濃厚な黒胡麻はまさに名物!創業約120年「戸田うちわ餅店」さんの絶品お餅に絡むタレは津軽が誇るおやつ
住宅街にひっそりと佇む名店って、どこかそそらせませんか?
テレビや書籍などでも紹介され、和菓子好きの間でもその名が知れ渡っている青森県弘前市「戸田うちわ餅店」さん。
駅前から離れ、観光地というよりは地元の方々の生活圏の一部と表現したほうが適切な土地にて約120年の歴史を刻む老舗です。
実は、一度は休業なさった戸田うちわ餅店さん。2012年に先代のご主人が他界された際には一度暖簾をしまいましたが、2016年にはご子息やお店の皆さんが立ち上がり営業再開。首を長くして復活の時を待ち望んでいた地元の方々のみならず、全国からそのお菓子を味わうべく沢山の人たちが訪れる人気店へ。桜祭りの季節には長蛇の列ができることも。
あんこ、というよりはとろりとした「タレ」文化の方が色濃く紡がれる北東北の餅菓子たち。今回は代名詞でもある「戸田うちわ餅店」さんの「うちわ餅」他、ショーケースに並んでいたお菓子をご紹介。
いかがですか、射干玉色の艶めき。マッチ箱サイズのお餅にたっぷりと絡む黒胡麻のタレ…こちらのタレの素晴らしいところは、お砂糖に頼り切っていないというところと、黒胡麻の個性を際立たせているというところだと私は思っております。
そう。良さ、ではなく、個性です。黒胡麻特有の力強い渋み、ほろ苦さ、それらを全面に押し出しているものの、悪目立ちしていないのは適度な甘さと基盤となる朝搗きのお餅が美味しいから。
お餅はイマドキのふわふわ系ではなく、昔ながらのしっかりと噛みしめられるような弾力を備え、旨味と素朴な甘さが凝縮しているタイプ。小柄ではあるものの、しっかりと噛みしめることによりすべての要素がひとつになるどこか豪快ながらもほっとするハーモニーは絶品。そこがいくらでも食べられてしまいそうな秘訣なのでしょうね。
また、小さなお餅が三つ刺さった「串餅」も、うちわ餅とはことなる穏やかな甘さのタレをたっぷりまとったお餅。ぽってりとしたタレは、まぶすというよりも、のせるといったほうがしっくりくるかと。お団子でタレを持ち上げるようにすくい、見た目に反してさらりとした黒糖の香りが心地よいタレごと飲み込みます。
いずれも、タレをスプーンですくって最後まで楽しむのはお約束。
また、黒豆入りの「豆大福」は、最もお餅の魅力を堪能できる銘品!もち、もちっと噛みしめていくうちに絡み合う絶妙な塩梅の甘味で練り上げられたこし餡との相性はまさに至福。黒豆はやや硬めなので、ここは好みがはっきりと別れそうなところではあります。
固くなってしまったら、軽く炙ってどうぞ、と素敵な女将。
地元育ちの父にとって、何度もお店の前を通る日常の景色の一部だった戸田うちわ餅店さん。一度休業となった際には、寂しいような、一度買いに行けばよかったなと思ったそう。
この度、父と私、そして私の娘の家族三世代でお伺いし、その土地で過ごしていくうちに染みていくどこか温かな空気感と仄かな糯米の香りに、娘はすっかり癒されたようです。
きっと、一世紀以上愛され続けた時間の中で、私たちと同じように多世代にわたり胃袋と心を癒されてきた人たちもいるのでしょうね。願わくば、その流れがこれからも続いていきますように。
※お店の前は歩道も狭く公道となっております。周辺の環境や近隣の方へのご配慮と共に、美味しいお餅へ気持ちを高めて並びましょうね。
最後までご覧いただきありがとうございました。
<戸田うちわ餅店>
青森県弘前市銅屋町21
0172-32-7698
9時~18時(売り切れ次第終了)
定休日 月曜
※発送は行っておりません。