山で疲れて動けなくなった!困った登山者がすべきことは自分の再評価である。
自然から学ぶことはたくさんあります。私たちが日々に追われ、気づくことができないからだと思います。地球46億年の歴史、日本列島の地史、自然環境という途方もなく膨大な営みに比べて、私達はとても小さな存在です。
10年や20年、否50年という経験を積んだとしても、たくさんの失敗と出会いがあります。失敗が多いほど、私達は成長します。
行きたい山、歩きたいコースを決めるとき、他人の評価も気になりますね。自分自身の体力・知識・経験を身近な山歩きから積み重ねていくことがとても重要です。登山をする者が確認すべきポイントをご紹介します。
最近、山岳警備隊員の方からお聞きした話です。皆さんもニュースサイトで見たこともあるかもしれません。
事例:登山中に疲れて動けないから救助して欲しい。
事例:山小屋で夜寝ていたら脚が痙ったので、ヘリコプターを呼んで欲しい。
いつの頃から私達登山者は
・自らの潜在能力と向き合うことを忘れてしまったのでしょうか。
・「頑張らなくても良いんだよ!」という言葉を都合良く解釈するようになったのでしょうか。
男も女も区別なく老いも若きも自然の中では平等です。
身に付けた「体力・知識・技術」が自分の命を守るのだということを肝に銘じなくてはなりません。
セルフチェックをしてみませんか!
1:最近の三ヶ月間に何回山を登ったでしょうか。
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ひと月に1回という頻度なら、十分とはいえません。正直言って登山歴〇〇年とか、以前(いつのころとは言わず)一つ二つ名のある山に登ったことがある、これらは今現在の自分の体力などの登山力を見誤らせることになります。
いきなり大きな山岳地帯の有名コースに行ってはいけないレベルです。よく知っていて危険の少ないコースに出かけて、今時点の登山力を確認するようにしましょう。
2:5kg程度の一般的な軽登山の装備食料水分を背負って整備された登山道の標高差400mを1時間程度で登ることができるでしょうか。
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この程度の体力と脚力と心肺能力があれば、登山計画を立てやすいレベルでしょう。まず最初は標高差300mを1時間程度からスタートして、自分自身の体力、疲労度を確認してみましょう。比較するのは過去の自分です。地道に向上させていくことを強くお勧めします。瞬間的な頑張りではなく下山後の自分が笑顔でいられる歩行ペースであるかが大切です。
3:一般的な登山道を10時間程度行動できるでしょうか。
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歩く速さと身体の動かし方、休憩のとり方、栄養と水分補給など自己の健康管理能力が上手くできないと肉体的にも精神的にも長時間行動は不可能となってしまいます。他人のペースに巻き込まれ疲れすぎたり、極端に心拍数を上げてしまうと登山行動中に回復させることが難しくなります。登山仲間と一緒に行うのがお勧めです。
4:体重の20%に相当する重さのザックを背負って登山ができるでしょうか。
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背負う荷物が重たくなれば登降スピードは低下するのは当然です。一般的な生活で背負うための背筋力と肩を養うことはほぼ不可能です。腰に負担を掛けにくい姿勢でザックを背負うトレーニングは必要です。膝や腰を痛めないためにも段階を追って強化していく必要があります。
実際の登山計画策定にあたって様々な登山装備の軽量化を図ることは大切ですが、その重量が自分の背負う能力の限界であってはなりません。一つの目安として、自分が担いで行動可能な重量の70%があなたが登山装備を背負って快適に楽しく歩くことができるザック重量でしょう。自宅出発前に背負ってみて重量に少しでも不安を感じたら、それは体力の準備不足です。
5:有名で登り応えのあるコースに目が行きがちでしょうか。
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「私に登れるでしょうか? あとどのくらいで頂上ですか?」という質問をしがちなら要注意です。あなたは他人のデータや評価を都合よく選択してしまう傾向があります。
その山、そのコースに初めて行こうとする登山者とってユーチューブや各種レポートの主観的な感想や映像から客観的なルート環境を得ることは難しいものです。ほとんど失敗事例は含まれませんし、視聴者や読者に登山知識と技量の差がある以上、情報バイアスが掛かるのは致し方ないことですから、易しいルートや短い歩行時間から始めていきましょう。
近い将来登りたい山やコースを含む一帯のコース概念を把握していきましょう。天候悪化や体調不良時にコース変更や引き返す場合のバックアップになるので重要なことです。
6:レインウェアを着用し雨風の中で登山をしたことがありますか。
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肌着などウェアは登山に適した素材でしょうか。自分自身を取り巻く環境変化に対応できるようにウェアも機能重視で考えましょう。
楽しみのための登山なんだから、天気予報が悪いときにわざわざ登山に行く必要がないと考えるのは普通のことでしょう。では実際はどうなのでしょうか。登山途中で雨にあたり身体を濡らして低体温症になりかけたという遭難一歩手前はよく聞く話です。登山は標高を上げる行為ですから、1000mの山に登れば6度以上気温は低下します。自分のかいた汗は服を濡らし体温を奪います。
窮地に陥った時に助けを求めることは誰にも妨げることはできません。本当に必要であれば躊躇なく判断して救助を要請しなければなりません。
しかしながら、救助できるかはわからないのが山岳救助現場では普通です。
救助を行う側の資源は限られており早いものがちではなく、天候にも左右されるのです。救助を待つ登山者も救助されるまで耐えられる装備と体力と知識、忍耐力が求められるのだということを忘れてはいけません。
自然は良いなぁ、癒されるなぁ、という素晴らしい面の表裏一体として自然は厳しく容赦ないものなのです。
本来、自己完結型の行動規範を持ち合わせない者は自然界に立ち入ってはならないのです。最低限の自分自身の為の装備、食料、水分を背負って、行程を歩き通せなくては山という自然界に入る資格はないのです。
雪の便りの届く季節になりました。
日帰り低山登山にはもってこいの季節です。来年の登山計画実現に向けて、小さな登山を続けていきましょう。
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