JR石勝線寸断「代行バスの運行なし」で浮上した夕張・孤立化のリスク、10月には市外へのバス路線が全廃
8月31日に豪雨被害を受け4日間に渡って不通が続いていたJR石勝線が9月4日11時12分発の帯広発札幌行の特急とかち6号から運行を再開した。石勝線では川端―新夕張間の線路内に土砂が流入したほか、路盤が崩壊するなどの被害を受けた。今回の石勝線の寸断ではJR北海道は特急列車の代行バスの運行を行わなかったことから、高速バスや航空便に乗客が殺到し大混乱となったほか、この区間を走る貨物列車の代行についてもトラックの手配が難しかったことから貨物の一部しか輸送できなかったという事態も明るみに出た。
さらに今回の、石勝線の寸断で浮かび上がったのは、石勝線寸断時の夕張・孤立化のリスクである。鉄道を廃止する代わりにバスを便利にするとして2019年に石勝線夕張支線・新夕張―夕張間の「攻めの廃線」を行った夕張市では、バス路線の崩壊が進んでいる。現在、夕張市では、石勝線夕張支線の廃止によって増便されたバスが新夕張駅から旧夕張駅方面に10往復が夕鉄バスにより運行されているが、昨年の2023年10月1日には夕鉄バスが運行する夕張から札幌方面への路線バスが全廃。今年2024年10月1日には北海道中央バスが運行する札幌駅前行の高速ゆうばり号と岩見沢ターミナル行の路線バスも廃止され、夕張市と市外を結ぶバス路線が全滅する。
こうした中で、今回のように石勝線が寸断され代行バスも運行されないという事態になると、夕張市への市外からの交通機関は何もない状態となり、夕張市は孤立化してしまいかねない。現北海道知事の鈴木直道氏が夕張市長時代に行なった「攻めの廃線」以降、北海道内では鉄道路線廃止の流れが加速しているが、一方で、ドライバー不足などを背景として北海道内のバス路線の減便・廃止も加速していることから、特に北海道の地方部では鉄道もバスもない交通空白地帯が増えることが心配だ。
また、今年3月31日限りで廃止された根室本線の新得―富良野間は石勝線不通時に特急列車や貨物列車の迂回ルートとして活用できる可能性があった路線であるが、こうした路線をも廃止してしまったことにより、鉄道の迂回運転すら不可能になってしまった。今や、簡単に鉄道の代行輸送をバスやトラックで行える時代ではなくなったことから、必要な路線については再整備があってもよいのかもしれない。
(了)