次なる台湾スイーツブーム、春水堂の豆花を識る
今年ブームとなるスイーツ
今年ブームとなりそうなスイーツは何かと訊かれたら、私は間違いなく、豆乳プリンにシロップやトッピングを加えた台湾の伝統的スイーツ「豆花(トウファ)」を挙げるでしょう。
「グルメブーム、2014年の振り返りと2015年の展望」でご紹介したように、昨年2014年は台湾スイーツもブームとなりましたが、タピオカミルクティー、かき氷、パイナップルケーキに続いて豆花がヒットしそうなのです。
理由は以下の通り。
- ヘルシー
- さっぱり
- トッピング
日本人に馴染みのある豆乳を使っており、タンパク質がたっぷりで健康的です。お茶ベースのシロップでさっぱり仕上げているので、こってりとしたスイーツが多い現在トレンドのハイブリッドスイーツとはよい意味で差別化されます。さらには小豆やピーナッツなどの豆類、色とりどりのタピオカ、フルーツとも相性がよく、様々なバリエーションを楽しめるのです。見た目もよいので、次なる台湾スイーツを探すメディア向けでもあるでしょう。
この3点に加えて、何よりも大きいのが、本格的な豆花を提供できる店が現れたことです。
その店とは<創作お茶ドリンクのパイオニア>を自負する春水堂です。
勢いのある台湾カフェ
春水堂は「【台湾スイーツ】マンゴーチャチャは「元カレ」「モテキ」からオレンジの愛を届ける」でまとめた台湾スイーツの系譜を見ていただければ分かるように、昨年ぐんと店舗数を増やしており、勢いがある台湾カフェです。
以下、春水堂のオープンをまとめます。
- 2013/7/27 代官山
- 2014/1/14 六本木
- 2014/3/21 表参道
- 2014/10/10 飯田橋サクラテラス
- 2014/11/1 ルミネ新宿
2013年の日本初上陸を機に、2014年には4店舗もオープンしています。代官山、六本木、表参道と行列の聖地で成功していることも見逃せません。
この春水堂が次のブームと目される豆花を販売しますが、これにはどういった背景があるのでしょうか。
半年もかけて開発
豆花について尋ねると、事業開発グループ マネージャー 木川瑞季氏は「日本の方にも豆花のおいしさを知っていただきたいという思いのもと、2014年夏から開発を始めた。絶対に失敗は許されないという気持ちで臨み、ようやく4月6日からご提供できる運びとなった」と自信を覗かせます。
どうして半年もの期間を要したのかと訊くと「豆花は台湾の春水堂でも提供していないメニューなので、全て日本で作り上げた。春水堂の商品は作り立てや無添加にこだわっており、全て店舗で作っているので、確立するのに時間がかかった」と振り返ります。
工場で添加物を加えて最終系に作り上げておけば、店舗で作らなくてすむのでオペレーションも簡単になりますが、味は落ちてしまいます。春水堂ではそのようにしたくなかったのでしょう。
また「台湾人が食べてもおいしいと感じる豆花を作った」としながらも、「日本で行った試食会のご意見を反映して、豆乳プリンを少しだけかたくした」と本格的な豆花を目指すのと併せて日本人向けにアレンジしたと話します。
台湾らしいスイーツを
豆花に関するこだわりは分かりました。しかし、そもそも春水堂がどうして今になって、豆花を提供しようとしたのでしょうか。
木川氏は「もともと台湾らしいスイーツをご提供したいと考えていた」と切り出し、「最初は春水堂が最も得意としているタピオカミルクティーを始めとするドリンクを打ち出した。その結果、タピオカミルクティーを認知していただき、これから夏に向けておいしく飲める愛玉ジャスミンレモンティーも定番となった」と、ドリンクに注力した戦略であったとします。
