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【ウサギの多頭飼育崩壊】一般家庭で"2年で200匹”以上に。ウサギの繁殖能力とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

「2年で200匹以上」という表現を見たときは、猫の多頭飼育崩壊が起こったのか、と一瞬、思いました。現実は、ウサギでした。

神奈川県で30代夫婦が飼育していたペットのウサギ2匹が、わずか2年足らずで200匹以上に繁殖し、自宅内を"占拠”するほどの多頭飼育崩壊が起きたとカナロコ神奈川新聞では伝えています。

ウサギの多頭飼育崩壊 2年で200匹以上に

なぜ、一般家庭で2年で200匹以上まで増えてしまったかを見ていきましょう。

30代の夫婦は2020年8月から9月にかけてウサギ2匹をペットショップで購入。室内で飼っていたところ、1年で約100匹にまで増え、2年で200匹以上までなっと報道されています。

世の中では、「ウサギはさみしがりやで、さみしいと命にかかわる」といわれているので、2匹のウサギを購入した可能性があります。

この夫婦は、ウサギを購入するときに、性別をあまり意識せずに飼ってしまったのかもしれません。

生後間もないウサギは、性別の見分けがつきにくいことがあり、かわいいウサギを室内で、放し飼いで飼っていたら、急に増え始めたのでしょう。

ウサギは、犬のように散歩が必要なく、吠えたりもしません。猫のように、爪を出したりもしないので、動物好きな人の心をとらえたのでしょう。

2020年といえば、コロナ禍で、犬や猫を新規飼育する人も増えました。そのため、犬猫の値段は高騰しましたが、まだ、ウサギの値段は犬猫ほど高くなく購入しやすかったのです。

ウサギは、本当にこんなに子どもが増えるの?

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ウサギについてあまり知られていませんが、ウサギは猫と同じ、交尾排卵動物なのです。交尾をすると排卵するので、妊娠する確率が100%近い動物です。

室内で、雄と雌を放し飼いしていれば、このように増えてしまうのです。

そういう動物であるということを理解することが大切ですね。

ウサギの繁殖

ウサギは、犬のように発情が来たからといって、膣の部分から血液成分のような分泌物が出るわけではありませんので、いつ性成熟したかわかりにくいです。

ウサギの性成熟

個体差はありますが雄も雌も生後6~10カ月ごろに性成熟がやってきます。早い子では3カ月で性成熟することもあります。

雄のウサギは、性成熟すると以下の行動が見られます。

・マウント(ぬいぐるみ、飼い主の背後に乗っかって腰を振る行為)をする

・おしっこを飛ばす

・落ち着きがなくなる

・後ろ足をその場でダンダンと踏みならす(スタンピング)

・肛門脇の臭腺から分泌物を出す

・アゴの臭腺から分泌物を出す

雌のウサギの性成熟すると見られる行動

上記の雄とほぼ同じですが、それ以外に、ケージ内に手を入れると攻撃してきます。巣を守ろうとする行動です。

ウサギの発情周期

雄のウサギは、一度、発情がくれば、一年中です。

雌のウサギは、基本的には年中繁殖できるのです。一定の発情周期はあるものの、常に排卵可能な成熟卵胞がある状態なのです。

この点があるので、繁殖能力が旺盛な動物です。

雌の犬では、半年ごとです。猫は犬より繁殖旺盛な動物ですが、日照時間に左右されるので1年中というわけではありません。

ウサギの交尾の時間

ウサギは、交尾で排卵するので、10秒から30秒ほどの交尾で、ほぼ100%妊娠します。

ウサギの妊娠期間

ウサギの妊娠期間は、約30日です。犬や猫は、約60日なので、ウサギは妊娠期間も短いですね。

ウサギの1回の妊娠で産む数

ウサギは、一度に1匹から10匹出産します。

上記のようなウサギの繁殖を知っていれば、不妊去勢手術しない雄と雌のウサギを放し飼いしていれば、2年で簡単に200匹以上になってしまうのは、理解できると思います。

ウサギの飼養の問題点

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犬は、生まれた直後に見ても雄か雌かの性別がわかります。

一方、ウサギの性別は生まれたときには、わかりにくいというのがあります。

生後2カ月だと、肛門と陰部の距離などで判断します。外部から精巣がはっきりわかるのは、生後6カ月になる頃です。

このようなことから、ウサギは雄か雌を意識せずに飼う人が多いことがあります。ウサギは、1匹ずつケージで飼うのが基本です。

最後に

猫の飼育頭数が犬を上回りました。ウサギは、飼育頭数も勢いよく伸びています。北アメリカでは、近いうちにウサギは犬を抜いて猫に次ぐ2位の位置を占めるのではないかといわれているほどです。

日本でも、北アメリカのように猫人気に次いでウサギも注目を集めるのではないかと考えられます。

この神奈川県の例は、確かに200匹以上という非常に多い数になっています。しかし、もっと数の少ない多頭飼育崩壊のウサギがいるかもしれません。

1匹でかわいそうと思うのでしたら、つがいではなく、雄同士、雌同士にするか、不妊去勢手術をしましょう。

犬や猫と同じように、望まない命を増やないためには、ウサギの発情についてよく理解することが大切です。

たくさんモフモフしたい!→ペットを増やす→【多頭飼育崩壊】に潜む、落とし穴とは?に書きましたが、一方的に正論を言うのではなく、多頭飼育崩壊になった人の話を聞くことを始めると、そこから抜け出す糸口を見つけて、ペットの命を救えるのです。孤立を深めながら不器用な「SOS」を出している飼い主に、周りが気づき、犬や猫を助け出す社会にならないとペットの命は守れません。

動物愛護センターなどの行政は、犬や猫だけではなくウサギなどの愛護動物の相談に応じてくれます。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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