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9月は防災月間 食品や飲料水が全国で廃棄されている 災害時に不足する食品のロスを最小限にする工夫とは

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
埼玉県川口市 防災倉庫(2019年2月)(写真:アフロ)

毎年9月1日は防災の日、9月は防災月間。1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災を契機に制定された。

ここ数年、豪雨や地震などの自然災害がたびたび発生している。

災害時に不足する食品を無駄にしないため、家庭でも事業者でも、工夫が必要だ。

具体的には次のようなことが考えられる。

備蓄用ミネラルウォーターの「賞味期限」は飲めなくなる期限ではない

2016年4月に発生した熊本地震の際、全国から集まってきた備蓄水が、3年以上経つ今も130トンあり、大半が賞味期限切れになっていると熊本日日新聞が報じた。熊本市は仕方なく、花壇の水やりや足を洗うのに使っているという。

2019年7月30日付の記事でも書いた通り、ミネラルウォーターの賞味期限は、厳密には飲めなくなる期限ではない。保存中に水が蒸発し、表示している量を満たさなくなる(計量法に抵触する)。その期限だ。

備蓄食料の廃棄は、毎日新聞の調査によれば、5年間に176万食、3億円分あった。総務庁の調査では、国の行政機関42%が備蓄食料を全部廃棄していたという報告がある。

熊本だけの問題ではなく、全国で、「ミネラルウォーターの賞味期限=(イコール)飲めなくなる期限」と信じて廃棄されている備蓄用ミネラルウォーターが大量にあると推察される。一方、世界では、真水に到達できない人が8億人近くもいる。

SDGsのゴール6番「安全な水とトイレを世界中に」(国連広報センターHP)
SDGsのゴール6番「安全な水とトイレを世界中に」(国連広報センターHP)

ネギ無しそば、漬物無し弁当は許されず、全部廃棄・・・!規格を臨機応変に

2018年に発生した北海道地震では、セイコーマートが、カツ丼にする予定のご飯を塩むすびにするなど、臨機応変な対応が評価された。

一方、2018年9月12日付の北海道新聞は、大手コンビニの融通の無さと、今後対応力が求められることを報じた。

「そばはあるんですが、ネギがない。弁当の素材はあるんですが、漬物がない。そうすると『ざるそば』や『幕の内弁当』という商品は作ることができないんです」。大手コンビニチェーンの道内店舗に弁当類を供給する会社の幹部は目いっぱいに涙をためながら、苦しい胸の内を吐露した。「食材はいっぱいある。でも、チェーンの規格に合わない商品は出せない。この苦しいとき、地域の役に立てない。非常に切ない」

出典:2018年9月12日付北海道新聞

店内調理をする小規模な小売店などでは、「いまある食材だけをつかって、なんとか、作れるものがないか、工夫しながらやっている」(北海市場発寒店の青木豊店長)。ただ、全国チェーンに卸す場合、食材も弁当の中身も現場の判断だけでは変えられないのが今のルールだ。

食材はあるが、供給できない―。地震という天災の際に、ライフラインである食品をいかに迅速に流通させるか。大手チェーンの対応力も問われている。

出典:2018年9月12日付 北海道新聞

食品のない非常時に、ネギ無しそばや、漬物無し弁当は、規格上許されず、全部廃棄しなければならないだろうか。

販売期限で廃棄される弁当や麺類(コンビニオーナー提供)
販売期限で廃棄される弁当や麺類(コンビニオーナー提供)

食品業界の3分の1ルール、特に販売期限の緩和

2018年に発生した西日本豪雨。道路が寸断され、食品を載せたトラックが時間通りにコンビニに到着することができず、安全に食べられる期限の「消費期限」の、さらに手前に設定された「販売期限」の直前にトラックが店舗に着き、被災地のコンビニオーナーが泣く泣く廃棄せざるを得なかったということがあった。

誰が悪いのでもない。災害のために交通網が遮断されれば、時間通りに運ぶことはできない。

できることがあるとすれば、消費期限の切れる、さらに1〜3時間手前に設定されている「販売期限」の緩和だ。

お店側は「お客様が購入してから食べるまでの間に余裕を見て」、おにぎりや弁当、サンドウィッチなど、消費期限の手前の1〜3時間前に販売期限を設定している(大手コンビニ3社の中でも設定時間は異なる)。

非常時は、ただでさえ食料品が不足する。

消費期限の数時間前に設定されている「販売期限」は、緩和してはどうだろうか。

食品業界の商慣習である「3分の1ルール」。賞味期間全体を均等に3分割し、最初の3分の1でメーカーは小売に納品し、次の3分の1で小売は売り切る。販売期限が来たら棚から撤去し返品もしくは廃棄する(業界の商慣習と流通経済研究所発表データをもとに筆者作成)
食品業界の商慣習である「3分の1ルール」。賞味期間全体を均等に3分割し、最初の3分の1でメーカーは小売に納品し、次の3分の1で小売は売り切る。販売期限が来たら棚から撤去し返品もしくは廃棄する(業界の商慣習と流通経済研究所発表データをもとに筆者作成)

家庭ではローリングストック法でちょっとずつ使っては買い足す

家庭の備蓄食品のロスを最小限に抑えるためには、ローリングストック法がお勧めだ。

少しずつ使っては買い足していく方法である。

2011年3月11日の東日本大震災以降、注目されてきた。

非常袋に入れっぱなしにするより、普段から、備蓄食品を日常食として使い回ししていく。賞味期限や在庫数の認識があるので、無駄にしにくくなる。

ローリングストック法で備蓄できる食品の一例(筆者撮影)
ローリングストック法で備蓄できる食品の一例(筆者撮影)

9月の防災月間を機に始めよう

以上、4つの具体策を挙げてみた。

9月は防災月間。せっかくの機会、家庭でも事業所でも、食品ロスを減らすため、小さな取り組みから始めたい。

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食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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