続けて「お客さまに台湾のドリンクのおいしさを分かっていただけたので、次は台湾のフードのおいしさを分かっていただきたいと考えた」として「昨年2014年夏に台湾風炸醤麺と蒸し鶏の胡麻だれ麺をご提供した。どちらともご好評いただいたので、秋には汁麺も加えた。ヌードルだけではなく、お客さまのご要望にお応えしてチマキもご提供している」と経緯を話します。
「食事系のフードが成功したところで、ようやくスイーツのことを考えられるようになった。ロールケーキやわらび餅といったスイーツもご満足いただいていたが、もっと台湾らしいスイーツを召し上がっていただきたかったので、豆花を開発する運びとなった」と順を追って説明します。
台湾からのサポートも
台湾の春水堂では豆花が販売されてないとありましたが、定番スイーツであるのに何故なのでしょうか。
それに触れると木川氏は「台湾には至る所で豆花が売られている。台湾の春水堂はオーソドックスなものを後から作るよりも、他にはないものを新しく作っていきたいという考えが強い」と答えます。
では、日本の春水堂が豆花を新しく開発した時には、台湾の花水堂から何かサポートはあったのでしょうか。
木川氏は「台湾で人気の豆花の店を案内してもらったり、試作品を食べて意見を述べてもらったりした。シロップの隠し味としてジャスミンティーを忍ばせることも、アドバイスしてもらった」と話し、さらには「1987年にタピオカミルクティーを開発して台湾を席巻した女性が2ヶ月に1度は来日して試食しているので、クオリティーは常に維持されている」と日本の春水堂と台湾の春水堂は良好な関係であるとします。
このようにして日本の春水堂が質を高めていった結果、「最初の頃は、日本の春水堂にいらっしゃったお客さまが、台湾の春水堂と同じ味だと言ってくださっていた。しかし、最近では逆になっている。台湾の春水堂にいらっしゃったお客さまが、日本の春水堂と同じ味だと言ってくださるようになった」と面白いエピソードを紹介します。
熱意が通じて日本初出店
日本の春水堂は、台湾の春水堂と、代表取締役を務める関谷有三氏が設立したジョイントベンチャーによって運営されています。
経緯を尋ねると、木川氏は「関谷代表取締役はもともと飲食とは関係のない設備会社を経営していた。台湾に事務所を作って仕事を広げようとしたところ、台湾の魅力に取りつかれると同時に、春水堂の大ファンになった」と意外なきっかけを披露します。
その後の展開を尋ねると「台湾の春水堂のオーナーは味やブランドに強いこだわりがあるため、海外への出店には前向きではなかった。しかし、関谷代表取締役が1年も通い詰めて情熱を伝えた結果、日本へ出店することを承諾してもらえた」と答え、「1号店は都心でありながらも、台湾の春水堂の雰囲気を偲ばせる雰囲気がある場所を探して、代官山に決まった」と述懐します。
こういった慎重さがありながらも、昨年積極的に展開したことについて触れると「ルミネ店が予定より前倒しになってオープンしたこともあり、昨年は出店ラッシュとなった。今年は半年間は出店せず、商品開発やサービス向上に務める」と話します。
日本人にとっての豆花
最後に「日本のお客さまはヘルシーへの意識が高く、豆乳や胡麻など地味だが素材が感じられるスイーツを期待している。こういったご要望に応えながらも、台湾の文化をしっかりと伝えていきたい」と述べる木川氏は、実のところ関谷氏と同じように、仕事で訪れた台湾に魅了されて春水堂を愛し、日本出店のスタートアップに自らの意思で加わった方です。
紀元前2000年以前に中国から伝わり、豆腐、味噌、醤油、納豆など今では日本人にとって必要不可欠な食品の原材料となった大豆は、日本人による熱意と台湾人からの厚いサポートによって、本格的な豆花として新たに生まれ、そして今年ブームになろうとしています。
情報
詳しくは公式サイトをご確認ください。
参考
スイーツ図鑑にも春水堂が詳しく掲載されていますので、ご参考にどうぞ。
元記事
レストラン図鑑に元記事が掲載されています。