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【学校飼育動物】小学校のウサギが糞便まみれ、奇形、多頭飼育崩壊 教育現場でネグレクトという虐待?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

RKBオンラインニュースは、学校飼育動物で人気のウサギについて衝撃的なニュースを伝えています。福岡県久留米市の小学校の44校のうち33校が動物を飼育していて、その中の17校がウサギを飼育しています。

そこで飼われているウサギの中には、餌を与えられず痩せ細った子、近親交配によるとみられる奇形、骨盤骨折で下半身不随になったまま放置された子、そして繁殖が止まらず手に負えなくなる“多頭飼育崩壊”になっている子がいるのです。これらは、ウサギの虐待になるのではないでしょうか。

なぜ、このようなことが起こるのか、ウサギの習性から見ていきましょう。

ウサギは猫より繁殖能力が旺盛

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イメージ写真写真:アフロ

【ウサギの多頭飼育崩壊】一般家庭で"2年で200匹”以上に。ウサギの繁殖能力とは?という記事を書きました。一般の家庭で、2匹の雄と雌のウサギを飼っていたところ、このように驚くべき数まで増えてしまったのです。

あまり知られていませんが、ウサギは猫より繁殖能力が旺盛な動物です。

□ウサギの性成熟

個体差はありますが雄も雌も生後6~10カ月ごろに性成熟※がやってきます。早い子では3カ月で性成熟することもあります。

※性成熟とは、子どもが産める体になること。

□ウサギの発情周期

雄のウサギは、一度、発情がくれば、1年中です。

雌のウサギは、年に8回まで繁殖が可能といわれています。一定の発情周期はあるものの、常に排卵可能な成熟卵胞がある状態なのです。

他の動物と比べるとウサギは繁殖能力が旺盛な動物だとわかると思います。

たとえば、雌の犬では、半年ごとです。雌の猫は犬より繁殖旺盛な動物ですが、日照時間に左右されるので1年中というわけではありませんが、年に3回繁殖が可能です。

つまりウサギをバースコントロールしないと、猫より多く子どもを産みます。ウサギは猫算より多く増えるのです。

上記のようなウサギの繁殖学を知らないと「多頭飼育崩壊」になる可能性があります。適切な飼育をするために以下のような環境が必要です。

・雄と雌を別々に飼育

・雄は縄張りがあり複数で飼育すると喧嘩するので、去勢していない場合は、1羽1羽別々に飼育

多頭飼育崩壊による奇形

多頭飼育をしている現場では、ウサギは近親交配をしないと考えているのでしょうか。そこまでのことを考慮しないのかもしれません。

RKBオンラインニュースの中に、近親交配が繰り返されたとみられその影響か「ラブ」ちゃんは生まれた時から片耳だったとあります。

ウサギは不妊去勢手術を受けない場合、狭い閉鎖的な空間にいると、親子やきょうだい同士で交配し、妊娠することがあります。

野生の場合、性成熟すれば親元を離れて独自の領域で生活します。このような多頭飼育崩壊現場では、不自然な環境になるので、近親交配を引き起こし、「みんな同じ顔」のウサギが産まれたりします。

近親交配の何が危険か?

近親交配は、遺伝的に重要な問題を引き起こす可能性があります。

・遺伝的な疾患が増える

近親交配を繰り返した場合、一般的な交配では劣性遺伝のため発現していない生存に不利な遺伝子が出てきやすくなります。

俗にいう血が濃くなると、遺伝的な疾患が発生しやすくなる可能性があるのです。

・免疫系が弱体

さらに、近親交配により多様な遺伝子が入って来ないので、免疫系の多様性も低下します。これは、感染症への耐性が低下し、免疫系も弱くなる可能性があります。

以上のように、近親交配は遺伝的多様性の低下、遺伝的異常の増加、免疫系の弱体化、適応力の低下が生じるかもしれません。

ウサギの食べ物

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学校給食があるので、ウサギは給食の残り物の野菜をあげればいいと思っている学校もあるのかもしれません。RKBオンラインニュースの中に「学校に聞くと、年に2、3万円しか飼育のための予算がないらしいのです。餌も満足に買えず、治療もできず、放置するしかなかったのかもしれません」とあるので、餌を買うという意識はあまりないのかもしれません。

ウサギの食べ物

・市販のウサギ用の餌

・牧草

・補助食として野菜(ニンジン、キャベツ、白菜、イモ類など)

餌の量は、ウサギ1羽でウサギ用の餌100gと野菜は容器に山盛りで1日2回あげます。ウサギが、餌を食べ残せば、すぐに処分します。水は新鮮にしておきましょう。苔が生えるようなことがないように。以上のようにして衛生的な環境で飼育しましょう。

健康なウサギ

「文部科学省委託研究 学校における望ましい動物飼育のあり方」より
「文部科学省委託研究 学校における望ましい動物飼育のあり方」より

上の図のように、ウサギの健康管理をできる人が学校にいることが必要です。獣医師が訪問することもあると思いますが、やはり毎日、健康かどうかチェックできることは大切です。

ウサギは、犬や猫と違って、表情を読み取りにくいので、気がついたときは手遅れとなることがあるからです。

小学校でのウサギ飼育は虐待では

ウサギは愛護動物※です。ニュースになるような劣悪な環境で育てていると虐待になる可能性があります。

※愛護動物とは、牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひるです。その他に、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものを示します。

動物愛護管理法では、動物虐待とは、動物を不必要に苦しめる行為のことをいい、正当な理由なく動物を殺したり傷つけたりする積極的な行為だけでなく、必要な世話を怠ったりケガや病気の治療をせずに放置したり、充分な餌や水を与えないなど、いわゆるネグレクトと呼ばれる行為も含まれます。

小学校でのウサギの飼育環境を見るとネグレクトの可能性もあります。学校関係者は、これらのことを理解して適切にウサギを飼育してほしいです。

まとめ

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学校でウサギを飼育する場合は、ウサギについてよく理解している人がいないと、このようなネグレクトが起こっているのです。

学校飼育動物は、子どもたちの「心をはぐくむ」ために飼育されています。動物は、周りの人との関係を修復する力があり、人の心を安らかにして開かせるともいわれています。

そして、ウサギの病気や老いを見ることで、生き物の生や死をより理解しやすいです。そんなウサギのために、適切な餌や医療が受けられる予算をつけて世話しないと、ネグレクトを子どもたちに見せることになります。

教育現場にいる教職員の方は激務だと聞きます。システムが整っていないのに、命あるウサギを飼うことはやめた方がいいのではないでしょうか。

筆者が小学校のウサギを診察したのは、20年ぐらい前のことでした。教頭先生が何かおかしいとウサギを連れて来ました。筆者がウサギの腹部を診たらウジがいるのを見つけました。治療をしようとしたときに、教頭先生は「ウサギに予算がついていない」と。筆者はこの現状にショックをうけました。このことは、昔のことといえず、まだこのような状態のウサギが小学校にいるのです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は栄養療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医師さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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