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「社食イヤで会社辞めた」と言う若者に、上司はどう向き合えばよかったか?

横山信弘経営コラムニスト
(ChatGPT DALL-E 3 にて筆者作成)

上司が部下を食事に誘うだけで、パワハラと言われる時代になった。飲みに誘ったのではない。食事である。

相手が嫌がるまで誘い続けなければ、厚生労働省が発表したパワハラ6つの類型には該当しないと言われているものの、部下自身が「パワハラだ」と主張したら上司は受け止めざるを得ない。

パワハラ認定されるかどうかは別。「食事に誘われるのがイヤ」と言っている以上、

「もっとコミュニケーションをとりたいから、誘っているのに」

という言い分は通じない。

ならば社食(社員食堂)はいいかというと、「社食がイヤだった」と言って辞める若者も増えているとのこと。

なぜか?

■「社食」を嫌がる圧倒的1位は?

社食(社員食堂)は、企業にとっても社員にとってもメリットが大きく、近年見直されてきている。組織のエンゲージメントを上げるためにも効果があり、いまや福利厚生として企業がアピールできる重要な施設だ。

いっぽうで、社食が苦手な人も少なくはない。理由は3つだ。

(1)一人で食べているところを大勢に見られるのがイヤ
(2)上司や同僚と食べるのが苦手
(3)社食まで行って並ぶのが面倒

圧倒的に多いのが(1)だ。社食で「ぼっち食」をすることに強い抵抗感を覚える若者は多い。一緒に社食に行ってくれる仲のいい同僚がいないと、よけいに疎外感を覚えるようだ。

しかし、一人で弁当を持って自分のデスクで食べていると、

「社食を利用しろよ。そのほうが得だろ?」

「会社がせっかく社員食堂を作ったんだから、利用しなさいよ」

と周りから言われる。社食の存在が、孤独感を倍増させてしまうのだろう。

■「ランチぐらい一人で食べたいのに……」

反対に、社食があることで上司や先輩、同僚と食事をしなければならないのも「社食嫌い」の理由に挙げられる。

「たまにはいいが、社食があると毎日必ず同じメンバーと食べることになる」

という言い分は、わからないでもない。社食があることで、ランチのメンバーが固定されてしまうことがイヤだ、という意見だ。ベテランになれば一緒に行くメンバーを選べるかもしれないが、社歴の浅い若者は、

「隣の課のAさんと社食に行きたいので」

とは言いづらいのかもしれない。

社食で並ぶのが面倒という意見も多い。社食は「コスパ」がよくても「タイパ」が悪い、という判断だ。

「わざわざ社食まで行くのが面倒だし、トレイを持って並ぶのも苦痛」

「コンビニで弁当を買って自分のデスクで食べたほうが仕事しながら食べられるし、タイパがいい」

このように社食よりも弁当のほうがいい、という意見は多い。

■しかし「デスクでランチ」は危険!

とはいえ「デスクでランチ」を推奨する人はいない。仕事の効率をアップする「ライフハック」的な観点からも昔から言われていることだ。多くの心理カウンセラーも、IT企業で増える「デスクでランチ」に警鐘を鳴らしている。

消化に悪い。座りっぱなしだと運動不足になる。こういった理由もあるが、「デスクでランチ」のいちばんの問題は、仕事の生産性が落ちることだ。

生産性をアップするためには、適度に脳のスイッチを切り替えること。だからいったん仕事の手を止め、立ち上がって社員食堂(外のレストランでもいい)に出かけ、仲のいい誰かと雑談などを楽しみながら昼の時間を過ごす。そのほうが、結果的に生産性が高まるのである。

若者が社食を嫌がるのは、マネジャーの働きかけにも問題があるだろう。社員食堂の存在意義を正しく啓蒙すること、そして社食を利用しやすくするアプローチが必要だ。

新刊『若者に辞められると困るので、強く言えません』で書いた。

多様性の時代だから、全員が同じ行動をとる必要はない。だからこそ若者に誤解されないようなコミュニケーションを、日ごろから続けることが重要だ。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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