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楽天が「純金積立」にもポイント還元 リスク分散意識は高まるか

山口健太ITジャーナリスト
「純金積立」がクレジット決済に対応(楽天証券のWebサイトより、筆者撮影)

楽天証券は、2月27日から金やプラチナの積み立てにおいて、楽天カードによるクレジット決済と0.5%のポイント還元に対応します。

これにより、大手ネット証券では横並びだった手数料が少しオトクになります。昨今の世界情勢も相まって、リスク分散意識は高まるでしょうか。

純金積立のカード決済でポイント還元

楽天証券の「金・プラチナ取引」は、金・プラチナ・銀という3種類の貴金属の買い付けや積み立てに対応したサービスとなっています。

積み立ての資金は楽天証券の口座に入金することもできますが、手間がかかることから、楽天銀行の預金残高を自動的に利用する「マネーブリッジ」に対応しています。

それに加えて、2月27日からは楽天カードによるクレジット決済にも対応します。メリットとしてはポイント還元があり、楽天カードでは通常1%のポイントが還元されるところが、貴金属の積み立てではこれが0.5%になるとしています。

購入時の手数料は1.65%で、それ以外の手数料はかからないという点ではSBI証券マネックス証券と横並びです。そのため、ポイント還元を考慮すると、実質的には他社よりも手数料が安くなるといえそうです(ただし楽天証券とマネックス証券は消費寄託、SBI証券は特定保管という違いがあります)。

興味深いのは、クレジット決済で積み立てができる上限金額です。これは金・プラチナ・銀の対象商品ごとに月額10万円、合計30万円となっています。

これとは対照的に、投信積立のクレジット決済の上限は月5万円でした。これには法的根拠があり、内閣府令の定めによる月10万円の枠のうち、引き落としが重なる場合などを考慮して月5万円となっています。

しかし、楽天証券によれば、貴金属は有価証券ではないことから、この内閣府令の適用は受けないとのことです。

商品ごとに月額10万円までとした理由については、「投資家保護の観点と金・プラチナ取引サービスで積み立てをされているお客様の傾向などを考慮して、当社で設定した」(楽天証券広報)と説明しています。

楽天証券の投信積立では、2018年にクレジット決済に対応後、2022年5月には利用者が200万人を突破するなど順調に拡大を続けてきました。金・プラチナ取引についても、ポイント還元をきっかけに利用者が増えるか注目されます。

ライバルは新NISA?

気になるのは2024年に始まる新NISA制度の影響です。「つみたてNISA」では貴金属を主な投資対象とする銘柄は存在しないため、これまではつみたてNISAとは別に、貴金属に投資するサービスの需要があったと考えられます。

しかし新NISAでは、従来の一般NISAに相当する成長投資枠が年240万円分設定されており、つみたてNISAと併用できるようになります。

楽天証券の金・プラチナ取引では、一般的な譲渡所得として総合課税の対象になるのに対して、新NISAの成長投資枠で投資信託やETFを利用すれば、税制優遇を受けながら貴金属に投資できる可能性があるわけです。

これにより、2024年以降は新NISAにマネーが流れ込んでいくと筆者は予想しています。ただ、その中でも貴金属への投資は、株式や債券以外へのリスク分散という需要もあると考えています。

貴金属の魅力について、楽天証券は「万が一、紛争や経済危機等の不測の事態が起こっても、価値がゼロになることはない」とアピールしています。

万が一の事態を想定する場合、貴金属には「現物」と引き換えたいというニーズもあり、楽天証券でも金とプラチナについて現物受取に対応しています(一部のETFも対応しています)。

昨今の世界情勢も相まって、こうしたリスク分散意識が高まっていくかという点も注目ポイントといえそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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