ねたら「橋本到さんが先輩なんですよ」と。なるほど、同じ仙台育英出身ですね。しかもプロ1年目としてはキッチリご挨拶しなくちゃいけなかったでしょう。残念ながらメンバーには入っていなかったので、それは次の機会に持ち越しです。
淡路のT-G戦に掛布SEAが尽力
さて、ことしの“淡路シリーズ”は初めてのファーム交流試合で、しかも巨人との顔合わせ。実はこれ、阪神の掛布雅之SEAが“依頼”を受けて実現したものだそうです。昨年5月、監督として淡路を訪れた際に地元JAの会長から「淡路日の出農業協同組合合併25周年と、阪神がファーム公式戦を行うようになって10周年となる2018年は、その記念として巨人を呼んで交流試合ができないものか」と相談されたとか。そこで掛布さんが球団に相談して、きっと巨人側の快諾もあり、めでたく開催に至ったのでしょう。
そして初日の始球式も掛布さんが、矢野燿大監督のミットめがけて笑顔いっぱいの投球を披露。来られると知らなかったので、球場到着と同時に記者席まで聞こえてきた、あの明るく元気な声にびっくりしました。掛布さんは慌ただしく一塁側、三塁側と回って挨拶をし、始球式を終えると座る間もなく「これから名古屋へ行くんですよ」と引き揚げていかれる忙しさです。でも選手たちは嬉しそうでした。そしてグラウンドに姿を見せた途端に上がった、お客様からの拍手と歓声もすごかったですね。
始球式を終えて記者陣に囲まれた掛布さんは「気持ちいいねえ。矢野は的が大きいから」と始球式の感想。久々のファームですか?と聞かれ「そうですね。まあ上がこういう状態だけに、中谷だとか、北條しかり、陽川しかり、若い風を1軍で吹かせてほしい。高山なんかももう一度上がって“らしさ”を出してもらえれば」と、昨年まで指導した若トラたちへのゲキです。
その中から、22日の1軍昇格が決まった中谷将大選手。「頑張ります。とにかく頑張ります!」と繰り返した言葉が印象的でした。1軍でさらに羽ばたけるよう祈っています。
投手戦を演じた両方のドラ1右腕!
では、20日の試合結果をご紹介しましょう。19日は逆転されたあと8回に追いつきながら、最後で3点取られて負けました。その詳細はこちらからご覧ください。→<淡路島でファーム交流試合のT-G対決!初戦は打ち負けました>
でも20日は一転、1対0という息詰まる投手戦になっています。しかも投げ合ったのがドラフト1位のルーキー同士!阪神・馬場投手は5回3安打無失点で9奪三振、巨人・鍬原拓也投手は7回3安打1失点で11奪三振です。これで勝ち負けに分かれてしまうなんて…複雑ですね。なお試合経過と、コメントも少し教えてもらったので書かせていただきました。
《ファーム交流試合》5月20日
阪神-巨人 2回戦 (淡路)
巨人 000 000 000 = 0
阪神 010 000 00X = 1
◆バッテリー
【阪神】○馬場(2勝1敗)-青柳-山本-守屋-Sモレノ(2敗6S) / 坂本
【巨人】●鍬原(7回)-西村(2/3回)-池田(1/3回)/ 岸田-高山
◆二塁打 神:陽川、中谷 巨:松原
◆盗塁 巨:田中俊(5)、マルティネス(3)、湯浅(2)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]右:島田 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .246
2]遊:北條 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .222
3]中:高山 (3-1-0 / 1-1 / 0 / 0) .300
4]三:陽川 (3-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .222
5]一:中谷 (2-1-1 / 0-1 / 0 / 0) .197
6]左:緒方 (3-0-0 / 3-0 / 0 / 0) .217
7]指:今成 (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .205
8]二:西田 (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .292
9]捕:坂本 (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .350
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
馬場 5回 69球 (3-9-1 / 0-0 / 3.86) 152
青柳 2回 41球 (1-1-2 / 0-0 / 4.22) 144
山本 0.1回 14球 (1-0-1 / 0-0 / 3.27) 133
守屋 0.2回 11球 (0-0-0 / 0-0 / 2.37) 148
モレノ 1回 11球 (1-0-0 / 0-0 / 7.43) 152
《試合経過》※敬称略
まず馬場のピッチング。1回、いきなり先頭の松原に打たれ右翼線二塁打。山本の遊ゴロで三塁へ進め、田中俊には四球を与えて一、三塁とします。4番・和田は空振り三振!これで田中俊が盗塁を決めましたが、柿澤からも三振を奪って無失点。立ち上がりのピンチをしのいだ馬場は2回を3者連続三振に切って取り、1回から5連続奪三振!スタンドを大いに沸かせました。
