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忘れられていないか!「テスト結果だけに注目しない」の萩生田発言

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 小学校での35人学級を実現するための改正案が、衆議院文部科学委員会(衆院文科委)で可決された。18日の衆院本会議で可決される。しかし、「テストの結果だけに注目することがないよう」がきっちり担保されているのかどうか、不安は残る。

 17日の衆院文科委で、小学校の学級編制標準を35人に引き下げる義務標準法改正案が全会一致で可決された。この日の質疑では、35人学級を中学校にまで広げていくことが中心だったようだ。

 この席で萩生田光一文科相は、「今回の学級編制標準の引き下げを計画的に実施する中で、実証的な研究や検証を行い、その結果を踏まえ、中学校も含め学校の望ましい指導体制の在り方について検討したい」と述べたと『教育新聞』(3月17日)は伝えている。「実証的な研究や検証」という言葉は使っているが、報道を読むかぎり、その内容にまではふれていない。

 これに先立つ3月12日の衆院文科委で萩生田文科相は、「実証的な研究や検証」が「テストの結果だけに注目することがないようにお願いしたい」と強調している。研究や検証が、全国学力テストなどテストの点数だけで評価されることがないようにクギをさしたのだ。

(参考:https://news.yahoo.co.jp/byline/maeyatsuyoshi/20210315-00227520/)

 しかし18日の衆院文科委では、実証的な研究や検証を重視する姿勢は示してはいるものの、その研究や検証の内容にまでは言及していない。「テストの結果だけに注目しない」という、12日の自らの発言を念押しすることもしていない。

 義務標準法改正案が可決されたあと、附帯決議案が与野党の5つの会派から共同提案され、同じく全会一致で可決されている。8つの項目が盛り込まれているが、いちばんめの項目は次のように書かれている。

「政府は少人数学級の効果検証結果等を踏まえ、中学校の35人学級の検討を含め学校の望ましい指導体制の構築に努めること。また高等学校の学級編制の標準の在り方についても検討すること」

「効果検証結果等を踏まえ」とあるものの、どういう効果、検証、結果なのかはふれられていない。「テストの結果だけに注目しない」にも踏み込んでいない。12日の萩生田文科相の発言が理解され、了解されているのかどうかも定かではない。

 萩生田文科相の発言でも附帯決議でも、小学校で35人学級を導入した効果や結果を検証することは明言されている。その一方で、検証の内容にはふれられず、「テストの結果だけに注目しない」が重視されるのかどうかもわからない。

 これでは、小学校の35人学級をめぐっての研究や検証が、テストの結果だけで判断されることになる危険性を否定できない。目に見えて分かりやすいもので、得てして判断したがるものだからだ。

 12日の自らの発言に責任をもってもらうためにも、テスト結果だけにこだわる小学校の現場にしないためにも、萩生田文科相には「テストの結果だけに注目しない」ことを徹底する具体策を示してもらいたいものだ。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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