つみたてNISA「月10万」でもクレカ上限「月5万」という意外な障壁も
少額投資非課税制度(NISA)において、つみたてNISAの投資枠を年120万円に拡大する方針が報じられたことで、Twitterでは「月10万」がトレンド入りするなど話題になっています。
実際に月10万円の積み立てが可能になると何が起きるのか、考えてみます。
投資枠が広がることで何が変わる?
各社の報道によれば、つみたてNISAの年間投資枠は120万円に拡大。それとは別に、年240万円の「成長投資枠」も併用できる見通しです。
NISAの口座数は、現在の1700万口座から今後5年間で3400万口座への倍増を目指す計画です。新制度が始まるのは2024年からとされていますが、2023年中にも口座の獲得競争は激化するでしょう。
このNISA拡充によって、「どの証券会社を選ぶのか」が、さらに重要になると筆者は予想しています。
というのも、これまでのつみたてNISAは年40万円、月に3万3333円でした。これで十分という人もいるとは思いますが、枠が足りない人は他の金融商品やサービスに目移りしていたはずです。
しかし新制度では枠が広がることで、多くの人が「全額突っ込める」ようになり、複数の口座やサービスを使い分ける必要はなくなる可能性があります。
ネット証券各社はさまざまな点で競争しているものの、その中でも決め手となる要素の1つは「ポイント還元」でしょう。
積み立てにおいて重要なのは、「今月はいくら積み立てようか」などと考える余裕を与えず、操作の手間もかからない自動化された仕組みです。
基本となるのは銀行口座からの自動入金ですが、最近ではポイントが付与されるクレジットカード決済が主流になりつつあります。
楽天証券では、投信積立にクレジットカード決済を利用する人は2022年5月に200万人を突破しています。積み立て全体では約245万人であることから、ほとんどの人がカード決済を利用していることがうかがえます。
その背景として、「ポイ活」から入って資産運用にステップアップする人が多いことから、こうした層を取り込むのに、ポイント還元には大きな効果があると考えられています。
ただ、証券会社にとってポイント還元の負担は大きいとみられ、長続きするかは疑問視されています。すでに楽天証券は主要な銘柄について、ポイント還元率を引き下げています。
とはいえ、NISA口座を獲得すれば他の金融商品の購入にもつながりますし、「経済圏」への波及効果も期待できます。楽天との違いを強調するためにも、ネット証券各社にとってポイント還元は引き続き有効といえそうです。
カード投信積立「上限」に意味はあるか
ただし、クレジットカードによる積み立てには意外な障壁があります。それは毎月の上限が「5万円」に制限されているという点です。
その根拠となっている内閣府令では、「同一人に対する信用の供与が10万円を超えることとならないこと」と定められています。
その上で、カードの引き落としは「月末締めの翌月27日払い」のように時間差があり、次の積み立てと重なる場合があることから、最大で合計10万円となるようにネット証券各社は月5万円を上限としています。
こうした規制が存在する理由としては、クレジットカードで金融商品を買いすぎることがないよう、投資家を保護する目的があったようです。
しかし、実際に投信積立をしている人にとって、この規制はあまり意味がないと感じているのではないでしょうか。たとえば複数の証券会社を利用することで、10万円の上限は簡単に超えることができます。
また楽天証券の場合、楽天カードで月5万円、楽天キャッシュで月5万円までの積み立てが可能です。これはすでに活用している人も多いでしょう。
しかし楽天キャッシュには、同じ楽天カードからチャージすることもできてしまいます。金融庁などに問題がないことを確認した上で始まったサービスとのことですが、これがOKなら、ぜひ他社にも真似してほしいところです。
NISAの拡充が決まった後でも遅くはないので、こうした上限についても見直しや撤廃の気運が高まることを期待しています。
必ずしも「月10万」を投じる必要はない
Twitterなどで「月10万」は話題になっていますが、その中には「10万円も投資できない」といった声もみられます。
この点については、年120万というのは最大の枠であって、必ずしも全員が毎月10万円を投じる必要はないわけです。
個々人が置かれている状況によっては、金融商品ではなく、むしろ「自分」に投資をしたほうが将来的なリターンが大きくなる場合が考えられます。
また、これまでNISAの枠を超えて積み立てをしてきた人の場合、過去に支払った、あるいはこれから支払う税金を返してもらうことはできません。
このことから、NISA枠の拡大によって最もトクをするのは、いま資産を持っておらず、これから始める人であることはたしかです。