3回は先頭の9番・北村に左前打されるも、次を投ゴロ併殺打と空振り三振!4回は三者凡退です。そして5回、先頭のマルティネスをショート内野安打で出し、連続三振を奪ってマルティネスの盗塁があったものの、難なく最後を締めました。5回を投げて3安打無失点です。
5回で9個、しかも5連続を含む奪三振ショーを披露した馬場。ところが相手もさすがドラフト1位ですね。巨人の鍬原は7回で11個!って…つまり阪神打線が喫した三振の数です。では阪神の攻撃をどうぞ。
1回はわずか7球で三者凡退でしたが、2回は先頭の陽川が左翼線に二塁打を放ち、続く中谷が中越えのタイムリー二塁打!あっという間に先制です。そのあと暴投で中谷は三塁へ進むも、後続を断たれて1点止まり。3回はまた三者凡退に片付けられます。
4回は先頭の高山が左前打。しかし1死後に誘い出される形でタッチアウト(記録は盗塁死)。中谷が四球を選ぶも、緒方が見逃し三振で追加点なし。5回は2死から坂本の四球のみ。6回も1死から高山が四球を選んで盗塁失敗など3人で終了。7回もまた2死から今成が四球、でもやはりチャンスは広がらず。鍬原をとらえたのは2回だけでしたね。
8回は西村と池田に対して1死から島田が四球を選びますが、そこまで。わずか3安打で攻撃終了です。
さて救援陣は、馬場のあと青柳が登板。6回は2死から1四球、7回は1安打1四球などで2死一、二塁とするも北村から三振を奪って無失点でした。8回は山本がヒット、犠打、四球で1死一、三塁として交代。守屋が内野ゴロ2つで片づけています。
1対0のまま迎えた9回はモレノがマウンドへ。マルティネスと代打・石川を三振球で打ち取り2死、途中出場の脇谷には右前打と盗塁を許したものの、最後は高山を三飛に仕留めて試合終了!阪神は3安打で1点、巨人は6安打で0点でした。
矢野監督と馬場投手のコメント
矢野監督は馬場投手について「スピードも出ていたみたいだね。実際に空振りも三振も取れていたし、そういうピッチングをしてほしい。三振を取れているのは、すごく武器になっている。球数もイニングもまだいけたんだけど、一度いいところで切っておいたほうが、次回の登板でも気持ちよくいけるかなと思って。課題はクイックにいったりだとか、そういうところもあるけど、第1関門としてはよかったんじゃないかな。馬場にとっては、やっとスタートラインに立てたんじゃない?」と話しています。
そして中谷選手に対しては「復調気配を感じる。逆方向に打球が飛ぶようになってきた。凡打だけど内容のあるものになっているしね」と矢野監督。これは20日の試合後のコメントです。
公式戦はこれが初先発だった馬場投手は「きょうは体のキレというか、体全体を使って投げ込めた。ストレートの強さが課題だと言われていたので、この感覚を忘れないようにやっていきたい。初回の入り方とかまだまだ改善するところはあるので」と振り返りました。ちなみに巨人の鍬原投手について、意識はすることなかったみたいですね。
そういえば前日、ドラ1の対決になるけど何か特別な思いはありますか?と聞いたら「ないですねえ。僕はミットめがけて投げるだけなので」と言っていました。とはいえ、のちに2人で「初対決は淡路島だったなあ」なんて回顧することがあるかもしれません。互いに甲乙つけがたい好投だったのではないでしょうか。
おまけ・野球教室の閉会式
19日の試合後は恒例の野球教室で、淡路市と洲本市の少年野球チーム(13チーム)の計143人が参加して行われました。女子も多く、中でも素晴らしいバットスイングの子に選手が目を丸くしたり。試合が長かったため少し短縮しての開催でしたが、矢野監督もすごく楽しそうだったのが印象に残っています。
そして閉会式の挨拶を誰がするのか、ここは注目ポイントなんですよね。望月投手が北條選手にうながされて「え、僕ですか?」という感じのリアクションをしていたり、馬場投手が人影に隠れてスルーしようとしていたり(実際にそうかは不明ですが、そんな雰囲気だったので)。それで結局、出てきたのは島田海吏選手でした。
その前に、参加選手代表で挨拶をした少年が「ありがとうございました。きょう教えてもらったことをこれからの練習に生かして(中略)、皆さんのような素晴らしい野球選手を目指して、“必死のパッチで”頑張りたいと思います」とお礼の言葉を述べ、阪神の選手たちも大きな拍手!実はこういう挨拶の例文がもともとあり、それを選んで覚えたみたいなのですが、“必死のパッチ”は本人のアドリブだったみたいです。やりますねえ。
これを受けて、島田選手がお返しの言葉を述べます。ここで島田選手も“必死のパッチ”を挿入したもんで、今度はチームメイトから「おいおいおい!」とツッコミの嵐です。矢野監督にまで「子どものをパクってどうすんねん!」と言われた島田選手。終わったあとで島田選手に真相を聞いたら「たまたま自分も考えていたんです」と。え、ほんとに?「ウソです。いただきました(笑)」と自供。でもいいんですよ。重ねていくことが関西のノリなので。
そんな島田選手の挨拶を、他人事だと思って大笑いしながら見ていた人たちも、またヒーロースピーチでしゃべる機会がありますよ。期待していますからね。
<掲載写真は筆者撮影>